[クロスビート編集部員リレー・コラム] 編集長荒野編「ニック・デカロ」

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フィル・スペクターやジョージ・マーティンといった大物プロデューサーのアンソロジーを別にすると、「裏方」の仕事に焦点を当てたコンピは決して多くなかった。しかし近年は、英エイスがジャク・ニッチェの作品集「ジャック・ニッチェ・ストーリー」を編纂したり、ヴァン・ダイク・パークスが編曲作品集「Arrangements Vol.1」を発表するなど、音楽マニアの欲求を満たすリリースが徐々に増えている。

そうした企画盤の需要が高まる中、編曲家ニック・デカロの仕事を集めた『ニック・デカロ・ワークス』が、没後20年に合わせて登場。ロジャー・ニコルズ&スモール・サークル・オブ・フレンズ、クリス・モンテス、クロディーヌ・ロンジェといったA&M作品を中心に、ソニーやワーナー所有の音源も収めている。

デカロのアレンジは添え物としてのそれに終わらない。ロジャー・ニコルズ「ラヴ・ソー・ファイン」の疾走感溢れる弦や、ハーパース・ビザール「ドリフター」で聴けるドリーミーな管楽器の配置は、まさに神業。アシッド・フォーク畑のシーモン&マーレイケに到っては、自らアコーディオンまで弾いている。各曲の魅力を引き出す技はマジカルとしか言いようがない。

本作と同時に、A&Mに残したソロ作『ハッピー・ハート』も再発された。インスト中心だが、デカロが美声を披露する「キャロライン・ノー」は、数あるビーチ・ボーイズのカヴァーでもトップ・クラスの出来映えだ。

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