ストーンズ50周年記念作品「マディ&ストーンズ」を徹底解析Vol.2

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7月4日、日本先行発売のマディ・ウォーターズ&ザ・ローリング・ストーンズ『ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981』について、元レコードコレクターズ編集長の寺田正典氏&写真家で日本唯一のストーンズ・オフィシャル・フォトグラファーの有賀幹夫氏という日本有数のストーンズ・マニア二人に訊くインタビューの後半。今回は、作品の見所について伺ってみたい。

◆マディ&ストーンズ画像

有賀氏は、本作を“人間ミック・ジャガーのドキュメント”として見る。

「ミックはブルース・ファンだった少年時代の童心に返ったように見えるけど、その一方で、周囲に期待される“ミック・ジャガー像”を演じている部分もある。ジュニア・ウェルズやバディ・ガイら本場のブルースマンに潰されかねない真剣勝負で、彼がしたことは“ストーンズのヴォーカルでござい”というマッチョな部分を主張するのではなく、あえて両性具有的な妖しさを出すことだった。ロック・シンガーには中性的な部分がある人が多いけど、ミックは特にそう。すごくフェミニンなところがある。当時のステージMC“アー・ユー・フィーリン・グーッ?”という言い回しも、オカマっぽいですしね(笑)」

有賀氏はまた、ミックのファッションにも注目する。

「そろそろ寒い季節のシカゴだというのに、コートの下が真っ赤なジャージというのは、明らかに“狙って”いるでしょう。あのコスチュームから、当時ニューヨークで盛り上がりつつあったヒップホップ前夜の動きをミックがキャッチしていたことも伝わってきます」

そんなミックがぶつかってくるのを真っ正面から受け止めるのがマディ。一方、「このステージは俺たちのものだ。お前なんか知らないよ」(有賀氏談)とばかり、あえてマディの方ばかり見ているジュニア・ウェルズ。そんな人間模様は、ひとつのドラマだ。「このライヴが断片でなく、フルで発表されたことに意義がある。こんなにスリリングな現場だったのか!と、ショックですらありました」。それに加えて、「ステージが狭いので、そのぶん表情でカバーしている。これほどのミックの“顔芸”は、ちょっと見たことがない」と有賀氏が感嘆する、小会場ゆえの豊かな表情も必見だ。

一方、寺田氏はキースのギター・プレイに焦点を当てる。

「キースはブルースとロックンロールの狭間にいるギタリスト。チャック・ベリーが原点ということもあり1960年代初め、ストーンズ結成前にロンドンのクラブでアレクシス・コーナー、ジャック・ブルース、ポール・ジョーンズらとやっていたブルース・ジャムでも毛色が異なっていたという証言があります」。とはいえ、「チェッカーボード・ラウンジ」でのライヴでは、キースは本場のブルースマン達を前にして、かなりブルースっぽさを意識したプレイを心がけている。「ソロの弾き始めの空ピッキングとかは、ストーンズではあまりやらない、“正統派”なブルース・プレイ。でも興が乗ると、つい素の部分が出てしまう。そんなあたりがスリリングですね。「フーチー・クーチー・マン」でキースが弾いているフレーズが1964年、初めてストーンズがシカゴでレコーディングした「Stewed & Keefed」というアウトテイクのインスト曲をそのまま思い出させたり(笑)」

さらに、キースのプレイだけでなくステージ上のムーヴまで完コピしようというこだわり派のファンにとっても、本作は注目すべきポイントが多数ある。「手のアップが多いから、ポジションや運指の参考にもなるし、ほとんどネックの上でピッキングをしている変則スタイルも見ることが出来る。こういうフレーズを弾くときに、肩がこうカクッとなるとか、顔の角度とか、タバコを吸うときにこんな動きをするとか…これまで映画『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』やハンプトン・コロシアムのブートレグ映像で何度も見返してきた動きが、さらに凝縮されているのがこの作品ですね。ストーンズの曲をやっているわけではないけど、1981年のキースの弾き方は、こっちの方がよく判る」

ミック、キース以外のメンバーの一挙手一投足も、両氏は見逃さない。

「ロニー・ウッドの気配りが涙ぐましい。キースが自由気ままに弾くから、その隙間を埋めるように弾いている。マディからすごく短いスライド・バーを渡されて、弾きづらそうなのに我慢して弾いていたり…さすがに途中で自分のスライド・バーに持ち替えますけど。当時『チェッカーボード・ラウンジ』のオーナーだったバディ・ガイが手ぶらでステージに上がってくると、自分が弾いていたギターを手渡したり、とにかく気遣いが凄いです」──寺田氏。

「ストーンズのサポート・ピアニストだったイアン・スチュアートがかなりクローズアップされているのが嬉しい。ストーンズはもちろん、参加作品が多い人なのに、意外と映像は残っていない。これほどスチュが映されている作品は珍しいでしょう。さらに、このDVDで嬉しいのは、エンド・タイトルで、ミック、キース、ロニーと同じ画面でスチュがクレジットされていること。スチュもストーンズの一員という位置付けなんですよね。あと、スチュがストーンズの1981年ツアーのスタッフTシャツを着ているあたりも要注目。欲しいなあ(笑)」──有賀氏。

さらに両氏は観客席にいるボビー・キーズ、アーニー・ワッツ、イアン・マクレガン、キースとロニーの当時のガールフレンド、マネージャー、プロモーターなど、一人一人についてもウンチクを傾ける。

この記事に掲載できたのは、両氏のトークのほんの一部に過ぎない。マディとストーンズの歴史的コラボレーションを楽しむのに加えて、マニアックに掘り下げ、語り明かすことが出来るのが、『ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981』の魅力なのである。歴史的作品の発売までもう間もなくだ。

(C)MICHAEL HALSBAND/LANDOV

マディ・ウォーターズ&ザ・ローリング・ストーンズ
『ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981』
2012年7月4日 日本先行発売
2,000セット数量限定生産デラックスBOX[DVD+2CD+3LP] VQBD10107 13,500円(税込)
初回限定盤[DVD+2CD] VQBD10105 4,980円(税込)
[DVD] VQBD10106 3,980円(税込)

[DVD]
1.スウィート・リトル・エンジェル
2.フリップ・フロップ・アンド・フライ
3.イントロダクション
4.ユー・ドント・ハフ・トゥ・ゴー
5.カントリー・ボーイ
6.ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー
7.フーチー・クーチー・マン
8.ロング・ディスタンス・コール
9.マニッシュ・ボーイ
10.ゴット・マイ・モジョ・ワーキン
11.ネクスト・タイム・ユー・シー・ミー
12.ワン・アイド・ウーマン
13.ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー(インストゥルメンタル)
14.クラウズ・イン・マイ・ハート
15.シャンペン・アンド・リーファー
16.インストゥルメンタル 1
【ボーナス】
・ユア・ゴナ・ミス・ミー・ホエン・アイム・ゴーン
・ブラック・リムジン - ザ・ローリング・ストーンズ
(1981年12月18日のハンプトン公演から)

[CD1]
1.ユア・ゴナ・ミス・ミー・ホエン・アイム・ゴーン *
2.スウィート・リトル・エンジェル *
3.フリップ・フロップ・アンド・フライ *
4.イントロダクション
5.ユー・ドント・ハフ・トゥ・ゴー
6.カントリー・ボーイ *
7.アイム・ア・キング・ビー **
8.トラブル・ノー・モア **
9.カウンティ・ジェイル **
10.ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー
11.フーチー・クーチー・マン

[CD2]
1.ロング・ディスタンス・コール
2.マニッシュ・ボーイ
3.ゴット・マイ・モジョ・ワーキン
4.ネクスト・タイム・ユー・シー・ミー
5.ワン・アイド・ウーマン
6.ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー (インストゥルメンタル) *
7.クラウズ・イン・マイ・ハート
8.シャンペン・アンド・リーファー
9.インストゥルメンタル 1 *
10.インストゥルメンタル 2 **

[LP]
[Disc 1: Side 1]
1.ユア・ゴナ・ミス・ミー・ホエン・アイム・ゴーン *
2.スウィート・リトル・エンジェル *
3.フリップ・フロップ・アンド・フライ *
4.イントロダクション
5.ユー・ドント・ハフ・トゥ・ゴー
[Disc 1: Side 2]
1.カントリー・ボーイ *
2.アイム・ア・キング・ビー **
3.トラブル・ノー・モア **
[Disc 2: Side 3]
1.カウンティ・ジェイル **
2.ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー
3.フーチー・クーチー・マン
[Disc 2: Side 4]
1.ロング・ディスタンス・コール
2.マニッシュ・ボーイ
3.ゴット・マイ・モジョ・ワーキン
[Disc 3: Side 5]
01.ネクスト・タイム・ユー・シー・ミー
02.ワン・アイド・ウーマン
[Disc 3: Side 6]
1.ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー (インストゥルメンタル) *
2.クラウズ・イン・マイ・ハート
3.シャンペン・アンド・リーファー
4.インストゥルメンタル 1 *
5.インストゥルメンタル 2 **
*日本盤限定CD/LPのみ収録
**DVD未収録

【DVD仕様】
日本語字幕付 / 日本語解説付
映像:本編 約96分、ボーナス 約9分 / 4:3
音声:ドルビー・デジタル ステレオ、ドルビー・デジタル 5.1chサラウンド、DTSサラウンド・サウンド

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