単なる“お祭り”じゃない、切磋琢磨し互いを高め合ったナイトメアvsバロック、日比谷野外大音楽堂レポート

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7月31日(火)名古屋・クラブダイアモンドホールを皮切りにスタートした、ナイトメアとバロックの2マン・ツアー<ナイトメアvsバロック NATURAL BORN ERRORS>が、8月4日(土)東京・日比谷野外音楽堂でファイナルを迎えた。

<ナイトメアvsバロック NATURAL BORN ERRORS>画像

お互いタイプも違えば、これまでライヴといえばワンマン主体でやってきたバンド。そんなバンド同士の共演である。どうせやるなら単なる“お祭り”では終わらせたくない。だからこそ、彼らは1度きりのステージ共演ではなく、あえてツアーを組んだ。ツアーのなかで、ライヴを通してガチンコでバトルしながら切磋琢磨してお互いを本気で高め合えたら。そんな刺激を求めての共演だったからこそ、場所によって彼らの出演順も違えばプログラムも違うというツアーになっていった。

ここまでレベルの高い2マンが成立したのも、この両バンドはメジャー・デビュー前から親交があったからこそ。それは、今回のツアーに関するグラフィックに、ナイトメア、バロックのメンバー10人(この絵柄のなかでバロックは5人。昔、ナイトメアと対バンしていた当時にいたドラマーも両バンドのこだわりで描かれている)のキャラクターが描かれていることを見てもよく分かる。ツアー・ロゴも含め、ヒップホップのイベントかと思うようなグラフィティのアートワークは“NATURAL BORN ERRORS”をB系のチームに見立てて作ったものだろう。みんな個性的で、やんちゃそうだ(微笑)。

名古屋ではバロック、大阪ではナイトメアが先攻で出演したので、野音は再びバロックが先攻。定刻を少し過ぎたところでメンバーがステージに現れる。立ち見席まで人で溢れかえった超満員の野音が、華やかな声援に包まれる。まだ明るい青空と白い雲、緑の木々とビルに囲まれた野音のステージに彼らが立つのは今回が初。

「ザザ降り雨」からライヴはスタート。激しいイントロで左右に頭を振った後、手拍子が始まる。この曲のタイトル同様、さっきまで突然雨がざあざあ降ったリ止んだりしていた野音が、ここからいっきに熱気に包まれ、温度が急上昇。1曲目終わりで「バロックです。こんな時間(17時半過ぎ)に外でライヴやるのは新鮮だね。すっごい暑いけど(笑)」と怜(Vo)が話しながらさっそくジャケットを脱ぐ。

温度の急上昇にともなってトラブルに見舞われたギターのチューニングを圭(G)が調整している間、怜が晃(G)のトレードマークである黒いシルクハットを指差し「そのなか、タマゴでも入ってんの?(笑)」と晃いじりを始める。だが、そんな冗談にかまっていられないほどステージの体感温度は凄かったのだろう。「あっついよ~」と泣きそうな表情で嘆く晃。やっとギターの調整も終わり、「モノドラマ」でライヴ再開。「お手を拝借」という怜の独特のかけ声で「あなくろフィルム」。怜がお玉と鍋を手に持ち、お玉で鍋底を叩いてリズムをとりだすと、バロックファンも同じようにお玉で鍋底を叩き出す。バロック初期のナンバーのこの独特なパフォーマンスで観客を魅了する。

その後は新曲「メロウホロウ」でいっきに最新型のバロックにシフト。ここまで演奏してきた昭和歌謡的な懐メロ、哀愁を帯びたシャッフル調の曲とはまったく違うストレートな王道ポップチューン。“空”がキーになる歌とともに、気持ちよくこの曲は青空へ抜けていった。その後は「独楽」でオーディエンスをさらに激しく煽ったあと、怜がメンバーの自己紹介もかねたMCを展開。こんなMCが見られるのもイベントならでは。ここでは、この日不在だった万作(B)のベースを掲げて怜が紹介していた。

そこから後半はライヴ人気曲「我伐道」「唄」でいっきにテンションを上げていく。昭和ジャパネスクな曲からポップメロ、さらにはこういったヒップホップにアプローチした楽曲など、活動していた時代ごとに作る音楽も様変わりしてきたバロック。

「今日でファイナルだけど、もっとやりたい。久々にバンドらしい日々を過ごしていい経験になりました」という怜の挨拶のあと、「もう1曲、野外でこの曲を歌いたいと思います」といって「キャラメロドロップス」を披露。しっとりと怜の声を聴かせるバラードをバンド・サウンドで演奏しながらも、その奥にはさらっとエレクトリカなエッセンスが光るループ音が流れるアレンジは素晴らしかった。楽しいだけ、騒ぐだけじゃない、バロックならではの独特なパフォーマンス、幅広い音楽性、センスの高さなど、どこまでも自由に音楽を楽しんでいる彼らが伝わるライヴだった。

短い転換を挟んで、後攻はナイトメア。「VERMILION.」で幕を開けたこの日のライヴ。ワンマンと違ってイベントは短時間勝負。そこを踏まえた上で、彼らは開始早々から容赦なくいっきにフルパワーでオーディエンスに襲いかかる。「BOYS BE SUSPICIOUS」「ジャイアニズム死」。頭3曲、インパクトある楽曲を並べて息つく暇もなく観客を取り込んで“ナイトメア”の美学を見せつけていく様は、見ていて圧巻。

「ナイトメア、いろいろあって(笑)7年ぶりにやっとここに帰ってきました。いやぁ~、やっぱり野外はいいよ。お前らも気持ちいいだろ? もっと気持ちよくなろう」。そんなYOMI(Vo)のMCで、さらにナイトメア・ファンの心に火がついた。そこでヒット曲「the WORLD」を演奏し、ナイトメア以外のファンにもきっちりアピール。登場時、日よけ対策でサンバイザーをかぶっていたRUKA(Dr)が、いつの間にかバイザーを外している。この時間帯になると太陽も沈み、ナイトメアにふさわしい夜が野音を包んでいく。

「ナイトメアvsバロック、最初はどうなるんだろうと思ったんですけど。やってみたらバロックに気づかされることがたくさんあって。2マンやってよかったなと思います」というYOMI。「この後は全員で走り抜けるぞ!」というかけ声を合図に、後半はいっきにスパーク。「惰性ブギー」のギターのイントロがスタートすると、野音を埋め尽くした観客が一斉に踊り出す。フロントまで出てきた柩(G)が独特な動きで観客にアピール。咲人の横にいって肩を組んだYOMIがいやらしい手つきでギターを弾く咲人の右腕を撫でると、観客からは悲鳴が上がる。その後、YOMIがお玉と鍋を持って登場し、間奏の間これを叩くというパフォーマンスでバロックファンを驚かせる。さらに、Ni~ya(B)が“オラオラ”な表情でイントロのベースを弾く「HATE」。こちらはナイトメア・ファンから大きな歓声が上がる。

「跳べ、跳べ、跳べ跳べ跳べ跳べ!」というYOMIのかけ声で始まった「自傷」で限界まで大騒ぎした後、さらに猛烈なスピードチューン「極東乱心天国」で、メンバーも観客もエネルギーを使い尽くす寸前というタイミングでやってくるこの曲の間奏パート。後ろにはRUKA、その前にあるセンターのお立ち台には他のメンバー4人が一斉に集まり、揃って身体を前後に揺らすシーンがやってきたときの“やりきった感”はワンマンライヴ並の達成感があった。そして、最後。夜空にぴったりの「Star[K]night」をファンとともに大合唱して、ナイトメアvsバロックが本気で自分たちを出しまくった濃厚な2マンは幕を閉じた。

この日は嬉しいニュースの報告もあった。YOMIから、9月29日(土)仙台市民会館、10月6日(土)Zepp Tokyoで開催されるlittle HEARTS.の4周年イベント<MY little HEARTS Special Edition Vol.4>でもこの2バンドの競演が告げられたのだ。今回見逃した人は、ぜひ足を運んで、彼らの濃厚な対バンを体感して欲しい。

取材・文●東條祥恵
写真●北岡一浩

<MY little HEARTS Special Edition Vol.4>
●9月29日(土)仙台市民会館
開場16:00 開演17:00
出演:ナイトメア、バロック、jealkb、Sadie、wyse、DaizyStripper、vistlip
チケット 前売り¥4800(tax in)、当日¥5800(tax in)
一般発売 2012年9月1日(土)
(問)キョードー東北 022-217-7788
●10月6日(土)Zepp Tokyo
開場 16:00 開演17:00
出演:ナイトメア、バロック、Sadie、vistlip、wyse、DaizyStripper、ギルガメッシュ
チケット 前売り¥4800(tax in)、当日¥5800(tax in) ※各ドリンク代別途¥500
一般発売 2012年9月1日(土)
(問)ディスクガレージ 050-5533-0888

◆ナイトメア オフィシャル・サイト
◆バロック オフィシャル・サイト
◆little HEARTS.オフィシャル・サイト
◆BARKS ナイトメアvsバロック SPECIAL TALK
◆BARKS ヴィジュアル系・V-Rockチャンネル「VARKS」
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