【インタビュー】石月努、『プテラノサウルス』に刻まれた8年間の想いと現在のリアル

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365日の軌跡を、一枚のアルバムへ託しながら…。1stアルバム『プテラノサウルス』を手に、より強く羽ばたき始めた石月努の今。2012年の夏、石月努は、ふたたび音楽活動を始めることを世の中へ向かって宣言。あれから間もなく一年の歳月が経とうとしている。その間にも彼は、シングルやミニ・アルバムの発売から渋谷公会堂での単独ライブやイベント・ツアーなど、精力的な活動を行い続けてきた。

◆石月努画像

でも同時に彼は、石附努というデザイナー/クリエイターとしてのもう一つの顔を持っている。二つの表情のバランスを上手く操りながら、ここ一年、彼は走り続けてきた。むしろ今は、眠らせていた想いを次々形にして届けたい気持ちから、石月努としての顔が中心になっている。だからこそ彼は、「今の僕自身」をみんなに伝えたかった。

6月5日、市場へ解き放たれる石月努としての1stアルバム『プテラノサウルス』。ここには、とても生々しい石月努の言葉が、息吹が詰め込まれている。インタビューは、そんな石月努の日常に触れることから始まった。

■今は音楽を届けたい気持ちが強い。
■その気持ちに嘘つくことなく演っていきたい

──2012年7月に、「音楽活動の再開」を宣言。実際に表舞台へ登場してから、間もなく一年が経とうとしています。当初は、本業であるデザイナー/クリエイターとしての活動を軸に置きながら、そことのバランスを取った形で音楽表現も演り続ける…と思っていたのですが。気がついたら、音楽活動に表現の比重を傾けていません?

石月:やっぱし、ひとつのことを始めた以上「中途半端なことが出来ない性格」が出てきたってことなんでしょうね。最初は、「伝えたい想い」を一番リアルに届ける術として音楽という表現手段を選び、そこからDVDシングルとして『365の奇跡』をリリース。同時に、渋谷公会堂でのライブも告知する形で始まったわけですけど。ふたたび音楽を通した表現の術を選んで以降、次々と楽曲も生まれてきましたし。渋谷公会堂というライブに向けた楽曲を届けたくて、『DROP』というミニ・アルバムも制作しました。もちろん、他にもいろんな形で楽曲を届けてきたように、走り出した以上、その歩みを一つのパッケージにして残しておきたい気持ちもズッとありました。だからこそ、この一年間の軌跡を、こうやってアルバムという形にまとめあげたわけなんです。

──音楽家としての魂に火が着いちゃったんですね。

石月:「伝えたい歌が次々とあふれ出てくる」以上、それを「世の中に届けたい」のも正直な気持ちです。その想いが出てこなくなったら、無理に活動を続けるのではなく、ふたたび気持ちが沸き上がるまで休むつもりですけど。でも、「今は音楽を届けたい気持ちが強いのなら、その気持ちに嘘つくことなく演っていきたいなぁ」とも思ってて。

──それくらい、たくさんの想いが沸き上がるって素敵なことだと思います。

石月:2013年の頭に僕は、渋谷公会堂のステージ上から、待っててくれた人たちへ向け「久しぶりに音楽の世界に帰ってきましたよ」と宣言したわけですけど、その舞台へ立つための準備も含め、実際に動き始めたら、いろんな感情や表情を持った歌たちが生まれてきました。しかもファンの人たちから「こんなにも精力的に動いてくれるとは思わなかったから嬉しかった」と言われるたびに、「だったら、もっと頑張っちゃおうかな」と思うあまり、つい最近までC/Wツアーを行ってたり。そういう活動をまとめあげるうえでも、アルバムという形を取れたのは良かったなと思っています。

■素直にいれる心の強さが
■気持ちの支えや力になっていく

──アルバム『プテラノサウルス』の冒頭を飾ったのが、同名タイトル・ナンバーの「プテラノサウルス」。時計の秒針と心臓の鼓動が鳴り響く形で幕を開けてゆく始まりに、この曲に詰め込んだいろんな想いを感じました。

石月:アルバムを作るに当たり、「この作品を形作るうえでのコンセプトって何だろう」と考えました。そのときに出てきたのが、「時間の経過」でした。7年間音楽の世界を離れていた石月努が、また音楽を始めることになったのも、その「時間の経過」が密接に関係していたのも事実。「また始まる」というイメージを形にしていくうえで、時計の秒針の音や心臓の鼓動音がそれを指し示してくれると思ったし。加えて、これまでの活動を総括するような想いを記した「プテラノサウルス」という楽曲が生まれたことも、このアルバムを作るうえで大きな力になったことでした。

──『プテラノサウルス』には、とてもわかりやすい言葉で石月努が人生を歩んでいくうえでの指針が記されています。

石月:人は大人になるにつれ、いろんな面で自分を武装していくじゃないですか。ときにはそれが、言葉による理論武装だったり。しかも経験を重ねることで、何時しか「こういうものだ」という価値観さえ凝り固まってしまう。だからこそ僕は、創作活動を続けていく中、子供の頃の自分のことを思い出していました。ただただ自分の感じるがまま、何の制約も抱くことなく過ごしていた頃のことを。あの頃って、何をやるにも理屈は必要なかったですからね。「そんな自分で今も表現したいな」と思ったことが、わかりやすい言葉を記した「プテラノサウルス」という歌へ繋がりました。

──「プテラノサウルス」もそうですが、石月努ナンバーの場合、どれも平易な言葉で書き記すことが多くないですか?

石月:今は、とてもわかりやすい言葉で書いてます。でも、その言葉の裏側にはいろんなメッセージを含んでいるように、私的と言えば私的でもあるんですけど。そこは「聴く人たちに委ねる形でいいんだろうなぁ」と思っています。

──むしろ、言葉で武装することなく。自分を着飾り守るための鎧をすべて脱ぎ捨て、裸の自分のまま、ただただ「感じた想い」を歌にしている。だからこそ、余計に想いが響きやすいんでしょうね。

石月:「何を思われてもいいや」じゃないですけど。何をやろうが、言いたい奴は言うわけだし、すべての人たちが自分の味方になるなんてあり得ないこと。何時だって賛否は出てくるもの。それは、普通に社会で生きてる中、誰の身近にも出てくることじゃないですか。だったら余計な勘繰りは捨て、自分で「面白い」と思えることを素直に演って、「それをまわりで楽しんでくれる人もいたらいいな」。そういう気持ちで音楽活動に向かっていた自分になれていたんです。もちろん人である以上、時には自分の気持ちが振れてしまうことだってあるかも知れない。それでも「素直にいれる心の強さ」を持ってれば、それが音楽を創作していく気持ちの支えや力になっていく。僕は、そう思っています。

──そういう気持ちを総括したのが、『プテラノサウルス』になるわけですか。

石月:この一年間の制作活動を通し、膨大な楽曲のストックが生まれました。その中から、「今の石月努を表現するのに相応しい曲たち」をチョイスしながらアルバム制作を行ってきたわけですけど、同時に「選んだ曲たちをトータルして語っている、そんなお題目的な楽曲が欲しくなっていた」自分もいました。「プテラノサウルス」は、僕にしては珍しい歌詞先行で作った楽曲。冒頭<僕に残された時間はあとどれ位?>という言葉を記した歌詞を読んだときに、「このアルバムをまとめあげるに相応しい想いがここにある」と感じ、そこから作りあげたのが、この『プテラノサウルス』でした。アルバムでは冒頭を飾っていますが、実は作品中これが一番最後に出来た歌なんです。

──『プテラノサウルス』に何度も出てくる“君”という言葉、それは個人やファンたち、世の中など、いろんな風に捉えていける意味を持っていません?

石月:僕が求めていきたいのは「対・個人」。つまり「人との繋がり」なんです。結局は、人が居ての社会じゃないですか。僕は2013年36歳になったんですけど、この歳になると、親戚や友達も含め、命を失くしてしまう方も出てきます。「人の命って何なんだろうなぁ」と考えることもふえましたよね。たとえばの話、「僕が命を失くす寸前に何を思うのか」「何が欲しいのか」と思ったら、やっぱし「人との繋がり」なんですよね。日常にまみれ過ごしていると、たとえ強く心の中で思っていたことでも、時間と共に消えたり色褪せてしまうことってあるじゃないですか。それが良い悪いではなく、誰にでもそれはあること。だからこそ「一瞬一瞬を大事に生きたい」し、「そこで生まれた繋がりを大切に育んでいきたい」と、僕は事あるごとに感じています。

──今回のジャケットは、プテラノサウルスをイメージしたもの。これは公募のもと選んだ作品だと聞きました。

石月:僕が幼少の頃に書いたプテラノサウルスの絵が実家にある…と言うか、あると思って探したんですけど、見つからなくって。だったら、「ジャケットを公募し、そのジャケットさえも、みんなに選んでもらおう」という形のもと、数多くの応募をいただき。その中からいくつかの作品を選び出し、ファンの人たちの投票のもと決めてもらいました。そこでも、対・人という関係で繋がりを持てていった。それも素敵なことだなぁと思って。アルバム『プテラノサウルス』に収録したのは、一度音楽活動を止めたときから今現在までの8年間の日々の中で想い、感じたことを形にした歌たち。どの楽曲も、まったく着飾ることなく、素直に感じたままに言葉傾けた歌ばかりなんです。

──アルバムには、「365の奇跡」「I.S.」「銀ノ雨」、そして先行配信リリースとなった「Parade」など既発の歌も収録になっています。

石月:「Parade」は、「365の奇跡」と同じ時期に生まれたよう、作ったのはけっこう前になるんです。アルバムに先駆け、早くみんなへ聴かせたくて、配信限定シングルという形で先行リリースしたものなんです。『プテラノサウルス』は、「365の奇跡」から始まって、このアルバムへたどり着くまでの日々の歩みをパッケージした作品。ここへ詰め込んだのは、一度音楽活動を止めたときから今現在までの8年間の日々の中、その間に想い、感じたことを形にした歌たち。しかもどの楽曲も、まったく着飾ることなく、素直に感じたままに言葉傾けた歌ばかりなんですね。だからこそ、「8年間の石月努の想い」であり「今現在のリアルな石月努」の姿を、こうやって一枚の作品にまとめあげられたんだと思います。

──このアルバムを通すことで、本当に「身近な石月努」という姿を感じることが出来ますからね。

石月:ホント、飾ってない姿のね。このアルバムを聞いて何かしら日常の視点が変わったり、想い巡らせることが生まれたりなど、少しでも心動いてくれたら嬉しいなと思っています。

──アルバムには、本当にいろんな心模様を見せた石月努が顔を覗かせています。

石月:仲間と一緒に大騒ぎしてゆく絵が見える、90年代ロックした「RUSTY EMOTION」。「日本人、頑張ろうぜ!!」と呼びかけた、東日本大震災の経験をもとに生まれた「Parade」。ふたたび繋がりあえたファンたちとの想いをきっかけに、あらためて感謝の気持ちをみんなへ伝えたくて作った「ありがとう。」。ジャジーでボサッぽい表情のもと、大人の恋を描いた「最後の恋」。エッチな遊び心も見えてくる「SNIPER」。今は会わなくなった昔の友達に対して、僕もまだまだ夢に向かって歩き続けてるよと歌いかけた「向日葵」などなど。この8年間の想いを形にしたことで、改めて時間の流れが、僕にいろんなことを教えてくれました。もし、この時間がなかったら。バンドを解散した後も無理に音楽活動を続けていたら、きっと、こういう曲たちは生まれてこなければ、みんなと笑顔で会えることもなかったのかなと想像するんです。それくらい『プテラノサウルス』というアルバムには、音楽活動を止めてからふたたび動き出すまでの僕自身の想いと経験が詰め込まれています。

──10月からは、このアルバムを手にした全国ワンマン・ツアー<1st LIVE TOUR 2013 石月努 プテラノサウルスがやって来る。ヤァ!ヤァ!ヤァ!>がスタートします。やはりアルバムを作った以上は…。

石月:みなさんの元へ生で届けたいですからね。ふたたびライブを通して、各地の仲間たちと出会えるのが、今からホント楽しみなんです。と同時に、まだどうするかは未定ですけど。「最後の恋」のようアコースティックな表情を持った、小さな会場で演奏するのが似合う楽曲も数多く生まれているように、それらをまとめた作品や、「座って飲食しながら音楽を楽しめる会場でもライブを演りたいな」とも考えています。そのスタイルも、活動を再開して以降生まれた一連の流れの中の大切な表情。それだけに、やっぱし何かしらの姿にしていきたいなぁと思ってて。もちろん、石附努としての仕事も並行してとはいえ、今年一年は石月努として、まだまだ走り続けるつもりです。

取材・文:長澤智典

<石月 努 1st LIVE TOUR 2013 プテラノサウルスがやって来る。ヤァ!ヤァ!ヤァ!>
10月12日(土)@柏PALOOZA [問]SOGO TOKYO/TEL03-3405-9999
10月14日(祝)@Heaven's Rockさいたま新都心VJ-3 [問]SOGO TOKYO/TEL03-3405-9999
10月20日(日)@名古屋CLUB QUATTRO [問]サンデーフォークプロモーション/TEL052-320-9100
10月27日(日)@札幌cube garden [問]マウントアライブ/TEL011-211-5600
11月 2日(土)@福岡DRUM Be-1 [問]キョードー西日本/TEL092-714-0159
11月 3日(日)@梅田CLUB QUATTRO [問]SOGO OSAKA/TEL06-6344-3326
11月10日(日)@赤坂BLITZ [問]SOGO TOKYO/TEL03-3405-9999
[時間]OPEN 16:00 START 17:00
[チケット料金]前売4,800円(税込・D別)
一般発売は2013年8月24日(土)AM10:00
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