【ライヴレポート】凛として時雨、時間も空間も超える感動が武道館に満ちたツアーファイナル

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毅然とした激しくも美しいライヴだった。

◆凛として時雨@日本武道館~拡大画像~

6月28日(金)、凛として時雨は<凛として時雨 TOUR2013“Dear Perfect” ONE MAN LIVE at 日本武道館~10th Tornado Anniversary~>と題し、初の日本武道館ワンマンを大成功に終わらせた。最新オリジナルアルバム『i’mperfect』を携え、海外公演を含む全国各地を廻ったツアーファイナルだ。

アーチ状の柱がセンターに配されたセットは、きわめてシンプル。客電が落ちると歓声と拍手が響きわたり、暗くなったステージに3人が登場。ピエール中野が右手を高く掲げている。

オープニングはTKのボーカルとギターで始まり、345とピエール中野のリズムセクションが加わって、一瞬で武道館を凛として時雨ワールドに染めてしまった「abnormalize」。脳内をかき乱されるような刺激物を食らったような気分だ。

イントロで345がジャンプした「MONSTER」は、タペストリーのように緻密に絡みあう3人の演奏と、TKと345のボーカルのかけあいに息をのむ。ピエール中野のビートが身体を揺らし、メロディアスなベースラインが曲のフックとなり、TKの鋭利なカッティングが快楽へと変わっていく。

TKのアルペジオで始まる「Metamorphose」ではアーチの照明が虹色に変わり、音が洪水のようにあふれ出していく。

MCはないが、空間は満たされている。

TKが歌い出したとたん、大歓声が飛んだ「I was music」、ピエール中野がドラム台から立ち上がって煽った「DISCO FLIGHT」では、白い光がステージと客席に降り注ぎ、武道館はダンスフロアーと化す。3人の集中力、テンションの張った緊張感はまったく途切れることがない。TKがトリッキーなソロを響かせる裏での2人の演奏など聴きどころだらけだ。

スクリーンは設置されていないから、3人の表情は距離のある席からは読みとることができない。だけど、凛として時雨が歌って演奏し、照明がその世界観を増幅させる。それだけで十分だ。そう思わせてくれる。間髪入れずリピートされるギターリフがしびれるインディー時代のナンバー「O.F.T」へと。

「make up syndrome」から「Filmsick Mystery」へと移行し、最新アルバムの曲がたて続けに披露される中盤は特に素晴らしかった。まるでドライアイスのように冷たく、触れたら火傷しそうに熱い彼らの演奏に身を委ねていると、ここが東京の日本武道館であることすら忘れてしまう。まるで、どこか違う惑星に迷い込んでライヴを見ているような──。もしくは武道館全体が宇宙船で、すでに離陸しているのではないかという錯覚に陥る。それぐらい、凛として時雨の音楽が意識を遠くまで飛ばせてくれるということなのだが、「Sitai miss me」の美しく性急な演奏や上へ上へとのぼりつめていくようなTKと345のボーカル。青い照明と静かなる激しさに圧倒される「キミトオク」もライヴでさらなる強い光を放っていた。

TKが小さな声で「ありがとう」と言い、ここからは恒例のピエール中野のコーナー。

「余韻にお浸りのところ、申し訳ありませんが、しゃべってよろしいですか? ライヴハウス、武道館にようこそ! 申し遅れました。私、埼玉県は越谷から(電車経路を話す)九段下までやってまいりました。ピエール中野です!」

そう元気に自己紹介し、栄養ドリンクを地下鉄構内の自販機で買おうとしたら、商品が出てこなくて入れ替えのために通りがかった職員に助けを求めていたところをスタッフに目撃された話や、ファンがいるかと思ってドキドキしながら武道館に向かったら誰もいなくて楽勝で看板の前で写真を撮ったという話で笑わせる。それでもオーディエンスの反応にもの足りなさを感じたらしく、ドラム台から離れセンターにまで出て大歓声。「俺がチョコレイトって言ったらディスコって言って!」とコール&レスポンスで盛り上げる。最後は恒例となったXジャンプでコーナーを締めくくった。

まだ、しゃべりそうな様子を見せながらも、ドラムソロに突入し、幻想的な「illusion is mine」から後半戦に突入。そして、目がくらむような眩しい照明が突き刺す「Beautiful Circus」ではTKがすさまじいソロを弾きたおし、「テレキャスターの真実」「Telecastic fake show」と場内の温度をどんどん上昇させていく。場所や時間の感覚さえ、すっ飛ばされる。これが凛として時雨のライヴの魔力だ。

345がメインボーカルをとる「am3:45」ではミラーボールがまわり、光のショーのような演出に身体が宙に浮くような感覚を覚え、惜しみない拍手がわきおこった。

「こんばんは。凛として時雨です。今日はこんなにたくさんの人がここまで来てくれて、ありがとうございます」

345が感謝の言葉を述べ、初々しい仕草で「エメラルドグリーンのタオルを作りました」とグッズ紹介をした後は、“初めて君を見つけた あの日は永遠”と歌う切ないラストナンバー「Missing ling」。内的感情の爆発。そのスゴイ演奏に一瞬、場内は静まりかえり、TKがギターを置く音までが武道館に響いた。


メンバーがステージを去り、ライトアップされたままのステージ。鳴り響くアンコール。やがて、客電がついたけれど、この日の記憶は深く深く刻まれたはずだ。

取材・文●山本弘子
撮影●河本悠貴

凛として時雨「凛として時雨TOUR 2013 "Dear Perfect" ONEMAN LIVE at 日本武道館 ~10th Tornado Anniversary~」
2013年6月28日(金)東京都 日本武道館
セットリスト
01. abnormalize
02. JPOP Xfile
03. MONSTER
04. Metamorphose
05. I was music
06. DISCO FLIGHT
07. O.F.T
08. make up syndrome
09. Filmsick Mystery
10. Sitai miss me
11. キミトオク
12. illusion is mine
13. Beautiful Circus
14. 想像のSecurity
15. テレキャスターの真実
16. Telecastic fake show
17. nakano kill you
18. am3:45
19. Missing ling

◆凛として時雨 オフィシャルサイト
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