【短期集中連載】アヲイ「終奏物語」[vol.2]

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2013年6月2日、渋谷O-WESTでのツアーファイナル公演にて2014年1月12日にLIQUIDROOM edisuでのワンマン公演を発表したアヲイ。2013年10月20日に5th Mini Album 「終わりのメロディ」をリリースした彼らが行うリリースツアー<終奏>のファイナル公演に相応しい大舞台だ。そんなアヲイの内部を短期集中連載としてフィクション、ノンフィクションを交え、メンバーが執筆した小説をみなさんにお伝えしていく。第2回目はBassのサキだ。


 ◆  ◆  ◆


あれからいったいどれ程の時間が経ったのだろうか。

いつの間にか気を失ってしまっていた。

いや、正確には、「失わされていた。」と言う方が正しいのだろう。

そう。

気がつけば普段よく目にしている天井、そうそこは事務所の天井、時刻は17時に差し掛かろうとしていた。


どうやら小一時間程、気を失い、横になっていたようだ。

辺りを見回すと、そこにはオトギとRyoも横たわっていた、どうやら慎と翔。は既に事務所を立ち去っていたようだ。

残された三人、オトギとRyoは未だ目を覚ます様子もない…、なんだかこの世の全ての人間が眠っている中で自分一人だけ目を覚ましてしまったような孤独感を感じる。

そういえば事務所のスタッフ一同はどうしたのだろうか…。

誰一人として居ない、と言うのも妙な話だ、メンバーを残して事務所を空にするとも思えない。


時刻は既に17時半を回っていた。

…妙だ。

この状況もそうではあるが、こんなにも、こんなにも…。

一日の中で全てが無音の瞬間などあるのだろうか…。

外を行き交う車の音や、鳥の囀り、人々の話し声。

そう。

所謂、『雑踏の音』、と呼ばれる音があまりにも無いのである。


「ドンドンドンッ!!!!!…ドンッ!!!ドンドン…!」

思わず身を竦めてしまった。

ふいに事務所の扉を乱雑に叩き散らす音。

感じていた妙な違和感をかき消すには相応しくない、あまりにも唐突なその音は、明らかな新たな違和感と恐怖を放っていた。

恐る恐る、ドアに近づき、覗き穴を除いてみる。


そこには。

そう、そこには。

明らかに今まで、映画や小説の世界でしか目にした事のない『何か』が居て、『それ』がドアを叩いていた。

この言葉を使ってしまうにはあまりにも荒唐無稽と言うか、滑稽と言うか、しかしドアの向こうの『それ』を言葉で表すには他に選択肢は無く。

覗き穴の向こうに居た『それ』は、こう呼ぶ以外に、他に呼称のしようが無かった。


「ゾンビだ……。」


自分でもその言葉を口にするのに些かの抵抗は感じたが、そこに居る『それ』は、そう…ゾンビと呼ぶ以外に他にどうしようもないものだったのだ。

普段から割とその手の映画や小説等を好んで手に取り、フィクションの世界ながら知識はそれなりに持ち合わせていただけに、外の現状の大方の予想はすぐにつくことになった。

そのおかげで…と言うべきなのかどうかはさておき、次にとるべき行動には、容易に達することが出来た。

二人を起こし、この事務所内への侵入を防ぐ行動をとるべきだ、と。

しかし、考えるより前に二人のもとへ駆け寄ろうとするその足を止める、ある一つの記憶の断片がふいに頭を過った。



翔。が…。

何かを言っていた…。

あれは何だったか…。

たしか…こう言っていたはずだ……。

「お願いやから何も聞かずに、このコップ一杯の麦茶を飲んで欲しい、メンバー五人の分をかき集めるのでやっとやったんや…頼むわ……!」


あの麦茶は一体、どういったモノだったのか、それはまだ現段階ではわからないが。

その麦茶を、間違いなく、メンバー全員が飲んでいた光景だけは思い出せた。

翔。はこの事態を予測していたのか…世界がこうなる事を知っていたのか…?

オトギとRyoに身体的な異変は今のところは見られないが…、慎と翔。は……、どうなったんだ…?

外にはもうまともな生存者は居ないのか…?


こうして、10月23日(水)に『終わりのメロディ』という通算5枚目になるアヲイのミニアルバム(初回A,B盤共に¥2,940-、通常盤¥2,310-)を発表し、それに伴うリリース記念ツアー<終奏>、そしてその終着地点に定めた、過去最大キャパシティになる会場、2014年1月12日(日)LIQUIDROOM までの…。

10年目に差し掛かろうとしているバンドの、長い長い闘いの道のりが、幕を開けた。

敵は己自身の弱い心だけではなく、この現状が物語るようにすぐそこに迫り来ている、『死』を運ぶ怪物達もそうだ。

アヲイに残された時間はあと僅か。

いったいこの世界は…そしてアヲイのツアーは…どうなってしまうのか……。



そんな、今にも崩れ落ちてしまいそうな現実の絶望の淵に立たされ、それでも何か希望は残っている筈だと。

焦燥感に駆られながらもひたすら思考を駆け巡らせていると。

事務所のパソコンが一通のメールの着信を知らせるメロディを奏でたのだった。


次回予告。

『交錯するそれぞれの思惑』


2013.10.23 5th Mini Album 「終わりのメロディ」 リリース
【初回限定盤A-type】
CD( 全5 曲)+DVD(PV) 2 枚組 ¥2,940-(tax in) BRA-028
【初回限定盤B-type】
CD( 全5 曲)+DVD 2 枚組 ¥2,940-(tax in) BRA-029
【通常盤】 CD 全6 曲 2,310-(tax in) BRA-030

アヲイ5th Mini Album 「終わりのメロディ」Release TOUR<終奏>
10 月30 日( 水) OSAKA BIG CAT
11 月01 日( 金) 名古屋Electric Lady Land
11 月02 日( 土) HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3
11 月05 日( 火) 高田馬場AREA
11 月15 日( 金) 新横浜NEW SIDE BEACH!!
11 月17 日( 日) 柏PALOOZA
11 月23 日( 土) 秋田 Club SWINDLE
11 月24 日( 日) 盛岡Club Change
11 月26 日( 火) 青森Quarter
11 月28 日( 木) 仙台MACANA
11 月29 日( 金) 郡山CLUB♯9
11 月30 日( 土) 山形ミュージック昭和Session
12 月06 日( 金) 博多DRUM SON
12 月08 日( 日) 岡山CRAZYMAMA 2nd ROOM
12 月10 日( 火) 神戸VARIT.
12 月13 日( 金) OSAKA MUSE
12 月27 日( 金) 高田馬場AREA

TOUR FINAL ONEMAN
2014年1月12日(日) LIQUIDROOM
開場 16:00 / 開演 17:00 前売 3,990円(D別) / 4,500円(D別)
チケット一般発売:10/26(土)


◆アヲイオフィシャルサイト
◆BARKS ヴィジュアル系・V-RCOKチャンネル「VARKS」
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