【短期集中連載】アヲイ「終奏物語」[vol.3]

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2013年6月2日、渋谷O-WESTでのツアーファイナル公演にて2014年1月12日にLIQUIDROOM edisuでのワンマン公演を発表したアヲイ。2013年10月20日に5th Mini Album 「終わりのメロディ」をリリースした彼らが行うリリースツアー<終奏>のファイナル公演に相応しい大舞台だ。そんなアヲイの内部を短期集中連載としてフィクション、ノンフィクションを交え、メンバーが執筆した小説をみなさんにお伝えしていく。第3回目はVocalのオトギだ。


 ◆  ◆  ◆


この常軌を逸した状況下でパソコンのメール着信の音というものは、余りにも平凡で、そして、ある意味間抜けだとも感じてしまうものであった。

「ゴクリ…」

絶望的にピンチなこの場面で、その場の空気を一瞬止めてしまう程に違和感を放ったその音に、3人は息を飲んだ。

「ゴクリ…ゴクゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、プハァーッ、ゴクゴクッ…」

気が付けば3人は息を飲み過ぎていた。

「おい、待て。ちょっと飲み過ぎじゃないか?」

「ペシッ」

いち早くその異常な状況に気付いたサキが、皆の頬を軽く叩き、正気に戻した。

サキのビンタで2倍近くに腫れ上がった頬をさすりながら、皆の視線は再び、そのパソコンへと集まった。

「俺…開いてみていいかな?」

ただただ事務所の扉を叩く音だけが鳴り響く中で、最初に口を開いたのはRyoだった。

「開いても、いいかなー?」

その問いかけに対して、皆は、言葉は発さず(いや、発する余裕も無かったのかもしれないが)、首から上だけの微かな動きで「いいともー!」の意思をRyoに伝えた。

Ryoは皆に親指を立てて見せ、「任せろ」と意思表示をすると、秒速2mほどの速度で、パソコンの前へ向かった。

10秒後、Ryoはパソコンの前に辿り着き、慣れた手つきでマウスを動かしメールを開いた。


「…?」


Ryoはメールを開き、一瞬覗き込んでから無言で首を傾げた。


「どう…したん?」


サキが不安そうに問いかけた。

「いや…メールの内容がさ…全く読めなくて…」

「え?どういう事?」

サキはすぐさまRyoの元へ、秒速8mの速度で駆け寄ると、そのメールの内容を確認した。

送信者は…翔。??

これは翔。から送られてきたメールだった。

「翔くん、無事で良かった…」

消息不明だった翔。からのメールに、サキは少し安堵を感じた。
しかしその安堵も束の間、そのメールの内容に目をやるなり、眉間にシワを寄せて、Ryoと全く同じ角度とポージングで首を傾げた。

「な、な、な、なんじゃこりゃ…?」

そこに羅列されている文字、いや、文字かどうかすらも断定できない、見た事もないような「記号」で構成された文章がそこにあった。

例えるなら、いつぞやテレビで見た事のあるような古代文字。

「Ryoちゃん、これ、読める?」

「いやいやいや、無理やわ…」

大きなため息をつくと、サキとRyoはそのまま黙り込んでしまった。


「その者、尊き光の刃を携え、帝国の勇者と呼ばれし…」


…!!!


突然、オトギがメールを覗き込ながら、何か呟き始めた。


「…5人の戦士が集いし時、世界の終焉から人々を救えよう。」


「は!?」

「ちょっと、待てよ!お前、読めるのか!?」


サキとRyoが慌ててオトギに話し掛ける。

オトギは、驚くサキとRyoを無視し、メールを読み続けた。

「死の運命に逆らいし邪悪な病原体、大地の恵みから授かりし聖なる茶にて滅ぼすべし。」

全て読み終わると、オトギは大量の冷や汗を流し、その場にへたり込んでしまった。

「今の…何だったんだ?」

サキとRyoは顔を見合わせた後、まるで糸の切れた操り人形のようにへたり込むオトギを抱え上げた。

「今の、読めたの?」

Ryoがオトギに問いかけた。

「うん、これ、俺の国に伝わる古い文字なんだよね。小さい頃、よくおばあちゃんに古い本を読まされてたから、いくらか読めるんだ…よ…ね…グガァー、スピィー、グガァー、スピィー…」

オトギはそう言って眠ってしまった。

が、5秒後に再び目を覚ましこう言った。

「麦茶飲んだら大丈夫、麦茶は身体にいいからね、ノンカフェインだし、あと変な病気とか変なゾンビにも効くからね…」

そう言い残し、オトギが再び眠ってしまうと、オトギの身体が急に半透明になり始めた。

「えっ、これヤバイやつじゃない!?」

「あれやん!最後の力を振り絞ったせいで命のエネルギーまで使い果たして、この世から存在が消滅してしまうパターンのやつやん!」

サキとRyoの焦りは虚しく、オトギの身体はもう殆ど透けてしまっている。

「俺は大丈夫だから…大丈夫…だ…から…」

もう表情すら分からない程に透けてしまったオトギの顔は、笑っているように見えた。

「おーてぃーじー!!おぉーー!てぃーー!ずぃーーー!!!」

「…。」

オトギは、跡形もなく消えてしまった。

残された2人はこの数分間に起こった出来事の数々を頭で処理しきれず、ただ無言のまま、残されたオトギのジャージだけを見つめていた。


ドンドンドンドンッ!


突然に、ゾンビは激しく扉を叩き始めた。
そのあまりに大きく唐突な音に、ようやく2人は正気を取り戻した。

どうしようかと辺りを見回すサキとRyoは、消滅したオトギのジャージの中に何かを見つけた。

「これ、使えるんじゃない?」

「でも、何でこんなものがここに…」

2人がかりでやっと持ち上げる事ができたそれは、憶測でしかないが、これから進むべき一つの道を導き出した。
「いける…いけるぞ!」

バゴォン!

!!!

その瞬間、ゾンビはついに扉を破り、事務所の中に侵入してきた。


次回予告
『残された秘宝』


2013.10.23 5th Mini Album 「終わりのメロディ」 リリース
【初回限定盤A-type】
CD( 全5 曲)+DVD(PV) 2 枚組 ¥2,940-(tax in) BRA-028
【初回限定盤B-type】
CD( 全5 曲)+DVD 2 枚組 ¥2,940-(tax in) BRA-029
【通常盤】 CD 全6 曲 2,310-(tax in) BRA-030

アヲイ5th Mini Album 「終わりのメロディ」Release TOUR<終奏>
10 月30 日( 水) OSAKA BIG CAT
11 月01 日( 金) 名古屋Electric Lady Land
11 月02 日( 土) HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3
11 月05 日( 火) 高田馬場AREA
11 月15 日( 金) 新横浜NEW SIDE BEACH!!
11 月17 日( 日) 柏PALOOZA
11 月23 日( 土) 秋田 Club SWINDLE
11 月24 日( 日) 盛岡Club Change
11 月26 日( 火) 青森Quarter
11 月28 日( 木) 仙台MACANA
11 月29 日( 金) 郡山CLUB♯9
11 月30 日( 土) 山形ミュージック昭和Session
12 月06 日( 金) 博多DRUM SON
12 月08 日( 日) 岡山CRAZYMAMA 2nd ROOM
12 月10 日( 火) 神戸VARIT.
12 月13 日( 金) OSAKA MUSE
12 月27 日( 金) 高田馬場AREA

TOUR FINAL ONEMAN
2014年1月12日(日) LIQUIDROOM
開場 16:00 / 開演 17:00 前売 3,990円(D別) / 4,500円(D別)
チケット一般発売:10/26(土)


◆アヲイオフィシャルサイト
◆BARKS ヴィジュアル系・V-RCOKチャンネル「VARKS」
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