【クロスビート特別コラム】サウンドガーデンとナイン・インチ・ネイルズのダブル・ヘッドライナー

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クロスビートの(元)編集部員、中嶋がアメリカからお届けする、現地での公演やヒットに関する不定期コラム。第2回は、サウンドガーデンとナイン・インチ・ネイルズのダブル・ヘッドライナー・ツアーの模様をお届け。

◆サウンドガーデン、ナイン・インチ・ネイルズ画像

サウンドガーデン『スーパーアンノウン』とNIN『ザ・ダウンワード・スパイラル』は、共に1994年3月8日にリリースされ、サウンドガーデンが初登場1位、NINが2位を獲得した。そのチャートの結果を本人達がどう思っているかは知らないが、クリス・コーネルがソロ・アルバムを発表した際トレント・レズナーがツイッターで「不愉快なアルバム」と批評したのに対し、クリスがトレントのNIN以前のダサいYouTube映像を貼って応戦したのを覚えている身としては、今回のツアー実現には「あれ? 過去は水に流したの?」と思ってしまった(笑)。

8月16日、テキサス州ウッドランズ公演の前座はデリンジャー・エスケープ・プラン。実はツアー開始直前になって当初予定されていたデス・グリップスが突如解散を発表したため急遽の抜擢となったが、彼らはサウンドガーデンの「Jesus Christ Pose」をカバーしているし(iTunesでリリースされたEP『Plagiarism』に収録)、トレントのお気に入りとして度々NINのライブに飛び入りするなど、両バンドとのコネもあるバンドだ。

デリンジャーの熱演の後、先に登場したのはサウンドガーデン。後方のスクリーンに『Badmotorfinger』のジャケをアレンジしたロゴが映し出され、「Searching With My Good Eye Closed」で幕を開ける。キム・セイルのラウドなギター・リフと、クリスのしゃがれボーカルは冒頭から絶好調で、2010年の再結成以降は精力的にライブを行なっているだけあってプレイ自体にサビつきは全く感じさせない。2012年の復活アルバム『King Animal』からはシングル「A Thousand Days Before」を披露したのみで、残る12曲は全て解散前のアルバムからというセレクト。特にクリスがギターを片手に「みんな知ってると思うけど、今年は『Superunknown』の20周年なんだ。ちょっと昔に戻ろうか」と、同作から「The Day I Tried To Live」「My Wave」を続けてプレイしたシーンは、一際大きな歓声が上がった。キムとベースのベンは年相応のルックスだが(ドラマーのマット・キャメロンはパール・ジャムで多忙のため本ツアーには不参加。代打はパール・ジャムにも短期間在籍したマット・チェンバレン)、クリスだけは驚くくらい若さを保っていて、ラストの「Beyond The Wheel」では着ていたシャツを脱ぐサービスも。その整った細マッチョ・ボディに、女性ファンが黄色い歓声を飛ばした。

サウンドガーデンの終了後、あらかたセット・チェンジが終わったかなと思いつつステージを眺めていると、客電がついたままの状態でトレントがすたすたとステージに出て来て、突然「Copy Of A」の演奏を始めたので、トイレやビール調達で席を離れていた観客の多かった会場は騒然。そのままステージ袖から徐々にメンバーが登場し、間奏のラウドになる瞬間で客電が一斉に消え、ステージ上のスクリーンに4人のシルエットが濃く浮かんだ時には一気にその世界観に引き込まれた。この日のセットは2013年のフジロック出演時と同じものだったが、筆者が2013年11月のニューオーリンズで観た時はスクリーンはなく、上から可動式のライトが各メンバーの頭上に下がっていた。しかもバンドはトレントを含め6人+途中から黒人の女性コーラス2人が加わる合計8人編成という大所帯だったので、視覚的にもサウンド的にも印象がまるで違う。確かに最新作『Hesitation Marks』はロック・アルバムと呼ぶにはミニマルすぎるアルバムだったが、ライブでもここまで大胆にサウンドをそぎ落とすとは。ドラマーのアイラン・ルービンなんか5曲目の「March Of The Pigs」までドラム・セットに座らず、ギターにベースにシンセにと大忙しだが、この4人編成のNINを、もうロック・バンドと呼ぶのはちょっと違うような気がした。

本編の最後を大合唱の「Head Like A Hole」、アンコール・ラストを昔からの人気曲「Hurt」で締めくくったものの、NINのライブは「最先端にして現在進行形」というイメージを強烈に与える。一方、パフォーマンス自体は抜群の安定感でも過去のヒット曲頼りだったサウンドガーデンには、どうしても「昔の名前で出ています」感が拭えなかった。現在のNINのショウは、曲によっての立ち位置やアクションが予め決められた、計算の上に成り立つショウだ。衝動に任せてステージ上の機材を片っ端からなぎ倒していたかつてのトレントだったら、こんなライブはあり得なかったんじゃないか。そんな予想も覆し、過去の自分自身に囚われることなく、柔軟に進化し続ける。それこそがトレント・レズナーの強さだと思う。

◆クロスビート・チャンネル
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