【対談】横山健×MINORxU監督、「横山健だからできるんじゃなくて、やるから横山健なんだ」

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■“自分が自分が”っていうより、“もうちょっと周りに分け与えられたらな
■僕を慕ってくれる子に教えてあげられたらな”っていうのが出てきた──横山健

──MINORxUさんがずっとカメラを回してて、鮮烈に憶えているシーンはどこになります?

MINORxU:もちろん、冒頭のシーンは印象に残ってるんですけど……いちばんは<NO NUKES>のときのライディーンですかね(笑)。

横山:ライディーンロボね(笑)。

MINORxU:あんまり喋ってないですけど、熱がホントに凄かったので。

横山:凄かったよね、あれ。ホントは別の人がやるはずだったけど“恥ずかしくてとてもできない”ってなっちゃって。それをなんとなく羨ましそうに見てた僕がロボに模したダンボールをかぶって、実際にYMOのステージに出て行ったわけですよ。で、みんな「凄いな」って言うんですけど、「横山健だからできるんじゃなくて、やるから横山健なんだ」っていうね(笑)。

MINORxU:そのとき、その言葉が生まれて、僕はこの言葉こそ、横山さんを表す縮図だと思ってるんです。ただ面白い感じにも見て取れるんですけど、こっちとしてはそういうつもりで撮ったりもしてて。だって、ダンボールでYMOのステージに出て行くって、本来無しじゃないですか(笑)。

横山:しかも、胸にライディーンって書いてある(笑)。

MINORxU:嬉々としてやってるように見えますけど、観客の視線を冷静に感じている横山さんもいて、“らしいな”と感じたんです。あれだけみんなを盛り上げて、面白い感じになっているのに冷静な部分を忘れないっていう。

横山:だって、メチャメチャ怖かったんだもん、お客さんの視線が(笑)。僕の視界は紙コップの範囲しかないから、狭いんですよ。それで、お客さんをパッと見たら誰も盛り上がってなくて。人間ね、そういう怖いところを見ると、ちょっと体を避けるんです。そこから、後ろを向いて自分の視線をYMOのメンバーに向けたら、細野晴臣さんがメッチャ怖い視線で僕を見てて(笑)。

MINORxU:いや、実際はそんなことなかったんですよ(笑)。たまたまそのタイミングではそうだったかもしれないですけど、細野さんも凄く笑ってたんで。

──健さんが登場することは細野さんもわかってたんですよね? 登場前の映像では坂本龍一さんと高橋幸宏さんと健さんの3ショットしかなかったですけど。

横山:いや、細野さんは知らなくて、“なんだコレ!? ”って思ったはず(笑)。

MINORxU:しかも、衣装がダンボールでしたからね(笑)。

横山:そうそう(笑)。

MINORxU:こうやって話してるとあのシーンがピークみたいですけど。ただ、自分の印象には残ってる場面ですし、名言ですね。

横山:わかりやすく言うと、名前のある人がやるんじゃなくて、やって許してもらうんだっていうことです(笑)。

MINORxU:余談みたくなっちゃいますけど、横山さんと接してて思ったことがあって。世の中的にカッコ悪いことってあるじゃないですか。普通は“カッコ悪いからやらない”って選択する。でも、横山さんの場合、“カッコ悪いけど、衝動としてやりたい”となったとき、“それをどうカッコ良くするか、どう成立させるか”っていう風に考えると思うんですよ。みんなはカッコ悪いっていう基準だけで決めちゃうけど、自分の衝動がそれを上回ったときにどう昇華すべきか、それを客観的に考えて行う人なんだなって。それは撮り続けてて感じたことで、その部分がライディーンのところに出てる気がしたし。どうしても使いたかったんですよね。

横山:そう言われて、“なるほどな”って思うこともあるけど、根がそうだから、あんまり意識しないでやってることが多いですね。何だろう……冷静な自分もいれば、無邪気な自分もいる。その両方を活かすには、っていうことなのかな。あと、ちょっと思ったのが、僕は子供もいて、撮影を始めたときは40歳だったけど今は45のおじさんで、社会的にはそれこそ日本を支えていかないといけない世代。それもあるのか、“自分が自分が”っていうより、“もうちょっと周りに分け与えられたらな。僕を慕ってくれる子に教えてあげられたらな”っていうのが出てきたんです。そういうことは、言葉を変えれば、自己プロデュースとか客観的っていうことになるのかもしれない。自分の欲求もあるけど、ある程度は人の欲求にも応えてあげたいっていう。

MINORxU:あと、横山さんから影響を受けたというか、考えさせられたのは、セルフプロデュースがもし失敗したとしても、自分でちゃんとリカバリーする意志を持って諦めないことだったりもして。

横山:自分でそういう話をすると、根性があるっていうひと言になっちゃうけどね(笑)。失敗したとしても“このまま終われるか”って思ってるところはあるし、失敗から学ぶことも多いから、それは糧にしないと。

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