【インタビュー】長澤知之、企画盤シリーズ第三弾完成「自分にとって何が美しいか」

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長澤知之が11月25日、企画盤『長澤知之 III』をリリースする。これはデビュー前に発表した企画盤『長澤知之』のシリーズ第三弾となるもので、2011年にライブ会場限定販売した『長澤知之II』に続く最新作の完成だ。同作は長澤知之の“部屋”をステージ上に表現し、一日の時系列に沿って進行する自主企画ライブ<IN MY ROOM>ともリンクしたコンセプトを併せ持つ。彼の部屋に遊びに来た感覚、部屋で歌っている日常をこっそり聴いている臨場感が味わえるアルバムにはデビュー前の初期作品も収録し、この企画盤シリーズでしか表現できないサウンドに溢れている。

◆「只今散歩道」ミュージックビデオ

特筆すべきはレコーディング方法にもある。まるで目の前で長澤知之が歌っている臨場感を再現したようなバイノーラルレコーディングによる3曲は、ヘッドホンを使用することでライブ<IN MY ROOM>の主旨をそのまま真空パックしたような音空間を築き上げた。また、サウンド面でこれまでと異なるアプローチを採用した一方で、参加ミュージシャンにはキタダマキ(B)、タナカジュン(Dr)、村山潤(Key)といった気心知れたミュージシャンを起用。結果、アコースティック・ギターを基調とした柔らかな音作りも相まって、距離の近さや温かな空気感がアルバムを包み込んでいるようだ。『長澤知之 III』全曲についてじっくり訊いたインタビューは、彼ならではの音楽観や人間性が滲み出るものとなった。

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■<IN MY ROOM>は五感で楽しめる“空間で遊ぼう”という主旨
■一緒の空間にいるような企画アルバムを出せたらと思ったのがきっかけ

──最新作『長澤知之Ⅲ』は収録曲によっては、これまで長くライブでやってきた曲なども収録されていますね。どういった基準で選んでいったんですか?

長澤:そもそもの始まりは、自主企画で<IN MY ROOM>という、自分の部屋に遊びに来てもらう感覚のライブを行なっていて。そのライブは聴覚はもちろん、匂いであったり視覚的なものだったりと五感で楽しめる“空間で遊ぼう”という主旨のものなんです。このライブのように、一緒の空間にいるような企画のアルバムを出せたらと思ったのがきっかけで。今回はただ単に整ったミックスの音楽を入れるんじゃなくて、曲によってはバイノーラルレコーディングという方法を採ったんです。

──いろんな録音方法があると思うんですが、このバイノーラルレコーディングというのは、自分で録音方法を探るなかで行きあたったものですか?

長澤:3Dで体感できるかのような録音の仕方だっていうことで教えてもらったんですけど、実際にどんな感じで録れるのか聴いてみないとわからないから、体感できる状況を整えてもらって。いろんな実験をしてみたところ、これは使えそうだと。最初は全部バイノーラルでやろうかと思ったんですけど、それではくどいので。何曲か、ということになりました。

──レコーディング風景の写真も資料でいただいているんですが、このダミーヘッドという人間頭部模型にマイクがセットされているわけですね? 写真を見ると長澤さんはヘッドホンをしていますよね。まさにこのダミーヘッドで録っている音がそのまま聞こえてるわけですね?

長澤:そうなんです。人間の形をした聴感上のマイクになっているので、どんなふうに声や音が聞こえているのかがリアルタイムでわかるんです。向かい合って録っているので、自分の左耳から聞こえる音があっちでいう右耳なんですよね。だから、目の前を歩かれると、後ろに人が通っているみたいで、思わず振り返ってしまったりして。面白かったですね。

──しかもこのダミーヘッドが結構リアルなマネキンぽくできているというか、怖い感じで。さらに、この目は長澤さんの手書きということなんですけど(笑)。

長澤:もうちょっと愛嬌がつくかなと思ったんですけどね(笑)。

──ダミー・ヘッドでのレコーディングと、通常のレコーディングでは気持ちの入り方の違いもあるんでしょうか?

長澤:気持ちは変わらないんですけど、最初のうちは聴いている音が自分が出していると思っている音とあまりにも違うので、声の出し方に戸惑うことはありましたね。こんなにあけすけに自分の声が聞こえるというのは、普段なかなかないので。もう少し声の出し方を控えようかなと考えたり、このくらいの距離でこのくらいの音量で歌った方がいいなとか試行錯誤しながら決めていくんですよ。だから、自分で、その場でミックスしているような感じ。結果、作業はすごく早かったですね。

──写真を見ると長澤さん自身が椅子に座って弾いたり、地べたに座って弾いたりもしていて。それがそのまま音の定位として録音されるということだと思うのですが、手法はかなりアナログというか。

長澤:そうそう(笑)。ほんとにアナログです。

──今回3曲でバイノーラルレコーディングを採用したそうですが、それぞれ録ったシチュエーションも異なっていますね。例えば、「いつものとこで待ってるわ」ではライブハウスで聴いているかのような環境だったり、「宛のない手紙たち」では部屋に招かれて聴いているかのような環境だったり、また「犬の瞳」ではこの録音方法ならではの音響感や音の立体感が楽しめるものだったりという。

長澤:そうですね。

──どの曲でどう聴いてもらうかということを、考えての選曲と録音だったんですか?

長澤:結構場当たり的だったんです。単純に、ここで歌いたいと思った時に歌ったというか。ひとつは<IN MY ROOM>の空間をパッケージしたくてライブで歌ったものと、もうひとつは本当に俺の部屋で歌ったもの。もうひとつはバイノーラルレコーディングそのものの良さを出そうと思ったもの。「犬の瞳」では、コーラスが聖歌隊みたいになったら面白いなっていうことで、ダミーヘッドを円で囲むようにいろんな方向から歌って。後ろからも聞こえるようにしたりとか。遊んでみようっていう感じだったんですよね。

◆インタビュー(2)へ
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