中島卓偉の新作『煉瓦の家』、℃-uteやアンジュルムへの提供曲も

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昨今では、音楽監督を務めるアップフロントグループの音楽フェス<ミュージックフェスタ>が好評につき第3回開催が決定したり、事務所の後輩グループ・アンジュルムに提供した「大器晩成」、℃-uteに提供した「次の角を曲がれ」がそれぞれウィークリー2位、3位を獲得と、“自らがステージ上でスポットライトを浴びるだけではない音楽活動”も精力的に展開し、着実に結果を残している中島卓偉。そんな、今、まさしく脂が乗っている36歳、中島卓偉の最新アルバムが『煉瓦の家』だ。いきなり余談から入ると、確かに卓偉のミュージシャンとしての活動には脂が乗りきっているが、当の本人は体重49.5kgで体脂肪率5.9%(3月21日段階)と、まったく脂は乗っていない。

◆中島卓偉<WELCOME TO MY BRICK HOUSE(not yet! 2015)>渋谷CLUB QUATTRO 画像

制作期間11ヶ月、中島卓偉が今まで一番時間をかけて作ったという全15曲が収録された本作は、かつてビートルズが発表した『RUBBER SOUL』(1965年)と『REVOLVER』(1966年)の2枚のアルバムが、連続する関係性を構築していたように、前作『BEAT&LOOSE』の続編を想定して制作された。「いつか『RUBBER SOUL』と『REVOLVER』のような2枚でワンセットのアルバムを、フルアルバムで出したい」というのは、卓偉自身が昔から抱いていた憧れであり、すでに『BEAT&LOOSE』制作時から本作とのセットを目論んでいたという。

その言葉どおり、『煉瓦の家』には『BEAT&LOOSE』から連続する作品が収められている。その最たるものが「御城寺梨紗 ~all good idols go to heaven?~」。前作『BEAT&LOOSE』に収録され不審な交通事故死を歌った「サイトウダイスケ~all good adults go to heaven?~」と対になるこの曲では、車に同乗していた御城寺梨紗の過去と、事件の新事実が明らかになる。こうなってくると、次回作では運転手・砂田の曲に期待したいところだが、多分それはないだろう。なぜなら、(知っている人も多いかと思うが)作品に出てくる運転手・砂田のモデルは、中島卓偉のマネージャー・砂田 氏だからである。はたして、中島卓偉はマネージャーの曲を書くのか。……書いてくれるかな、いや、どうだろう(笑)。


また前作『BEAT&LOOSE』には、23歳まで住んでいた街を歌った「高円寺」や幼少の日々を綴った「3号線」と、卓偉の過去の記憶を切り取った作品が収録されていた。本作でそれに該当するのは「PUNKY SIXTEEN BOY」。中学卒業後にひとり上京して初めて住んだ豊洲での出来事を詰め込んだ歌詞は、そこから描かれる情景は、2011年リリースのシングル「ユラリユララ」収録曲「テルミー東京」にもリンクしていく。

冒頭に触れた「大器晩成」と、℃-uteに提供した「次の角を曲がれ」もトピックスだろう。いずれも中島卓偉ver.ではバンド・サウンド寄りのアレンジとなっており、歌詞が持つ熱量がストレートにリスナーにぶつけられる。世間的にはリリースタイミングの違いでセルフカバーのように見られがちだが、本作は2014年11月タイミングですでに完成しており、むしろオリジナルこそが卓偉ver。それを頭においた上で両グループの“カバー”を聴くと、アレンジの広がりやそれにともなう世界観の拡張といった楽しみ方をすることもできる。


中島卓偉は、このアルバムを「今までのどのアルバムよりもブリティッシュ色に溢れたアルバム」とも語っている。それは彼の作品の根底にあり、彼が敬愛するビートルズをほのかに漂わせるフレーズやアレンジ、ということだけでなく、全体的に脈打つ陰のあるロックビートや、ドラムなど各パートの音色そのものからもこだわりを感じ取ることができるだろう(ちなみにアルバムに先行したシングル収録の計4曲は、アルバムバージョンに再ミックスされている)。

さらにクレジットを見てわかるように、前作に引き続き、本作でも卓偉はドラム以外の楽器を全部ひとりで演奏、14曲目に収録されている「東京タワー」は初めてドラムもレコーディング。もうそれは、言ってしまえばポール・マッカートニーか中島卓偉か、といったところである(もちろん桑田佳祐や山下達郎、事務所の先輩・森高千里など、ひとりですべての楽器をこなす才能を持ったアーティストは数多くいるが、ここは文脈上、そういうことにしておきたい)。

そして大切なことは、中島卓偉のロックというのは、10代の子供たちを相手にしたものではなく、もっと大人の、言い換えれば中島卓偉の等身大のロックである、ということ。好きだ嫌いだストレートな言葉をロックビートに乗せたわかりやすい楽曲が並んでいるわけではない。10代の多感な時期をくぐり抜けて、社会に飛び出して大海の荒波に揉まれ、やっと人生を上手く泳いでいく方法が見えてきた世代だからこそ共感できる喜びや悲しみ、苦悩。そんなものが詰まっているのが、この『煉瓦の家』を含めた中島卓偉のロックである。

だからこそ、彼の音楽は10代の子供たちの耳にこそ届けなければならない。今は意味がよくわからなくてもいい。「なんとなくカッコいい音楽だな」くらいでいい。でもそんな子供たちも、大人になる過程で「ああ、この歌はこういうことを歌っていたのか。」と、気づく日がくる。そんな素敵な音楽体験を与えてくれるのが、中島卓偉の音楽の魅力でもある。

中島卓偉の音楽を子供たちへ。それは、過去に同じ体験をしてきた我々、音楽を愛する大人たちの使命なのである。


「デビュー16年目、16年積み上げてきた信念を煉瓦に例え、それがようやく家と呼べるくらいまで積み上がってきた気がしてこのアルバムタイトルとなりました。 P.S ですが都内一軒家、それはほど遠く、夢のまた夢なのであります……。」── 中島卓偉

text by ytsuji a.k.a.編集部(つ)

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