【インタビュー】ember、Ken BandのMinami「ロックという音楽をやりたくて」

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■Ken Bandとはちょっとギターの音を変えてます
■ただ、弾く人が一緒だからどうしても似ちゃう(笑)

──歌の旋律がメロディアスなのはもちろん、ギターソロもメロディアスですね。歌えるフレーズというか。そういった面も意識されているところですか?

Minami:さっきの80年代ロックの話じゃないですけど、Journeyのニール・ショーンとか、まさにそうじゃないですか。メロディアスで印象に残るギターソロを必ず弾く。ああいうテクニックを見せびらかすソロじゃないものが好きなんですよね。今、ギターソロを入れているバンドって少ないですよね、特にこういうバンドでは。emberは、よく古臭いと言われるんですよ、今どきこんなことやってるのかって。逆にそれが褒め言葉なのかなって受け取るようにしてるという。もともとそれを目指してやってるわけだから。

──それに、先ほど“アメリカ感”という話がありましたけど、ギターサウンドは乾いていて抜けの良さが際立っているところは、まさにアメリカ感ならではですよ。

Minami:それは意識していますね。今回のレコーディングではテレキャスターをバッキングに使ったりとか。みんながよく使っているレスポールを敢えて今回は使わないとか。それでも音圧はありますよね。たとえば、……また古い話になっちゃいますけど(笑)。

──古い話、大好きです。

Minami:ジミー・ペイジもテレキャスを使ってましたよね。レスポールのイメージが強いと思うんですけど、レコーディングではテレキャスを使っていたこともあるんですよ。今、フェンダー系のギターっていえば、クリーンのアルペジオでちょっと変わったフレーズを弾くっていう世界観が日本にはあるかもしれないけど、元々はロックな骨太なギターじゃないですか。

──そうですね。で、カラッとしたギターサウンドという意味ではKen Bandとの共通項はありつつ、テレキャスを使うことでemberとKen Bandの差別化を図っているという?

Minami:そうですそうです。ちょっと変えてます。ただね、弾く人が一緒だからかもしれないですけど、どうしても音の方向性は似ちゃうんですよ(笑)。

──たとえば90年代のパンクやメロディック、Green Dayのようなバンドが持っていた西海岸の香りと、ちょっとしたユルさみたいなものも音の空気に入っていますね。90年代のバンドたち、あの時代の良さはMinamiさんとしてはどういうものだと思っていますか。

Minami:音楽が進化していくのは当たり前じゃないですか。もしかしたら80年代にパンクロックをやっていた人たちにとっては、90年代のパンクロックはパンクじゃないっていうのもあると思うんです。それと同じように、今の時代のみんながいわゆるパンクと言ってるバンドって、90年代の人たちからしたらこんなのパンクじゃないっていうものかもしれない。で、僕にとっては90年代のパンクロックが、いちばんちゃんとパンクのアティテュードを残しつつ、音楽的にすごく進歩していったものだと思うんです。

──確かに上手いバンドが多いですよね。

Minami:たぶん80年代のパンクロックって、楽器のテクニックはそこそこでも成立していた部分があったと思うんですけど。90年代のパンクロックは、そこからもう一歩、音楽的に成熟したといいますか。ちょうど、やってる人は僕と同じくらいの年齢の人だったりするんですよ。となると、なんだかんだとメタルとか聴いているんですよね。

──そうですね。

Minami:ギターの刻みだったり、ドラムの速さだったり、METALLICAとかあの辺を絶対聴いていて。パンクも好きだけどメタルも好きなんだよみたいな人たちがやってる世界観やサウンドのアプローチに共感できたっていうか。

──音楽としてパンクが持ってるレンジをうまく広げたところがありますね、こういうものもOKなんだという。

Minami:そうですね。かといって、ぎりぎりメインストリームまではいかない感じもあって。ちゃんとDIY的なところでやっているところが。

──そういうところはご自身でも曲作りの面で影響がありますか。

Minami:よく90年代メロディックっぽいねと言われることはあるんですけど、正直、そこは意識していないんです。絶対に2ビートは入れないっていうのが、ひとつ自分の決め事としてはあって。いわゆるみんなが言うようなメロコアにはしたくなかったから。Green Dayはパンクですけど、そのパンクの枠からひとつ外れた感じもあるじゃないですか。あの感じがいいなって。あとはRamonesとかのロックンロール感みたいなものもあったり。

──Ramonesも好きだったんですか。

Minami:好きですね。ロックンロールも好きだから。今、ロックンロールというと、革ジャンにリーゼントみたいな“ロッケンロール”を指す感じになっちゃってる気がするんですけど。そうじゃないロックンロールが、存在するというんですかね。音楽って、大きく括ればロックンロールじゃないですか。それこそ僕が聴いていた昔のハードロックもそうですし、THE ROLLING STONESもロックンロール。今の時代に言うロックは、ロックンロールという言葉を略した意味でのロックじゃなくて、また変わってきている気がするんです。バンド形式でやっていればロック、みたいな。

──なるほど。

Minami:僕なんかおじさんだから、ロックという言葉のなかに、ロックンロールを感じられないバンドもたくさんいて。それが悪いとは思わないんですよ。みんな、聴いてきた音楽は違いますから。でもなんかそのロックンロールの部分がなくなってきていることに対して、寂しさもあって。emberは、僕のなかではロックンロールバンドなんですよ。それは革ジャンにリーゼントじゃない、ロックンロールで。

──初期衝動的なものであったり、エネルギーの塊であるような。

Minami:それでキャッチーでポップなメロディがあって、難しくなくても必ずギター・ソロがあってみたいな、自分のなかでの「ロックンロールってこうだよね」っていうもの。歌詞もラブソングがあったりね。そういうのがあってもいいんじゃないかなって。最近どうしても、ロックというとメッセージ性だったりが重視されていると思うんですけど。それはそれでいいんです、僕もそういう曲が大好きですし。でも、そうじゃなくてもいいんじゃないかなって。The Beatlesなんて、昔の曲の歌詞はラブソングばかりじゃないですか。

──そうやって、より身の丈でできるものがemberになっている。自分自身でも、いつもの温度感でいられるバンドでもありますか。

Minami:そうですね、ものすごく普通ですね。

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