【インタビュー】Fuki Commune、メタリック&テクニカルな音楽性を核にアニソンを歌うFukiのソロ・プロジェクト

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■「未来」は3拍子が4拍子に変わってダークで展開はドラマチック
■手塚治虫さんの『火の鳥』をモチーフにした歌詞を書きました


――『Welcome!』にはいろいろな曲が入っていますが、個人的には壮大な世界観の「未来」は今作のハイライトという印象を受けました。

Fuki:「未来」は、歌詞の面でも、歌の面でも難しい曲だなと思いながら仕上げていきました。今回の他のどの曲ともタイプが被っていないし、自分の今までの経歴の中にもこういう曲はなくて。難易度が高過ぎるので、後回しにしていたんですよ。3拍子から始まって、途中から4拍子に変わるという、結構ダークで、展開はドラマチックという曲なので、どんな歌詞を付けたら良いんだろうというところで、すごく悩んで。いろいろ考えた結果、手塚治虫さんの『火の鳥 未来編』をモチーフにした歌詞を書きました。

――なるほど。神の視点かなと思いましたが、『火の鳥』なんですね。

Fuki:曲自体が壮大な雰囲気を持っていたので、壮大なテーマが合うと思って。『火の鳥』は、この宇宙が何度も何度も生まれ変わっていく中で、火の鳥も何度となく再生を繰り返して、それを見守っているという話なんです。壮大な世界だけど、そういうものがこの曲のテーマには合うだろうと。そう思って書き始めたんですけど、身近なことではないものを歌詞で描くことの難しさを実感しました。


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――苦労した甲斐のある仕上がりになっています。それに、歌唱面も含めて、こういう世界を表現できるところに入ってきたことを感じました。

Fuki:たしかに、(今より経験が少なかった)2015年だったら無理だったと思います。歌い方の引き出しも様々な経験をして増えているので。でも、もしかしたら1年後の自分がこのトラックを聴いたら、まだまだ青いなと思う可能性はありますね。

――これからのさらなる進化も楽しみです。歌詞の話が出ましたので、歌詞の話もしましょう。今回、作詞の面でこだわったのは、どういうことでしたか?

Fuki:今回のアルバムは有り難い事に数多くタイアップを務めさせていただく事になったので、マンガや小説をモチーフにして歌詞を書くという私の得意な手法は使わないことにしました。と言いつつ、「未来」だけは我慢できなかったんですけど(笑)。他のMAO君が書いた曲は、全部モチーフを持たずに書きました。

――手法は違えど、独自のファンタジックな風合いは今回も継承されています。

Fuki:歌詞は個性を出すということを意識して書いているので、そう言っていただけると嬉しいです(笑)。

――根がロマンチストなんでしょうね。

Fuki:いえ、それは曲がロマンチックだからです。私自体は結構リアリストだと思います、たぶん(笑)。

――ええっ、本当に? だって、“愛の世界へ2人で漕ぎ出そう”という「Sail on my love」とか、すごくロマンチックじゃないですか。

Fuki:この曲は、顔を真っ赤にしながら歌詞を書いたんです(笑)。自分ではこういう曲は本当に照れ臭いなと思いながら書くんですけど、この曲の主人公は間違いなくロマンチスト。そこは、私とイコールではないんですよね。自分の中の一面をデフォルメして、こういうキャラクターがこの曲を歌っているという想定のもとに歌詞を書いて歌っています。

――ということは、ファンタジックな味わいも自身の好みというよりは、楽曲の雰囲気を踏まえているのでしょうか?

Fuki:そうです。この曲には、こういう世界観が合うだろうなということを吟味して書く。だから、自分の中では歌手であると同時に、作詞家でもあるというような感覚がありますね。作詞家の自分と、歌う自分は別というか。私は、自分の日常で起こったことを題材にした歌詞を書いて、等身大で歌うタイプではないんです。そもそも私は自分が歌っているファンタジックな楽曲に合うような経験をしていないので(笑)。ファンタジックな楽曲だったり、「未来」みたいなドラマチックな楽曲に、自分自身の恋愛を重ねて…みたいなことをしても説得力のあるものにはならない。それで、今みたいな歌詞の書き方を良しとしています。

――面白いです。それに、ストーリーやシチュエーションを細かく説明していないのに様々な情景が浮かんでくることも特徴になっています。

Fuki:たしかに、聴いている人の想像力に委ねる部分はあるかもしれない。説明し過ぎると歌詞である必要がないというか、細かく伝えたいなら小説や漫画にすれば良いと思ってしまうんですよ。

――歌詞を書くということのスキルも先天的に備えていることを感じます。話を『Welcome!』の楽曲に戻しますが、和テイストを活かした「狂い咲け雪月華」は、アルバムの良いフックになっていますね。

Fuki:この曲は『乱れ雪月華』という忍者モノのPCゲームの曲なんです。ゲームの内容を考慮して、「あまりカッコ良く歌い過ぎると合わないですよね?」とか「もうちょっとかわいいほうが良いですか?」など、スタッフの方と結構話し合いながら歌いました。そういう意味では、わりと試行錯誤した歌ではありましたね。

――意識してイメージ通りの歌に持っていけるのもさすがです。実際、それぞれの曲に合わせて幅広い表情を見せるボーカルは今作の最大の聴きどころといえます。

Fuki:ありがとうございます。いつもそうですけど、それぞれの曲に一番フィットする声質や歌の温度感、表情といったことはしっかり考えるようにしているんです。今回もたとえば「青い季節に」とかは明るい声で歌っていて、「Liberator」はカッコ良さ押しで、ちゃんと声量も使う歌を歌ったりという風に、いろいろやっています。

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