【インタビュー】anderlust、「いつかの自分」にこめた2つの意味と、カバーにこめた“自らの色”

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シンガーソングライター越野アンナとベーシスト西塚真吾の2人で今年3月末にメジャーデビューしたanderlust(アンダーラスト)が、晩夏の8月24日に2ndシングル「いつかの自分」をリリースした。

TVアニメ『バッテリー』との3曲一挙タイアップ、そして今回もプロデュース参加している小林武史がメンバーをつとめているYEN TOWN BANDから「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」カバーを大胆なアレンジで収録するなど、話題性に事欠かない本作。インタビューではオリジナル曲とカバー曲の両面から2人が“anderlustの色”を追求する、アーティストとしての飽くなき姿に光を当てた。

◆anderlust 画像

■過去と未来の自分がお互いを高め合いながら、慰め合いながら、いつかまた出会う(越野)
■“ド直球”というか。ストレートで、良い意味で分かりやすい曲(西塚)


──8月24日に2ndシングル「いつかの自分」がリリースされます。

越野:今回の制作は、『バッテリー』というアニメのオープニング・テーマという話を頂いてから始まりました。私は個人的に原作を読んでいたので、すごく嬉しかったです。『バッテリー』は登場人物の精神的な葛藤とかが生々しく描かれているので、それを汲み取ってダークな感じの曲を最初に書き下ろしたんですね。そうしたら、アニメの制作サイドから、もうちょっと明るくて、青春らしさを出している曲が好ましいですという応えが来まして。それを踏まえて作ったのが、「いつかの自分」です。


▲「いつかの自分」期間限定生産盤ジャケット

──とはいえ、「いつかの自分」はスポーツアニメという言葉から連想するハジケた曲ではなくて。翳りを帯びていて、どこかノスタルジックな味わいもあるというanderlustらしさに溢れた曲ですよね。スポーツアニメのオープニングがこういう曲なのは、すごく良いなと思いました。

越野:ありがとうございます。私はちょっと変わった青春時代を過ごしていたというのもあって、“青春らしさ”といっても型どおりのものにはならないんです(笑)。私は極度の飽き性なので、部活は最長で2年という感じでコロコロ変えていたし、水泳はずっとやっていたけど、すごく熱意を持ってやっていたわけでもなくて。つまり、『バッテリー』みたいに、ずっと野球に没頭する熱意みたいなものは自分の中には当時なかったのかもしれません。なので、そういう路線とは違うアプローチを採ることにして、「いつかの自分」は青春時代の何かに向かっている過程を描きました。

西塚:(越野)アンナちゃんが最初に書いた暗い曲もそうですけど、野球を題材にしたアニメのオープニング・テーマというオファーで「いつかの自分」みたいな曲を作るというのはanderlustらしいなと僕も思います。あとは、1stシングル「帰り道」はフックが効いていて、Aメロとかがすごく印象的だったのに対して、「いつかの自分」は“ド直球”というか。デモを聴いた時に、ストレートで、良い意味で分かりやすい曲だなと思いました。

越野:私の中では、洋楽寄りになっちゃったかなという気持ちもあって。元々この曲は、小林武史さんが持っていたデモがベースになっていて、私がAメロとBメロを作り変えて、大サビを付けたんですね。それで、Aメロ/Bメロは、洋楽っぽ過ぎたかなという気がするんです。実は、この曲のAメロ、Bメロ、大サビは30分くらいでできたんですよ。なので、自分の中にある指向性が自然と出たんでしょうね。もう少し邦楽に寄せてくださいという声があれば寄せたけど、そういうこともなかったし。そんな風にサラッと形になって、「いつかの自分」は作曲はすごくスムーズにいきました。

──“作曲は”ということは、なにか苦労されたのでしょうか?

越野:作詞です。実は、この曲を作った当時、私は曲作りの面ですごいスランプだったんです。自分1人で1から曲を作ることはできなくなっていて、誰かから貰った種を膨らませることしかできなくて。そういう状態になったのは、初めてだったんですよね。今までは1日に曲のアイディアが3つくらい“ポンポンポン!”と出てきていたのに、それが一切できなくなって。そのことに対する焦りとか不安があったし、歌詞も全く書けなくなってしまって。でも、それが「いつかの自分」の歌詞に繋がったんです。2番のサビの「なに一つ上手くいかないなんて 長いことは 続かないからね」という言葉から始まったんですけど、それが出てきてからは1時間も掛からず“ブワッ!”と書けました。その言葉が出てきた場面も鮮明に覚えていて、駅の改札を通る直前に浮かんできたんです(笑)。

──その瞬間に、インスピレーションが降ってきたんですね(笑)。

越野:そう(笑)。その時は駅の改札を通り過ぎるサラリーマンだったり、学生さんだったりが、みんななぜか斜め下を向いていて。その光景を見た瞬間、2番のサビの言葉が浮かんできたんです。

──アーティストは、なぜこんな時に…という状況で曲や歌詞のアイディアが浮かんでくることが多いみたいですね。

越野:そうなんですよ(笑)。私も試験中とか、睡眠中に曲の種が出てきたことがあって。試験中は、本当に困りました(笑)。試験よりも種のほうに気持ちがいってしまって、そのテストはたしか赤点でした(笑)。

──それは、しかたないと思います(笑)。「いつかの自分」は前向きな歌詞ですが、上目線だったり、暑苦しかったりするパターンとは違って、爽やかな雰囲気になっていることが印象的です。

越野:私は、熱い人ではないと思うんですよ。友達の相談に乗る時とかも結構冷静に話を聞いて、冷静に意見を言うという感じなので。「いつかの自分」の歌詞も“みんなで明るい未来を目指そう!”みたいなノリではなくて、パーソナルながんばろうという想いを語っていて。爽やかに感じてもらえるとしたら、それが良い方向に出たんじゃないかなと思いますね。それに、「いつかの自分」の歌詞には、私の哲学も入っています。“いつかの自分”という言葉には2つの意味があって、目標に向かっていく過程で成長し続けていく未来の自分と、原点にいて闘志を燃やしている過去の自分の両方を現しているんです。そういう過去と未来の自分がお互いを高め合いながら、慰め合いながら、いつかまた出会うんじゃないかという風に私は思っていて。その考え方に、私自身もずっと助けられているんです。今の自分というのは原点と未来の間にいて、当時の自分はこういう風に思っていたなと思い返したり、それを踏まえて改めて未来の自分を思い描いたりするので。「いつかの自分」の歌詞には、そういう部分も織り込みました。

◆インタビュー(2)へ
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