【インタビュー】doriko、9年間の集大成的ベスト盤完成「初音ミクはボーカルです」

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dorikoが初音ミクの誕生日である8月31日、“doriko feat.初音ミク”名義のベストアルバム『doriko BEST 2008-2016』をリリースする。2007年、“ボーカロイド”初音ミクを使用したオリジナル曲をニコ動に初投稿したdorikoは、以降その黎明期から現在までボカロPとしての人気を不動のものにしている。さらに、ELISAやVALSHEへの楽曲提供など、音楽制作はボーカロイドの枠にとどまらない。

◆『doriko BEST 2008-2016』試聴動画

『doriko BEST 2008-2016』には300万再生を達成した2008年1月WEB公開の「歌に形はないけれど」をはじめ、500万再生を突破した「ロミオとシンデレラ」「bouquet」などの人気ナンバーを収録した。往年の名曲から最新のヒットソングまで、その全てを詰め込んだ全30曲はオールタイム・ベストと呼べるもの。全収録曲の動画累計総再生数は実に1,432万回におよぶとのことだ。また、ボーナストラックとして、小林幸子カバーによるスペシャルトラック「ロミオとシンデレラ」を収録するなど話題性も充分。初音ミク、ボカロ、ニコ動、小林幸子について、『doriko BEST 2008-2016』を軸に訊いたロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■ボカロPたちが動画をアップすることって
■ミュージシャンがシングルを切る感覚に近い

──今回、2枚組全30曲というボリューム満点のベストアルバムが発売されますが、まず、この30曲はどのようにセレクトしていったのか、教えてください。

doriko:Disc1は、すべてニコニコ動画にアップロードしている楽曲なんです。1曲目の「私とジュリエット」が、もっとも最近にアップした動画で、そこからどんどんと過去に遡っていくという流れです。僕ら、いわゆる“ボカロP”たちにとって、動画をアップすることって、他のミュージシャンがシングルを切る感覚に近いのかなと思っているので、ベストアルバムということであれば、考えるまでもなく、それらはすべて収録しようと。動画と、このベストアルバムではバージョンが違う曲もいくつかあるんですけど、Dics1は基本的にそうした楽曲で構成しています。反対にDisc2は、動画としてアップしていない曲がメインとなっています。これまでリリースしたアルバムや、ミニアルバムの中から、人気のある曲だったり、自分で「これはベストに入れたいな」と思った曲をまとめました。

──2014年に『Nostalgia』、2015年に『origin』、そして今年5月に『finale』というコンセプトミニアルバム三部作をリリースしていますが、今回のベストアルバムにも、何かコンセプトを掲げたのですか?

doriko:ポジティブな意味で、今回はあえてコンセプトは持たせず、シンプルに、これまでの作品をまとめたベストアルバムとしました。動画の曲はすべて入っていますし、ここ最近出した3枚のミニ・アルバムの楽曲も入っているので、動画で僕の曲を気にいってくれた方はもちろん、ミニアルバムという形だとちょっと手が出しづらかったという方にも、まだ聴いたことのない曲を、ここで聴いてもらえたらという気持ちも込めた、本当に“まとめ”としてのベストアルバムです。

──選曲をするにあたって、過去の作品を改めて聴き直したと思いますが、初期の作品を今聴いて、どのように感じましたか?

doriko:30曲もありますから、かなり古い曲も聴き直しましたが、僕にとってはそれは結構……苦痛でした(笑)。もちろん、昔の曲がよくないとか、そういう意味ではなくて、僕は本当に“ド素人代表”のような状態から曲を作り始めたので、どうしてもテクニック面などで「今だったらこうするのに」って思ってしまうんですね。

──メロディうんぬんではなく、たとえば打ち込みのテクニックであったり、音作りの面で?

doriko:そうですね。今と昔とでは、そこに差があることは否めません。そういう意味で、昔の自分の曲を聴くと、ちょっと胸が苦しくなるってことはあります。だから、実際に初期の曲は、これまでも少しずつ手を加えてきた曲もあるんですよ。コンセプトミニアルバム三部作より以前の曲は、そういう気持ちが多少なりともありますね。

▲『doriko BEST 2008-2016』初回限定盤

■「今日はお客さんが5人来てくれた」とか言っていたのに
■いきなり1万人とかに聴いていただける状況になって

──打ち込みなどの音楽制作のノウハウやテクニックは、独学なのですか?

doriko:完全に独学です。音楽自体は、中学・高校時代に友達とバンドをやっていました。いわゆる、学園祭バンドみたいな趣味レベルで、僕はドラムをやっていたんです。そのうち、バンドで「曲を作ろうぜ」みたいな話になった時に、iMacとヤマハのXG音源の1台だけで、本当に気楽に作り始めて。時代的には、ちょうど、ハードディスクMTRが出てきた頃でしたね。

──バンド経験があるからこそ、いわゆる打ち込みオンリーの楽曲ではなく、バンド・サウンドの作品が多いんですね。一方で、ピアノも習っていたそうですね。

doriko:幼稚園の頃から小学生まで習っていましたが、中学時代はやってませんでした。ただ、バンドで曲を作る時に、鍵盤が弾けた方がいいかなと思って、もう1回、習うようにしたんです。そうは言っても、クラシック・ピアノを真剣に練習すると言う感じではなくて、小学校時代に慣れ親しんだピアノの先生の所に遊びにいく感じに近かったですね。そこで、「この伴奏にメロディを付けてみましょう」というのがあったんですね。6~7人のクラスで、本当はメロディだけを作ればよかったのに、僕は勘違いして、一人だけ伴奏まで作っちゃったんです。「うわぁ、恥ずかしい」と思ったんですけど、あとで先生が「すごくよかった」って褒めてくれて。今にして思えば、あれが作曲をして「楽しいな」と思った、最初の出来事かもしれません。

──そうした曲作りの経験と、バンド活動の流れで、“初音ミク(ヤマハが開発した音声合成システム「VOCALOID」に対応した、クリプトン・フューチャー・メディア社によるボーカル音源)”と出会ったのですか?

doriko:いえ、それはまた別の話で。高校生の頃は、本当にバンドが楽しくて、地元のライブハウスに出たり、ガッツリと音楽をやっていたんです。ところが大学に入って、高校時代の仲間と別々になったりして、すっかり音楽をやめてしまったんですね。ただ、学生時代の後半になると、ちょっと暇になって。その頃に、最初の“初音ミク・ブーム”が来たんです。それが2007年でした。

──そこで初音ミク、つまりボーカロイド(以下、ボカロ)と出会って、また曲を作ってみようと思うようになったんですね。

doriko:そうです。音楽から遠ざかっていた2年ほどの間に、初音ミクの登場はもちろん、いろんなテクノロジーの進化があって、「どうやら最近は、パソコンだけで楽器音が出せるらしいぞ」ということを知って。ただ僕はまだ、先ほど話したような音源1台しか持っていなかったので、初音ミクをWindowsマシンで打ち込んで、音源のアウトプットをパソコンのインプットに入力して録音したりといった、本当に趣味レベルで曲を作って、初めてインターネットでニコ動にアップしたわけです。そうしたら、自分が思っていた以上に反響が大きくてビックリしたんです。

──具体的には、どんな感じだったのですか?

doriko:それまで、ライブハウスで「今日はお客さんが5人来てくれた」とか言っていたのに、いきなり1万人とかに聴いていただける状況になって。そうなると、「もっときちんと作らないとダメだな」と思って、機材を買い足していきました。

──最初は、趣味での曲作りからのスタートだったんですね。

doriko:そうなんです。「みんなが楽しんでくれればいいな」っていう、大学生の暇つぶしみたいな感じで(笑)。でも、最初に曲を作って友達に聴かせた時、「なくねぇ?」とかってボロカス言われて(苦笑)、内心、そうしたことが悔しくて始めた部分もあるんですけど、それが動画をアップした途端、予想以上の反響をもらったことで、そこから、「もっといい曲を作ろう」と思うようになりました。それでもまだ、半分“ネタ”的な感じて、楽しくやっていましたね。

──クスっと笑ってもらえたら「ヨシ!」みたいな(笑)。

doriko:そうです。完全に遊びとしか思えない曲をアップしていて(笑)。それで最後の最後、2008年の頭くらいに、「十分楽しかった。みんなありがとう。もうやめよう」っていうことで、最後くらいはまともなバラードで終わりにしようと思って作ったのが、Disc1の最後に入っている「歌に形はないけれど」なんです。そうしたら、遊びで作った曲以上に反響が大きくて、「えっ? そうなの!?」みたいな感じで(笑)、じゃあもう1曲、あと1曲……と続けていたら9年経った、そんな感覚です。

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