【インタビュー】ANCIENT MYTH、アルバムを引っ提げて、欧州でのデビュー公演へ!

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■ついに実現したヨーロッパ圏でのデビュー
■現時点での集大成と言える超強力作品が完成


――海外メディアの話が出ましたが、今回のアルバム『Aberration』はドイツのファストボール・ミュージックと契約しての第一弾作品になりますね。

Michal:はい。最初は過去の作品をヨーロッパでディストリビューションしませんかという話をいただいたんですよ。そこからどんどん突っ込んでいって、新しい作品を販売して欲しいとレーベル側と話し合い、その中で新作について練り込んでいったんです。

――でも、先方はなぜANCIENT MYTHの作品をヨーロッパで販売しようと考えたのでしょう? 彼らは日本に限らず、世界中のバンドと仕事をしていますよね。

Michal:いろいろ話をしていくうちに、何となく感じたのが、ファストボールって、もう一つ、ゴシックのレーベルを持っていて、当初はそこから出すつもりだったみたいなんですね。そこでようやく気付きがあったというか……私が女性だからなのか、もともとファッションの勉強をしていたからなのかわからないですけど、どちらにも力を入れたいんですよ。どんなに音楽がわからない人でも、ステージをパッと見た瞬間に「カッコいい!」って思ってもらえたら勝ちじゃないですか。

――自分たちの作っている音楽の世界観を、より具体的に表現するものとして、ヴィジュアル・イメージも確立させたいと。

Michal:そう。この音楽性で、出演する日に着てきたTシャツ姿でステージに上がっていたら、逆におかしいと思うんですよ(笑)。最初はゴシックのほうで出そうと思っていたというところから察するに、おそらく私たちのヴィジュアル的要素と世界観、楽曲とのマッチングに魅力を見出してくれたんじゃないかなと思います。それから、布袋寅泰さんのインタビュー記事で、「あちらでは、やっぱり東洋っぽさを求められます」という話をされていたんですけど、すごく納得がいきましたね。私たちの音楽も、結局、メロディは日本の歌謡曲に通じるものがあるとは思うんです。そこも声がかかった一因なんじゃないかな。


――新作を出すに当たり、先方から内容についてのリクエストもあったんですか?

Michal:それが逆に何もなくて、やりたいようにやっていいよということだったんです。ただ、言語について、ANCIENT MYTHは基本的に日本語で歌ってきましたけど、ヨーロッパでのリリースに当たって、英語と日本語のどっちで歌えばいいですかって相談したら、「両方やれば」って言われたんですよ。確かに、今は日本語だから聴いてもらえないとか、英語じゃなきゃダメとか、そういう時代ではありませんが、両方あれば、より幅広い層に訴えかけることができるだろうなとは思いましたね。もちろん、ヴォーカリストとしては、2枚分の歌入れをしなければならないので、膨大な量にはなるんですけど。レーベルからは、日本語と英語それぞれで歌った2枚組のアルバムにしなさいと言われたんですよ。でも、私たちがいきなり2枚組の作品をヨーロッパでリリースして売れるかと言えば、そんな格ではない。だから、まずは日本語版と英語版の両方を作って、それぞれを『Aberration:“Au”』『Aberration:“Ag”』というデジタル版にして、CD版の『Aberration:“Pt”』は、両方の言語を落とし込む形にしたんです。

――日本語であるか、英語であるかというのはポイントの一つにあるとして、どんなアルバムを作りたいと考えていたんですか?

Michal:今までもインターネットを通じて、海外の方にも知ってもらうことはできたんです。でも、今作でやっと正式にヨーロッパでデビューする話になったタイミングで、ちょうど『Astrolabe In Your Heart』が廃盤になったんですね。あのアルバムを再販することはまずないけど、いい曲がたくさんあるし、今のメンバーで過去の楽曲をリレコーディングした、超強力版を作ってリリースしたいなと思ったんですよ。

――ANCIENT MYTHの音楽を初めて知る人を想定した、ベスト・オブ・ベストのようなものを作ろうということですね。仕上がってみて、どのような感触でしょう?

Michal:達成感はホントに大きいですね。たいていは、完成してみると、「やっぱりここは……」って直したいところがすぐに出てくると思うんですけど、改めて聴いても、まだそれが出てこない。ホントに全力でやり切ったので……だから、勝って兜の緒を締めよじゃないですけど、そういう感じはするんです。実際にみなさんに驚きと感動を与えられると思います。

■楽曲のストーリーに符合したサウンドを確立
■世界的フェスティヴァルへの出演も決定!


――リレコーディング・ヴァージョンが中心ですから、過去にもそれらの曲を聴いてきたはずなんですが、ANCIENT MYTHは、こんなにも楽曲のヴァリエーションがあったのだなとも思いましたね。「Raven Neamhain Sight」「Skoal!」という新曲の存在も、そう感じさせる要素かもしれませんが。

Michal:今までやっていなかったことにも、いろいろチャレンジしてますからね。なおかつ、シンフォニック・メタルとはいっても、ヴァリエーションはあるんだよってことは伝えたかったので、曲ごとにアレンジのオーダー表みたいなものも作ったんですよ。これはすごくホーリーな感じのオルガンとか、飛空艇で飛んでるイメージとか、抽象的ですけど(笑)、キャラ分け、色分けをしたんですね。シンフォニック・メタル・バンドとはいえ、ただストリングスとかが入っていればいいわけではないですし、それぞれのシーンに合った鳴り物が存在しなきゃいけない。だから、他の曲と並べてみたときに、同系統になってしまいそうなものは、あまり置きたくなかったんです。ANCIENT MYTHというバンド名の通りに、それぞれの曲にストーリーがある。そのストーリーとオーケストラ、楽器の弾き方、アレンジの仕方に、特徴があるほうが絶対にいい。前のヴァージョンも知っている人たちが聴いたときに、大してイメージが変わらないなと感じてしまうのも嫌ですし。そういう臨み方もあって、ヴァリエーションが豊かなところが際立ったのかもしれないですね。

――大切にしている歌詞の世界観、モチーフはどんなものでしょう?

Michal:私はあえてハッピーなものは書かないんです。世の中にいろんな表現、いろんな芸術がありますけど、必ずしも喜びの歌が人を幸せにするとは思っていないからなんです。悲しいときは悲しい曲や苦しい曲を聴いて、一緒に発散するほうがいいですし、だから、暗闇の中に光を見出すとか、自分自身と闘おうという歌詞になったりして……まぁ、私には普通の心温まるラブソングとかは絶対に書けないというのもあるんですけど(笑)。それから、ずっと賛美歌、聖歌の世界で育ったので、文語体のような、堅苦しい言葉を遣う面はありますね。もちろん、ストーリーの中で、登場人物がわりと若い女性だったりすると、口語っぽくなる部分はあるんですけどね。

――ヨーロッパ市場に向けて考えられたアルバムではありますが、現時点でのすべてが詰まった内容であることを考えれば、日本国内のリスナーにとっても、ANCIENT MYTHを知るうえで、まず聴くべき作品でしょうね。さて、すでに話題になっているように、今年10月にはベルギーで行われる『Metal Female Voices Fest』への出演も決定しました。世界的に知られる、歴史あるフェスティヴァルですが、国内も含めて、今後の活動が気になってきますね。

Michal:もちろん、ワールドワイドに活動したい思いは常にありつつ、理想と現実がだんだん近寄ってきたようなところはありますね。もともと『Metal Female Voices Fest』には出たかったんですよ。ヨーロッパと日本では、女性ヴォーカルの見え方がまったく違うなぁとも思っていましたし、今のままの自分を活かせる場所なんじゃないかなって。でも、今年だけでいっぱい運を使っちゃったかもしれない(笑)。国内では、11月にイタリアのDGMとELVENKINGのジャパン・ツアーに同行することになっています。実はメンバー・チェンジがあって、すでに新たな体制で動き始めてはいるんですが、ANCIENT MYTHのライヴの在り方としては、特殊な演出効果を用いなくても、楽曲で表現しているような、静と動の起伏あるパフォーマンスをしたいと思っているんです。それを視覚的にも感じてもらえるステージを見せていきたいですね。

取材・文●土屋京輔



リリース情報

■アルバム『Aberration:“Pt”』
2016年6月29日発売
FB16C2056 ¥2,500
1. Awaken (instrumental)
2. Eyes shine like Raspberyl
3. Mortal Heaven
4. Afterglow
5. Aerial Memories: true
6. 寂静の月、不可思議の雪
7. Against the fate
8. In Vitro (instrumental)
9. Canis
10. Shade in the dusk (Japanese ver.)
11. LINK (Japanese ver.)
12. Raven Neamhain Sight
13. Skoal! (Japanese ver.)
※日本語版『Aberration:“Au”』および英語版『Aberration:“Ag”』は配信のみで全世界リリース。

ライブ・イベント情報

■ライヴ日程
<Unplugged~アコースティックの夕べ~>
9/14(水) 東京・吉祥寺クレッシェンド
<Trinity Noir>
9/24(日) 東京・恵比寿club aim
<Metal Female Voices Fest XIII>
10/22(土) ベルギー・ウィーズOktoberhallen
http://www.metalfemalevoicesfest.be/
<DGM & ELVENKING JAPAN TOUR 2016>
11/3(木) 大阪・心斎橋SOMA
11/4(金) 愛知・名古屋RAD HALL
11/6(日) 東京・新宿MARZ


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