この数週間である程度まとまった数のデモが仕上がったので、今日はかねてより計画していた『ビートルズのオフィシャル音源を全曲聴く日』にした。

◆フルカワユタカ in “LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS”@<JOIN ALIVE 2016> 画像

決して僕はよくいる『ビートルズにゲットバックしとけばザッツオーライ』なミュージシャンではない。むしろ洋楽思春期に「ビートルズ? 最悪だ。そんなもん聴くくらいならサバスを聴け」と宣うメタリカのジェイムズ・ヘットフィールド公が、まるで宿敵(一方的にだが)である文化祭実行委員会による“なんちゃってサザンオールスターズ”を蹴散らしてくれている気がして、ある時期まで完全に『ビートルズ=ロックじゃない』を真に受けてきた側の人間である。では、なぜ今さらビートルズを聴くのか。

一般人にはあまり知られていないが、実はこの業界には『音楽で飯を食いたいなら”ある年齢までに”ビートルズを全曲聴いておかなくてはならない』という掟がある。これを守らず、ある年齢(=ジョン・レノンの享年:40歳)を超えてもビートルズの影響が音に感じられないアーティストは、謎の秘密結社の圧力によって引退を余儀なくされるのだ。どうりで40歳を超えたあたりでプロミュージシャンの数がガクっと減るわけだ。YouTubeで「metallica in my life cover」と検索してみて欲しい。権力に屈したメタルバンドの悲哀が確認出来るはず。僕も38歳、まだまだ音楽でやりたいことが沢山ある。今のうちに禊を済ましておかねば。なわけがない。


今年から使ってるApple Music。無論、僕の中にもまだまだ賛否両論あるのだが、今まで上すべってきたというか、それほど深堀りしてこなかったアーティストを気軽に聴けるようになったことは良い事だと言える。なにせ、アーティスト名を検索にかけるだけで全てのオフィシャル音源が手に入るのだから。善悪はさておき。スターウォーズやハリーポッターをどういうきっかけで見始めればいいのか分からないのと少し似ているが、今さらレジェンド達の音源を集めるモチーベーションなどそうは生まれない。だが、ストリーミングほど手軽であればモチベーションなど必要ない。先日はヴェルベットアンダーグラウンドを、別の日にはデビッド・ボウイを、そして今日はビートルズを、といった具合だ。もちろん正座しながらということではない。ギターをつま弾きながらとか、本を読みながらとか、今日の場合はコラムを書きながらだ。

発売年が表示されているので若い方から順に聴いていく。超有名曲がかかれば耳をもっていかれるものの、おおむね初期の作品達はコラム執筆中のグッドBGMだった。が、『リボルバー』や『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』にさしかかり楽曲に不穏な空気がまとわりついてきたあたりから、僕は執筆そっちのけでビートルズ関連のウィキペディアや記事を堀り始めた(実際このコラムの内要は当初のものと全く違うものになってしまった)。「これジョージは弾いてないのか」「ツアーに失望してスタジオバンドになっていったのか」「リンゴは一回脱退(非公表)してるのか」。作品より情報の消化の方が早いので『マジカル・ミステリー・ツアー』を聴き終わるころに、僕はビートルズの顛末を大体知り終えていた。

『ホワイト・アルバム』をクリックする。カラッとしたアップテンポなビーチロックなのに「バック・イン・ザ・U.S.S.R.」がなんだかとても切ない。その切なさのまま『ホワイト・アルバム』はそこから29曲もあった。多少飛ばしながらではあったがそれなりに向き合って聴き終わると、僕は役者のように大袈裟な溜息を漏らした。次は『レット・イット・ビー (ゲット・バック・セッション)』だ。わざわざ僕が解説を入れるまでもないが、この頃ビートルズは一人無双のポール対3人という構図で完全に崩壊状態だったという。それを前提で聴くと「get back=元に戻ろうぜ」と名付けた独りよがりなポールのバンド愛が痛々しい。「お前こそな」というメンバーの総ツッコミが聞こえてきそうだ。

7~8時間の大ビートルズ旅行の果てに『アビイ・ロード』にたどり着き『ジョンレノン 暗殺』をググる僕の目頭はうっすらと熱を帯びていた。なにをこのにわか野郎めが、とのお叱りもごもっとも。けれども、何もビートルズにというわけではなく、あまりに不可避な人間ドラマと、あまりに情念に満ちた作品達と。僕だって元バンドマンのはしくれ、それを感じずにはいられなかったということ。やっぱりバントっていうのは最高に最低なのだ。


最近巷で良く耳にする人工知能。ネットで得た知識で恐縮だが、あと20年もすれば日本人の約半分が人工知能やロボットに仕事を奪われる可能性があるという。『人工知能 仕事 奪われる』と検索すればそういった記事が沢山出てくるわけだが、例えばある記事には『10年後に姿を消す可能性が高い職業』として電話オペレーター、郵便配達員、レジ係、スポーツの審判、etc…と30種類以上列挙されていて、見ているだけで空恐ろしい気持ちになる。とはいえ作業の機械化は産業革命の頃から粛々と行なわれているわけで、近年そのスピードの早さに驚かされこそすれ、そもそも論で言えばこれは想像の範囲内ではある。が、記事は続く。さらにそう遠くない未来、人間の専売特許であるはずの“創造性”、例えば“芸術”の分野までもが人工知能やロボットにとって代わられるかもしれないというのだ。大衆が好む条件をデータ化し、その膨大な情報を高度なアルゴリズムでもって最適化してベストセラー小説やヒット曲を自動生成するロボット。決して現代のおとぎ話などではない、もう既に様々な企業や研究機関において開発や運用が進んでいるというのだ。

例えば『恋愛ドラマ バラード 切ない歌詞 女性ボーカル ターゲット:20代~30代女性』とプロデューサがキーワードを入力しさえすれば、人工知能がいかにもヒットしそうなオリジナル曲を作り出す。ドラマ、アニメ、CM等の楽曲制作においてもう作家に払うギャラを考える必要はない。さらには、作詞作曲はおろか演者すら自分の好きな選択が出来るようになるかもしれない。例えば『ギターはジョン・フルシアンテ、ドラムはボンゾ、ボーカルはスティング。で、フェスに似合う派手な曲』とスマホに話しかける。プロミュージシャンや音楽プロデューサーすら必要ない。国民総ミュージシャン・プロデューサー状態で、SNSに上がる楽曲の再生回数順がその時代のヒットチャートだ。

当然、歴史にアーカイブなどされない一発屋(一発曲?)のオンパレードだが、その人となりや人生が存在するわけではないので、そこは無責任に使い捨てる、で構わない。その使い捨ての一発曲を集めてイベント会社がロボットミュージシャンによる演奏会=ライブを開催する。マネージャーがボーカリストの喉の調子を気にする必要はない。それどころか1曲ずつ男声/女声使い分けたり、高速ラップの後でデスボイスを披露し、あげくには一人で何重にもハモり出す。もちろんバンド演奏もマシンよろしくで正確無比だ。やっかいなのは、たまにルーズに演奏したりもする。「マディー・ウォーターズ風で」と入力しておけば彼のレイドバックやクォーターチョーキングを見事にやってのける。まるでマシンのような正確さで。メンバー達はどれだけ長く一緒にいても決して喧嘩しない、だから解散もしない、飛行機事故や精神疾患の男に襲われて突然不遇な死をとげたりもしない、そもそも歳をとらない、ゲス不倫もしない、カレーが辛いからと言って怒って帰ったりしない。……なんてこった、そんなの最低に最低じゃないか。

音楽家には下手を見下す上手も、賢人を笑う自由な馬鹿もいなければならない。成功から転落し抜け出そうと暗闇をもがくやつも、長い年月をかけやっとのことで万来の喝采に見つけてもらうやつもいなければならない。つくり手がそうでないのなら、僕らはどうして音楽に心揺さぶられようか大衆の都合に最適な音楽を合理的に作る。つくり手の意思や人生などなんのその。まさにディストピアだ。さすがにそんなことは起こりっこないだって? 例えばボカロや初音ミクなんてのは既にそういうことの序章ではないのかい。オートチューンも演奏の補正も疑似音源もそういうことではないのかい。ホログラムのマイケルジャクソン? とてもじゃないが本人がそれを望んでいたとは思えないな。

いやいや、おかしくないか? その理屈でいくと人生が見える楽曲にしか、言い換えればウィキペディアみたいなものが無ければ僕は感動出来ないということになる。逆に、仮想のバイオグラフィーやキャラクターをつければヴァーチャルミュージシャンにだって感動し得るってことにもなる。そもそも映画や漫画にだって感動するじゃないか。僕が愛するあのキャラクターは実在しない。要は言い訳だ。僕はイイモノのふりして対峙せねばならない“変化”から目をそらしているだけだ。

てなことを考えてたら、結論が出なさすぎて頭が「わぁー!!!!!!」ってなった。ビートルズで胸熱になった挙げ句の屈折した未来技術批判。これって、もしかして典型的な老害ジジイってやつかしら(笑)。

山口で育ち、上京してバンドを組み、インディーズで頭角をあらわし、メジャーでそこそこ活躍したけど、解散し、死ぬには早すぎるだろと一人になって早5年、人助けでギターを弾いたりもするようになったフルカワユタカで、今”ある”ものをつくっている。制作環境が悪いだの、どうせ売れないだの、ロボットミュージシャン達が襲ってくるだの愚痴りながら、せっせせっせとつくっている。1曲出来るたびにやっぱり天才だと騒ぎ、スタッフに褒められても「まあ、狙えばこんなもんだよ」とうそぶき、酔っぱらってはデモ音源をエンドレスリピートしたりしてつくっている。

フルカワユタカの2ndアルバムをつくっている。

だから、多分そういうことだ。囲碁やら将棋やらに勝って調子にのってるらしいが、人工知能よ、かかってこい、音楽をつくるってのはそんなにヤワじゃないんだぜ。ってことだ。

■<MAKE A TOAST vol.6 〜TOAST 4th ANNIVERSARY LIVE&BBQ PARTY〜>

2016年10月1日(土) cafe&dining bar toast
OPEN 14:00 START 15:00
LIVE:LOW IQ 01(弾き語り)、フルカワユタカ
▼チケット
ADV.3,000yen(w/o 1D) DOOR.3,500yen(w/o 1D)
(BBQ参加の方は別途1,000yenが必要となります)
※BBQ参加は定員数が達しましたので締め切りとさせて頂きます。ライブのチケットはまだご予約頂けます。
info@toast-iga.com(公演日、お名前、電話番号、枚数をご入力の上、送信下さい)
※BBQ参加の方はメールにBBQ参加希望とご入力下さい。
※BBQへの参加はライブにご来場された方のみとさせて頂きます。
※BBQ参加には人数制限がございます。早い目のご予約をオススメします。
(問)cafe&dining bar toast 0595-51-5535

■<SHELTER 25th Anniversary〜THE REAL THINGS〜>

2016年10月2日(日) 東京・下北沢SHELTER
OPEN 18:30 / START 19:00
出演:夜の本気ダンス / フルカワユタカ
(問)下北沢SHELTER 03-3466-7430
▼チケット
発売日:2016/8/7
前売¥3000 当日¥3500
※オールスタンディング / ドリンク代別¥500 ※当日券:16:30より販売予定
ローソンチケット / e+ / SHELTER店頭

◆【連載】フルカワユタカはこう語った
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