ファンキー加藤「今までの音楽人生に影響を受けてきた10曲」/【連載】トベタ・バジュンのミュージック・コンシェルジュ

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音楽家/プロデューサーのトベタ・バジュンが毎回素敵なコンシェルジュをお迎えし、オススメの10曲のプレイリストを紹介していくこのコーナーは、コンシェルジュの「音・音楽へのこだわり」を紐解きながら、今の音楽シーンを見つめ、最新の音楽事情を探っていく連載企画である。

本企画第8回目のコンシェルジュにお迎えしたのはファンキー加藤だ。FUNKY MONKEY BABYS解散後ソロ活動に転じたファンキー加藤は、映画『サブイボマスク』に初主演し俳優デビューを飾るなど新しいチャレンジにも取り組んでいる。また11月2日にはセカンドアルバム『Decoration Tracks(通称:デコトラ)』を発表し、このアルバムを引っ提げての全国ツアー<HALFWAY STAR TOUR>も開催間近となっている。そんなファンキー加藤に「今までの音楽人生に影響を受けてきた10曲」をセレクトしてもらった。


●ファンキー加藤「今までの音楽人生に影響を受けてきた10曲」

(1)光GENJI「パラダイス銀河」
(2)長渕剛「僕のギターにはいつもHeavy Gauge」
(3)BOOWY「ホンキー・トンキー・クレイジー」
(4)セックス・ピストルズ「God Save the Queen」
(5)Run-D.M.C.「Walk This Way」
(6)RHYMESTER「B-BOYイズム」
(7)サザンオールスターズ「太陽は罪な奴」
(8)いきものがかり「コイスルオトメ」
(9)ブルーノ・マーズ「Just the way you are」
(10)桑田佳祐「Yin Yang」

   ◆   ◆   ◆

(1)光GENJI「パラダイス銀河」

僕が小学校の低学年のときだったんですけど、光GENJIが世間を巻き込んでの大ブームになっていたので、初めて音楽番組を観たりカセットテープを親にねだったりしました。自分で望んだ音楽/エンターテインメントが光GENJIだったんです。ローラースケートを履いてハチマキしてみたり。光GENJIの文房具もいっぱいあって、かーくん(諸星和己)の下敷きを持っていると、クラス中の女の子たちから人気者になれる、みたいな(笑)。「音楽って楽しいんだ」「音楽っていろんな人を幸せにするんだ」っていう体験は、僕は光GENJIだった。「パラダイス銀河」という代表曲をあげましたけど、「ガラスの十代」「STAR LIGHT」もよかったな。いつかお会いできたらなあと思います。

(2)長渕剛「僕のギターにはいつもHeavy Gauge」

僕のおふくろが好きで、よく車で長渕さんが流れていた。当時は『親子ゲーム』とか『とんぼ』とか、ドラマもやられていた。この曲は長渕さんが、昔東北ツアーをしている最中に作った歌と言われていますけど、それにも憧れましたよね。帰りの新幹線の中で曲を作る感じが格好いいなあって。

(3)BOOWY「ホンキー・トンキー・クレイジー」

未だにフットモニターに足を乗っけるくせが抜けないんです。氷室さんをあまりにコピーしすぎて。動きとかも、マイクの持ち方のマネをやっていました。手を当てて右足からリズムをとったりとか、すげーコピーをしていました。「ホンキー・トンキー・クレイジー」は、スタジオで音を鳴らしてみんなで歌っていて一番楽しかった曲なんです。間奏部分でも布袋さんと氷室さんが目を合わせて踊るように、僕達も踊ったりもしてすごく楽しかった。

(4)セックス・ピストルズ「God Save the Queen」

BOOWYのコピーバンドをやっていたベーシストが、高校1年生でにいきなりパンクになった。シド(・ビシャス)がやっていたカギのネックレスとかを付け始めてね。そいつに「パンクにハマった」「見てくれ」と、その映像を見たんですけど、セックス・ピストルズの当時のライブ映像で衝撃を受けた。アナーキーで攻撃的で破滅的な感じが、思春期と反抗期をこじらせている自分にぴったり、ドンピシャだったんです。真っ先にスタンドマイクを買いました。ジョニー・ロットンは必ずスタンドマイクでだらだら歌うので、まずはそのスタンドマイクを買って、だらだら歌うみたいなことをやりはじめました。

(5)Run-D.M.C.「Walk This Way」

Run-D.M.C.は高校2年生ぐらいのときに、音楽好きの親せきのお兄ちゃんがレコードでいろんな曲を聴かせてくれたんです。Run-D.M.C.を聴いたときに「こんなロックは聴いたことない」って思った。ヒップホップっていう認識がなかったんですね。「なんでこんなメロディも乗っていない音楽が格好いいんだろう」って。しかもサウンドはほとんどドラムとベースだけみたいな。なんかブツブツやっているノイジーな感じ。「これ何?」って聞いたら、ヒップホップという音楽だと。オールドスクールの2PACやノートリアス(The Notorious B.I.G.)とかもけっこう聴かせてもらって、中でもRun-D.M.C.がすごいハマって、それからヒップホップを少しずつ聴くようになったんです。それから日本語でもラップしているグループがいることを知りました。

(6)RHYMESTER「B-BOYイズム」

高校のとき、<さんピンCAMP>という伝説の日比谷野音で行われたヒップホップイベント、あれくらいから日本語のラップが好きになって、当時のBUDDHA BRAND、SHAKKAZOMBIE、もちろんキングギドラ、SOUL SCREAMとか、片っ端から聞いていました。中でもRHYMESTERが一番好きで、未だに大ファンです。いろんなアーティストさんとセッションをしても、やっぱり存在感で負けないっていうのがRHYMESTERさんのすごいところですよね。宇多丸さんのカタい韻とちょっと前のめりなラップに対して、Mummy-Dさんの気持ちいいフロウと、ちょっと後ろのめりなラップにハマって、カッコイイなぁと思いました。

(7)サザンオールスターズ「太陽は罪な奴」

ぼくはラッパーとして、19~20歳くらいにデビューしたんです。それからは日本語ラップにどハマりで、ずっと毎週末クラブに行っていたんですけど、夏になると、友達のB-BOYもヤンキーの先輩も、親父/おふくろ/全員が夏になると必ずみんなサザンを聴くんですよ。当時はB-BOYだったからJ-POPを聴くとバカにされるみたいなところがあったんですけど、サザンオールスターズは聴き続けていた。J-POPのすごさ、大衆音楽の素晴らしさ、老若男女問わずおじいちゃんおばあちゃん、ちっちゃい子どもまで包み込んでしまう包容力のあるサザンオールスターズはすげえなって思っていました。

(8)いきものがかり「コイスルオトメ」

ヒップホップとJ-POPを聴き続けていた加藤少年が、2006年にFUNKY MONKEY BABYSとしてデビューして、初めていきものがかりと出会ったのはデビューした直後。四国の小さなライブハウスでの対バンだったんです。200人くらいのキャパに半分くらいしかお客さんがいなくて、ちょっと寂しい感じだったんですけど、その中で「コイスルオトメ」を聴いて…もう衝撃を受けましてね、(吉岡)聖恵ちゃんのボーカルの素晴らしさと、メロディ/歌詞の美しさ。すぐに声をかけて、そしたら同じ年にデビューの同期だったということがわかって、出身地も厚木でこっちは八王子だと。3人組だったし意気投合して、そこからぼくはいきものがかりのことを良きライバルとしてみていました。今年はお互いが10周年になって「よかったねえ」みたいな。いきものがかりは基本的にはあんまり変わっていないんですよね。最初の衝撃をずっと受け続けている。毎回出す曲に「うわー、あやられた」「うわー、こっちもやられた」って。

(9)ブルーノ・マーズ「Just the way you are」

ブルーノ・マーズがブレイクする前に、ブルーノ・マーズを見つけていたんです。YouTubeで「誰これ?」「これは買おう!」って発売日にタワレコ行って買いました。その後瞬く間にスターになりましたけど、関係者さんにチケットをお願いしたのはあれが初めてでした。ステージの演出とか技術とかを見て研究しようっていう感覚じゃなく、久しぶりにイチファンとして楽しめましたねえ。もう大熱唱していましたから。ファンなのはサザンオールスターズさんとブルーノ・マーズさんだけですから(笑)。

(10)桑田佳祐「Yin Yang」

最近の「ヨシ子さん」もそうですけど、ここまで自由に音楽というもので日本中を笑わせ、楽しませてくれる方ってのは桑田さんくらいしかいない。俺が言うのもおかしいんですけど、本当に絶妙なタイミングでこれを持ってくる。1周回ってくるセンス…タイミングを逃さないんですよ。

   ◆   ◆   ◆


──11月2日に、2年2カ月ぶりとなるセカンドアルバム『Decoration Tracks』、デコトラをリリースした加藤さんですが、これ、名前もご自身が考えたんですか?

ファンキー加藤:最初にこのジャケット写真をどうしようかっていう話から立ち上がったんですよ。

──このデコトラを撮りたいみたいな?

ファンキー加藤:「いわゆるヒップホップ系アーティストは、海岸沿いをオープンカーに乗ってわーっとやるならば、ファンキー加藤はデコトラに乗って新木場からスタートだ」みたいな、そんな話になったんですよ。最初は冗談半分だったんですけど、段々その「デコトラっていうのをアイコンにしているCDジャケットなんてないよね」っていうことになって。これが後にミニカーになって、グッズ展開できたらおもしろいよね的な。

──そこまで考えているんですか?

ファンキー加藤:そうなんです。いろいろ、例えばツアートラックをデコトラにして回るとか、知り合いのラッピングバスのデコトラとか…。結局その辺のアイデアは、お金がかかるっていうことで全部ボツになったんですけど(笑)。どんどんおもしろくなってきて、そのトラック野郎ですよね、菅原文太さんの格好をオマージュさせてもらって、先にまずこのジャケットが出来上がった後に、じゃあタイトルどうしようかってなってから、この『Decoration Tracks』に。

──ジャケット写真は本物ですか?


ファンキー加藤:ほんまもんのトラックを用意させてもらいました。(デザインは)ちょっとCGとかもぶっこんでいるんですけど、中の装飾とかは、自分らでグッズを持ち込んで、飾り付けしましたね。

──2年2カ月ぶりのアルバムですから、それまでの集大成と言えますか?

ファンキー加藤:そうですね、2014年のファーストアルバム直後に出来上がった曲も入っているので、制作期間は本当に2年2カ月。楽曲制作はずっとやっていました。

──ひと言で語ると、どんなアルバムですか?

ファンキー加藤:1stアルバム『ONE』は、すごくファンキー加藤らしさを追求したんです。それは良くも悪くも。いい部分では、ファーストアルバムなんで、最初にキャラクターを知っていただく。悪い部分は、ちょっとそこに囚われすぎちゃって、らしくない楽曲を自分で線引きして、はじいていったんです。『デコトラ』は、そういうのを1回なくして自由に作りたい、歌いたい曲っていうのを作っていこうと思いました。だから前作がファンキー加藤なら、今作は加藤俊介そのものというアルバムです。ファンキー加藤というその肩書きもなくて、素の僕に近いです。

──曲作りはどのように?

ファンキー加藤:僕は作詞にかける時間のほうが長いかもしれないですね。曲はプロデューサーさんの力をお借りするというのが、ファンモン時代からの流れです。soundbreakersさんとか田中隼人さんとか。僕が詞を8割担当、メロディメイクは相方のモン吉が8割担当という役割分担があったんですけど、ソロでも自分の中での割合っていうのは変わっていない。soundbreakersさんは地元が一緒なので、仲良くさせてもらっていて。

──八王子のことを歌った歌は、けっこうあるんですか?

ファンキー加藤:あります。今回だったら「ただいま」っていう曲がふるさとに帰ってくる歌で、思い浮かぶのは八王子の駅のホームとか駅前の風景ですね。

──2度目の全国ホールツアー<HALFWAY STAR TOUR>がスタートしますが、どんなライブになりそうですか?


ファンキー加藤:今回はメジャーデビュー10周年なので、10年分の感謝の想いと、11年目から「また新しい1歩をよろしくね」っていう想いで、ファンモン楽曲から1stアルバム、2ndアルバムまでをバランス良く散りばめています。いっしょに歌って、いっしょに汗をかいて、みんなでライブを作っていけたらいいなあと思っています。

──今年は映画の初主演も経験して、役者も積極的にやっていく予定ですか?

ファンキー加藤:そうですね、映画の撮影がおもしろかったんで。

──ミュージシャンから映画の世界に進まれる方は多いですけど、いきなり初主演ってすごいですよね。

ファンキー加藤:だから、最初僕断りましたもん。「本当に荷が重いです」って。

──役者さんといっしょに演技するドキドキ感はありましたか?

ファンキー加藤:相手のセリフを聞いている時のリアクションが難しいと思いました。要は、一方的にこっちから投げかけるっていうのは、ステージ上でずっとやってきたことですけど、相手の話を聞く、しかもそれをナチュラルにうなずいたり、相槌を打ったりするっていうのがわかんなくて。表情の作り方とか、最初は難しかったですね。

──同じ表現でも、ミュージシャンと俳優は違うんですね。

ファンキー加藤:違いますね。要はフィードバックできるかなあとか、そういう部分も考えたんですけど、あんまり僕の中ではリンクはしていなかったかなあ。

──音楽のほうがやっぱり合いますか?


ファンキー加藤:もう20年くらいやっているので、音楽のほうがいいなあとは思うのですけど…。いや、でも演じるというのは、僕は春雄っていう主人公の疑似体験をできたんですよ。いろいろなことを学べたし、いろんな風景を見てこれたし。音楽家としてのフィードバックはないけど、素の自分としてはすごく豊かな日々になったなという、そういうのはありましたね。

──サントラ制作はいかがでしたか?

ファンキー加藤:ちょっと負担が大きかったんですけど、終えてみればいい思い出しか残っていないというか。

──そんな加藤さんに、今回10曲セレクトしていただきました。

ファンキー加藤:いや…難しかったですよ。

──この10曲を見て、全部加藤さんの声に聞こえてくると思いました。

ファンキー加藤:あ、本当ですか?

──加藤さんが歌ってもおかしくない10曲だなあと思ったんです。

ファンキー加藤:うれしいです、ありがとうございます。確かに実際、カラオケでよく歌っている曲でもありますけどね。

──すごく似合うと思います。光GENJI「パラダイス銀河」も加藤さんが歌うイメージができるので、カバーアルバムとかよさそうです。

ファンキー加藤:いつかやってみたいですね(笑)。

──今後も楽しみですね。


ファンキー加藤:そうですね。まず一番の目標としては歌い続けることです。できたら、赤いちゃんちゃんこを着ても、熱い応援ソングを歌い続けていられればいいな。スタイルを変えずに。

──あくまで本道はミュージシャンなんですね。

ファンキー加藤:どれだけ手を差し伸べてくれるか、今はそれが音楽なのかな。なので、今は音楽をがんばっています。

──楽しいからというよりも、求められているから頑張るということですね。

ファンキー加藤:「みんなが必要としてくれている」「みんなが待ってくれているから、作るぞ」と。ぼくの中にはアーティスティックな部分とかない。

──詞も曲も、サービス精神の塊ということか。

ファンキー加藤:そうですね。もちろん自分の想いもあるんですけど、やっぱり聞き手側の想いを寄せられる余白とか、そういう部分を凄く大事にしています。

──面白いですね。やりたいからやっているタイプのミュージシャンだと思っていました。

ファンキー加藤:そういうアーティストさんを見ると、なんか「すげえうらやましい」というか「かっけえなあ」と思っちゃうんですよね。そこまで強くなれないっていうか、周りのことを気にせず「俺はライブをやるだけだ、お前ら勝手についてこい」みたいなのは、絶対怖くてできない。ぼくは常にファンのみなさんの顔色を伺っていますね(笑)。

──ぼくは素晴らしいと思います。


インタビュー:トベタ・バジュン

ファンキー加藤『Decoration Tracks』




2016年11月2日発売
※「Decoration Tracks」収録曲
M1.MUSIC MAGIC(よみうりランド2015 ジュエルミネーション テーマソング)
M2.ブラザー(映画「サブイボマスク」主題歌)
M3.中途半端なスター(マイナビ転職CMソング)
M4.走れ 走れ(TBS「イベントGO!」11月度オープニングテーマ)
M5.つながるから(マイナビ転職CMソング)
M6.勇者のうた(2016TBS系列プロ野球中継“SAMURAI BASEBALL”テーマ曲)
M7.Ring a Bell
M8.Tokyo Destiny Land
M9.カラフル
M10.ただいま ~HOMETOWN~
M11.急性ラブコール中毒 Part.1
M12.少年の声(フジテレビ系めざましテレビ めざましデイリーテーマソング・水曜日)
M13.花鳥風月
M14.本当のこと
初回限定盤A【CD+DVD】MUCD-8078/9 6,111円(税別)
※DVD収録内容:I LIVE YOU 2016 in 横浜アリーナライブダイジェスト映像
M1.中途半端なスター
M2.MUSIC MAGIC
M3.輝け
M4.つながるから
M5.ヒーロー
M6.ブラザー
M7.太陽
M8.あとひとつ
M9.希望の唄
M10.CHANGE
M11.ちっぽけな勇気
M12.My VOICE
M13.太陽おどり~新八王子音頭~
M14.リスタート
M15.悲しみなんて笑い飛ばせ!
大容量!!!
全15曲のライブ映像を収録!!!
初回限定盤B【CD+DVD】MUCD-8080/1 4,000円(税別)
※Bonus Track<初回限定盤Bのみ収録>
M15.春雄の唄(ファンキー加藤 album Ver.)
M16.かけがえのない人(ファンキー加藤 album Ver.)
共に映画『サブイボマスク』劇中歌
※DVD収録内容:VIDEO CLIP
通常盤【CDのみ】MUCD-1362 3,000円(税別)

◆ファンキー加藤オフィシャルサイト
◆【連載】トベタ・バジュンのミュージック・コンシェルジュまとめ
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