【音踊人32】記念にすることのない最高のNOT WONKワンマンライブ(音踊人蝦夷支部長)

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北海道の苫小牧市を皆さんはご存知ですか?
札幌から南西へ50km程離れたところにある地方都市が苫小牧市だ。10年くらい前に田中将大などを擁し甲子園を連覇した駒大苫小牧高校がある街でもある。今、その地方都市にすごく熱いバンド「NOT WONK」がいる。

NOT WONKはVo/Gtの加藤を中心とし、Ba/Choフジ、Dr/Choアキムの3人組で平均年齢は21歳である。パンクやインディーロックなどを基軸にそのどれかに縛られることなく各境界を飛び越えて、NOT WONKとしての音楽を作り上げている。

そんなNOT WONKに引き付けられた一曲が「Little Magic」だ。
イントロの鳴りかた、楽しそうに駆けっている映像、歌いだしの衝撃、曲が終わるまで途絶えることのない高揚感。すべてが完璧だった。(この曲を高校生で作り上げてしまう加藤の才能が末恐ろしい。)


時を経てアルバム2枚がリリースされた。2015年に『Loughing Nerds And A Wallflower』、2016年に『This Ordinary』。

『Loughing Nerds And A Wallflower』は初期活動からの熱気が込められた勢いがあり、かつフレッシュなアルバムで、同世代と共鳴できる楽曲が多くあるように感じる。特に「Guess What I'm Thinking」はインストルメンタルでも成り立つほどに完成度が高い曲でありながら、ワンフレーズだけ歌う構成が非常にカッコいい。

2ndアルバムの『This Ordinary』はとても嗜好がこなされている。これまで以上にバラエティーに富んだ曲たちが並び、聴き飽きることがないアルバムだ。これまで同様の疾走感を持った「Everything Flows」があると思えば、ミドルチューンがカッコいい「Don't Get Me Wrong」もあり、いろいろな経験を積んだうえで作り込まれたアルバムになっていることを実感できる。

ここまでは偉そうに批評染みたことを述べさせていただいたが、下記からは10月15日にNOT WONKが地元苫小牧で行ったライブ<NOT WONK one man live “HERE FOR GOOD”>について主観満載で書いていこうと思う。

会場の苫小牧ELLCUBEに開演10分前に到着。客入りは上々でここが苫小牧であることを忘れるくらいの熱気で場内は満たされている。フロア全体に目を向ければ、Vo/Gtの加藤が仲間たちと談笑しており、その姿からここにいる誰よりも楽しむ準備ができているのがNOT WONKということが見て取れた。定刻を少し過ぎ、場内は暗転。ついにNOT WONKの苫小牧でのワンマンライブの幕が開けた。

新旧を織り交ぜたセットリストが組まれ、MCでは作曲した当時の心境を語る場面もあった。代表曲の「Little Magic」が序盤に演奏され、言うまでもなくその時点で会場のボルテージは一気に上がった。オーディエンスの揺れが大きくなり拳を突き上げる姿も見られ、それぞれがNOT WONKに呼応しているように見えた。私がアンセムの持つ力強さと即効性に感動しているうちにNOT WONKはさらにギアを入れ替え、カッコ良さの次元を上げていった。そのカッコ良さが際立ったが「Guess What I'm Thinking」だ。静かなイントロから始まり、徐々に高揚感が増してから歌われるワンフレーズには心酔した。「Laughing Nerds And A Wallflower」や「1994!」では、苫小牧で青春を共に過ごしたであろう仲間たちが共鳴していた。そのシーンはとても鮮明で、このライブのハイライトだった。


「このライブは記念のライブではありません。」と、加藤はきっぱりと言いきり、「記念のライブにしてしまうと、今後みんな苫小牧に来てくれなさそうだから。」と、笑った。そして「どんなつまらない場所にいたとしても、自分たちが楽しむ為に面白いことを考えて行動すればその場所と時間は楽しいものになる。そもそも、好きな仲間とコンビニで缶チューハイ買って外で飲んでしゃべってるだけでも最高に楽しいから。」と、言った。このMCは、北海道の地方都市に住む葛藤を抱えながら活動し、その中で得た経験から辿り着いたNOT WONKの一つの答えように感じた。ここまで文章を書いておきながら言うことではないかもしれないが、正直、私はNOT WONKを詳しく知らない。それでも、今回のワンマンライブ通じて様々な彼らを知れたと思っている。NOT WONKはとても人間味が溢れ、まっすぐな音楽をつくり、場所にこだわることなく自分たちが築く楽しい空間にほかの人たちを惹きつけることができる希少なバンドであるに違いない。

NOT WONKはこれからもこの街で音楽を作り、それを持って様々な街に遊びに行ってはその楽しかった思いを苫小牧に持ち帰りまた新たな楽曲を生み出してくれるのだろう。

◆NOT WONK オフィシャルサイト

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