【ライブレポート】大森靖子、全国ツアーファイナル「奇跡は手作りで全ては地続き」

11月18日（金）、ZEPP TOKYOにて大森靖子の全国ツアー＜TOKYO BLACK HOLE TOUR＞のファイナル公演が行われた。

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10月1日（土）秋田県湧太郎 國之譽ホールを皮切りにスタートした＜TOKYO BLACK HOLE TOUR＞。全国12カ所で弾き語りとバンド編成の2構成で行われていたこのツアー、ファイナル公演となるZEPP TOKYOには老若男女問わず、多数の観客がつめかけた。

幕が開くと同時に会場はグッズのペンライト（ピンクメトセライト）のピンク色に染められ、まずは「PINK」の披露。ギターをかき鳴らしながら叫ぶように歌う大森靖子の姿に、会場は一気に彼女が持つ凄絶かつ美しい独特の雰囲気に彩られた。この感情むき出しのステージこそが彼女の魅力。ここから、ピンク色の甘い毒に満たされた一夜が始まる。


バンドメンバーを呼び込んでの「ミッドナイト清純異性交遊」からは色鮮やかな照明に照らされ、打って変わって華やかで激しいステージが繰り広げられる。曲中にはフロアとの大きなコールアンドレスポンスも起こる。5曲目「私は面白い絶対面白いたぶん」ではさっそく観客にダイブする大森靖子。序盤から熱狂的な盛り上がりだ。

最初のMCでは感慨深げに「初めてライブをしてからZEPPに来るまで10年かかった。」と述べ、「本当に幸せです。」とファンに感謝を伝える。そして「奇跡は手作りで全ては地続きだと思っております。これからも大森靖子のストーリーを是非ご一緒に宜しくお願い致します。」とも。“奇跡は手作りで全ては地続き”は10月26日（水）にリリースされたシングル「POSITIVE STRESS」からの言葉だが、異色の女性ソロアーティストとして紆余曲折を経て、今日ここZEPPを自身の好きなピンク色に染め上げた大森だからこその言葉だと言えるだろう。

その思いをもったまま「ピンクメトセラ」から怒涛の中盤戦へ。「ピンクメトセラ」では猫に扮したダンサーの私。が登場、「劇的JOY!ビフォーアフター」では寝転んだり座り込んだりと自由なステージング。「絶対彼女」では夏の魔物から塚本舞が水着で出演、定番の振付を大森と観客とともに楽しんだ。


そんな自由で豪快なステージが進行していく中、12月発売のシングルに収録される「オリオン座」ではあらかじめ配られた歌詞カードを手にしたファンと合唱。“最高は今 最悪でも幸せでいようね”と大森の力強くも儚い歌声が心にしみわたり、ファンとのユニゾンに鳥肌が立つ。

そこから大森靖子の真骨頂ともいえる弾語りパートが始まる。「給食当番制反対」「少女漫画少年漫画」などが披露されたが、このパートではギターの旋律にかぼそく甘い歌声がのったかと思うと地声で感情のままに歌い叫ぶなど、大いに感情をゆさぶられる。そしてここまでのライブの流れを振り返ったときに、彼女の表現の多様性も感じられる。

「あまい」からは再びバンド編成に戻り、最後には「音楽を捨てよ、そして音楽へ」を歌唱。フロアもしんと静まり返る中、「音楽は魔法ではない…」と全身で訴えかけるように語りかけ、歌い上げた。アンコールでは「マジックミラー」を披露。「あなたの、あなたたちの一人一人の人生が、一人一人の人生が最高です！ありがとうございました！」とファンへの思いを述べて＜TOKYO BLACK HOLE TOUR＞を締めくくった。

大森靖子のライブはまさに激情。明るく楽しい気分になれる楽曲もあれば、時にナイフのようにするどく胸をえぐる言葉も飛び出す。そしてじんわり心が温かくなっていくような楽曲もある。清い思いも濁った思いもすべて吐き出せる、そして気づいたら彼女に毒されたことに気づかされるライブだ。彼女にしか表現できないこの世界観、一度味わっておくことをおすすめしたい。

写真◎Masayo
取材・文◎服部容子（BARKS）




◆大森靖子 オフィシャルサイト