【インタビュー】岸田教団&THE明星ロケッツ「人柄を褒められたことは今まで生きてきた中で一度もない(笑)」

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■10年経ってもまだやるべきことが残っているというのは良いことだなと思って
■10年やってきてバンドに身についたものと新鮮な感覚を活かして来年は面白いことをしたい


――カップリングの「insomnia」は、クールな味わいが魅力的なハード・チューンです。

岸田:「insomnia」を作った時は、やりたいことが最初にあって。洋楽でペンデュラムというバンドがいるんですけど、EDMに繋がる流れを作り出したバンドの一つなんですよ。どっちかというと、DJシーン寄りのロックバンド。ペンデュラムの曲を聴いて、こういうのをやりたいなと思いつつ、でもペンデュラムと同じことをしても面白くもなんともないから、じゃあペンデュラムみたいなことを岸田教団&THE明星ロケッツがやったらどうなるんだろうと思って。ペンデュラムは、すごくクールなんですよ。「insomnia」は、そういうテイストと岸田教団&THE明星ロケッツのバンドのサウンドを足した感じだから、クールさが出ているんです。ただ、そのクールさが伝わるかなと思っていたので、感じてもらえて良かったです。

――リスナーの皆さんにも必ず伝わると思います。この曲は、ichigoさんが歌詞を書かれていますね。

ichigo:歌詞は、ここ何作かは前向きなヤツとか、ワガママなヤツとか、あとは前作の「circus」は一転してちょっと怖い歌詞を書いたりしていて。今回は、怒ったり、不満だったりする歌詞を書きたいなと思ったんです。それで、わりと強い言葉をなるべく並べようかなと思っていましたね。あと、世の中は思い通りにならないことが多いなというのがあって。思い通りにならない中で、“朝が来て欲しい”と歌っている曲は多いけど、“朝が来ないで欲しいのに…”と歌っている曲はあまりないなと思って。「insomnia」は、すごくザックリいうと“寝れないな”と言っている歌なんですよ。寝れないままに朝が来て、一日が始まってしまったなという。でも、ずっと起きていればどうしても眠くなるし、それで寝れたりするじゃないですか。それで、ちょっとずつ寝れるようになって、だんだん救われていくんじゃないかなと。そういうことを、歌った歌詞です。


▲「Blood on the EDGE」<アーティスト盤>


▲「Blood on the EDGE」<通常盤>

――一見、世をはかなんだり、自己嫌悪を描いているようですが、意外と前向きというところが良いですね。

岸田:心が荒んでしまっているんじゃなくて、やる気が出ないという感じの歌詞だよね。

ichigo:そう。私の性格が出ているんだと思う(笑)。

――それに、サビの頭に毎回“嫌いさ”という言葉を配しているのもキャッチーです。

ichigo:それは、もう最初にデモを聴いた時からサビの入り口は“嫌いさ”と歌いたいと思ったんです。それに、印象を強めたくて、意図的に毎回同じ言葉にしました。ただ、この“嫌いさ”という言葉がすごく歌いにくかったんですけど(笑)。言葉的に、声を張りづらいんですよ。

岸田:“ら”で、声を張ることになるからね。歌に関して言うと、いつもならそのまま活かすけど、今回はちょっとボーカルの処理をしたいというのがあって。要は、ichigoさんの声質が日本人としては歪みにくいというか。鳴っている感じがしにくくて、ストレートに抜けてくるけど、それが良くも悪くも真っすぐ過ぎて、良い方向に出る時もあれば、マイナスに働いてしまう時もあるんですよ。この曲に関しては、その真っすぐさを何とか曲げられないかなと思って、ちょっとエフェクト処理を多用しました。声の歪みがだんだん増えたり、だんだん減ったりしているんです。それこそichigoさんの体格がもうちょっと良くなければ、多分倍音が伸びてくる感じが出るんだろうけど、この通り体格がよろしいので(笑)。

ichigo:ええ、ええ、そうですよ。良いですよ(笑)。

岸田:太ってるという意味じゃないよ(笑)。洋楽のボーカルは、ものすごく声を張るじゃないですか。それは、そこまで行かないと鳴らないからだろうなと思っていて。ichigoさんは、それと近い感じがあるんです。アヴリル・ラヴィーンほどゴツくはないけど、ああいうイメージかな。あとは、パラモアのヘイリー・ウィリアムスとか。あの人達のレコーディングされている声というのは、実際の声とは結構違っているはずなんですよ。あんな感じになるはずがないから。それで、いろいろ調べていくと、やっぱりどうも歪みを使っているんですよね。で、ichigoさんの声をより日本ナイズするためには、彼女達よりももっと歪みを強くする必要がある。邦楽アーティストの声は、倍音が多くて、歪みが強いことが多いから。それを考えると、エフェクト処理も含めてちょっとオリジナルなやり方が必要だなと思って、「insomnia」で前から実験したかったことをやってみました。

――歪みを掛けていることを感じさせないことからは、かなり細かい作業をしたことが分かります。

ichigo:すごく細かいよね。

岸田:うん。Aメロの頭は少し歪ませて、Aメロの2周目から下げて、Bメロはクリアにいって、サビに入ってからだんだん上げていって、途中でリバーブを切り替えて、歪みをカットするという形になっている。だから、よく聴くと声の歪みが変わっていることが分かると思います。それを、全部僕がリアルタイムでフェーダーを調整しながらミックスしました。

ichigo:私としては、この曲はもうちょっと落とした声で歌いたかったんです。ただ、私の声質の問題で、もっと張らないと他の楽器の存在感に負けてしまうというか、埋もれてしまうというのがあって。歌詞やメロディーに合わせて落として歌うと、声が暗くなり過ぎちゃって、音として良くなくなってしまう。かといって、“パンッ!”と張ると生粋のパーティー・ボイスなので(笑)。歌い終わった後に、「ええっ? こいつ途方もない夜にいないよね」という話になって(笑)。私は泣きたいくらいの気持ちで“嫌いさ”と書いたのに、こいつは怒ってるだけだよねと(笑)。

岸田:そうそう(笑)。でも、俺の中では、これは意外と前向きな歌詞だからということで…と思ってるよ(笑)。

ichigo:アハハ!! 押さえて歌うと、どうしても切迫感が出なくて。それで、ここだなというところに着地させて、その後岸田が磨きを掛けてくれました。

――エフェクトを掛けたといっても補正ではなく、隠し味として使っているので違和感はありません。「insomnia」のベースについても話してもらえますか。

岸田:この曲は、意外と簡単でした。楽器隊は、みんなそうだったんじゃないかな。サラサラッと演奏して終わった…みたいな感じだったから。

ichigo:この曲は、いつも以上にみんなの音が良いよね。仮ミックスの状態でもらった時もすごくきれいに音が分離していて、それぞれの音がはっきり聴こえるし、それぞれの音も良いなと思ったんです。

岸田:この曲は、ミックスも楽だった。みんな演奏力が高くなって、トラック変なノイズとかが入ってないから。そうなると、フェーダー上げ放題だよね(笑)。

ichigo:そうなんだ。それに、私達の場合、今回みたいにタイアップのシングルを出すことになった時は、カップリングのほうがリアルだよね。表題曲はテレビ用にビシッとさせないといけない部分というのが絶対に出てきて、エンジニアの敏さん(渡辺敏広)がそういう風に仕上げるんですよ。それはそれで、メジャーらしいキラキラした音として私も楽しみにしているけど、カップリングは変わってくるんです。

岸田:カップリングは、俺がミックスをしているしね。

ichigo:そう。だからサウンドが粗くなるし、その時の自分達の実力に近いものに仕上がるんです。そこを、聴いてくれている人は、どう感じているのかなと思ったりしますね。

――両方聴くことができて、楽しいと思いますよ。

ichigo:そうだと良いなと思います。

岸田:俺の中では、戦いだよ。要は、敏さんはトップ・エンジニアの一人だから。その裏面に自分がミックスした曲を入れるというのは、普通に考えると「そりゃ、そうだよね」と言われても仕方ないけど、僕はそれは嫌なんですよ。だから、戦っている。勝てなくても良いんだけど、クオリティーがあまりにも劣るのはマズいから。そうならないように、毎回がんばっています。


――岸田さんがエンジニアとしての耳を持っていることも大きな強みといえますね。さて、「Blood on the EDGE」は岸田教団&THE明星ロケッツの新たな魅力を味わえる一作ですし、7月23日に日比谷の野外大音楽堂でライブを行なった際、ichigoさんが武道館を目指すとコメントしたこともあり、今後の活動が本当に楽しみです。

ichigo:今後の活動に向けた意気込みは、「Blood on the EDGE」のMVで私が一肌脱いだことで感じて欲しいです(笑)。

岸田:俺は何をやらされるのかと思うと、今から気が重いよ(笑)。

ichigo:アハハ!! 岸田には、もっとすごいことをしてもらわないとね(笑)。7月の野音は自分達にとって初の座席があるライブということで、公演前はどうなのかなという気持ちがあったんですよ。でも、実際にステージに立ってみたら席があることは関係なかったし、後ろのほうも遠く感じなかった。ちゃんと後ろまで伝わっていることを感じたし、お客さんの熱量がこっちにも伝わってきたので、最後のMCで私は武道館でライブがしたいと言ったんです。言おうかどうしようか迷ったうえでの言葉だったけど、お客さんも「やろう、やろう!」「行こう、行こう!」という雰囲気になってくれたんですよ。それで、本気で武道館を目指したいと思うようになりました。

岸田:俺らのCDを買ってくれてる人が全員集まれば、武道館も埋まるしね(笑)。

ichigo:いや、そうだけど(笑)。やりたいといってもすぐに実現できることではないので、これからもっとバンドを大きくしていかないといけないというのがあって。来年は次の目標に向けた足がかりの一年にしたいので、その一環としてライブをいっぱいしようと思っています。今まで行ったことのない場所とかにも行くことになると思うので、近くに行ったら、ぜひ会いに来て欲しいです。それに、岸田教団&THE明星ロケッツは、来年10周年なんだよね?

岸田:そう。薄く引き伸ばされたキャリアだから、10年経ったという感じはしないけど(笑)。逆にいうと、10年経ってもまだやるべきことが残っているというのは良いことだなと思って。10年やってきてバンドに身についたものとバンドに対する新鮮な感覚をうまく活かして、来年はまた面白いことをしたいなと思っています。

取材・文●村上孝之


リリース情報

「Blood on the EDGE」
<アーティスト盤>
CD+特典DVD (2枚組)
品番:1000629350 POS:4548967299489 価格:1,800円+税
CD収録曲:全4曲収録
1.Blood on the EDGE
(ストライク・ザ・ブラッド II OVA オープニングテーマ)
2. Insomnia
3. Blood on the EDGE (Instrumental)
4. insomnia (Instrumental)
特典DVD収録内容 : Blood on the EDGE Music Video

<通常盤>
CD (1枚組) 品番:1000629351 POS:4548967299496 価格:1,200円+税
CD収録曲:全4曲収録
1.Blood on the EDGE
(ストライク・ザ・ブラッド II OVA オープニングテーマ)
2. Insomnia
3. Blood on the EDGE (Instrumental)
4. insomnia (Instrumental)


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