L'Arc-en-CielのKenが12月10日、銀座山野楽器本店7FイベントスペースJamSpotにて<銀座山野楽器本店 Presents Ken (L'Arc-en-Ciel) Guitar Clinic>を開催した。2016年夏にはヒロト (A9)、圭 (BAROQUE)、Duran (Made in Asia)を迎え、“ストラト愛”について語り合うトークセッションイベント<Fender × PARTY ZOO>が開催されたものの、Ken単独でのギタークリニックは、2003年12月に島村楽器三宮店で行われた<第1回 KOBE GUITAR FESTIVAL>以来、実に13年ぶりとなる。テクニックやサウンドメイクに対して、詳細に丁寧に語られたクリニックは予定時間を大きく超過する充実の内容となった。その模様を一部抜粋してお届けしたい。

◆Ken [L'Arc-en-Ciel] 画像

整然とイスが並べられたイベント会場内には80名のKenファンが集結。ギターを持参した参加者をはじめ、筆記用具をヒザの上にスタンバイする参加者、オフィシャルバンドスコアを開いて予習に余念がない参加者など、いわゆるファンイベントとは異なり、ギタークリニックならではの空気感は集中力が高い。

同クリニックは、“こんな豪華なギタークリニック観たことない! 名曲「虹」を題材にトッププロの奏法、サウンドメイクの謎に迫る60分! 本人が会場の皆さんにレクチャー!”という謳い文句のもとに開催されたもの。司会を務める銀座山野楽器の島田氏曰く、「「虹」を課題曲として、Kenのギタープレイを“テクニック”、“音楽理論”、“サウンドメイク”といった3つの観点から紐解く」という主旨のもと行われる。そして、司会者によって呼び込まれたKenは「MY HEART DRAWS A DREAM」をBGMに登壇、場内が大きな拍手と女性ファンの歓声に包まれた。トークはまず、開催の経緯から。

■クリニック開催の経緯と「虹」の理由
■「理解して弾くと、より雰囲気が出る」

ファンは御存知の通り、Kenはこの秋、自身主宰イベントツアー<PARTY ZOO ~Ken Entwines Naughty stars~>で全国を廻ったことをはじめ、2016年初頭にはMUCCとAKiの対バンツアー<M.A.D>にゲスト参加したほか、MUCCやBAROQUEの音源プロデュースを手掛けるなど後進の育成に力を注いでいる。司会者曰くクリニックは、「このタイミングを逃してはいけないと思ってオファーした」とのことだ。「こういう機会はあまりないから、僕も嬉しいです。やってみたかったことのひとつなので」とKen。課題曲「虹」はKen自らがセレクトしたという。

「いろいろな音色を使ってて、いろいろなフレーズが出てくるような曲を選んだら、「虹」になったという感じですね。作っていく過程では、“ここをこう弾かないと曲にならない”っていうところがあったりするんです。でも、出来上がりだけを聴くと、そこを重要視せずに弾いちゃうみたいなこともあるかもしれない。そこを理解して弾くと、より雰囲気が出るみたいな。そういう部分が詰まっている曲かなと思います」──Ken

そして、会場のスクリーンに課題曲である「虹」のミュージックビデオが映し出される前に、Kenからの細やかな説明もあった。「CD音源では、ギターはダビングしている部分もあるから、アコギが入ってたり、レズリー通した音が入ってたり、歪みが鳴っていたり。いろいろなパートがあるので、そこを感じながら観てください。ライヴで全部は弾けないから、ここはこう弾いてるみたいな部分を、あとで説明しようと思っています」。ミュージックビデオ鑑賞後は、いよいよ「虹」を題材にしたプレイ、サウンドメイク、アレンジの解説へ。

■イントロフレーズ攻略法
■「ここで強く弾きたい」

同曲は、イントロ→サビ→Aメロ→Bメロ→サビ→ブリッジ→ギターソロ→Aメロ→Bメロ→サビという構成で展開されるもの。また、流麗なメロディラインに対して、オンコードや部分転調を用いたコード進行は一筋縄ではいかない。その作曲は、「歌メロと同時にイントロで用いているフレーズが頭に鳴って。言ってみれば、5分の曲だとしたら、2〜3分で全貌がみえたという感じだった。すごいお得」と笑いを誘ったKen。楽曲構成をなぞるように進行したクリニックは印象的なイントロフレーズの攻略法から明かされる。

1997年当時、ロンドンを訪れた際に入手したギブソンJ-50で作曲したという同曲は、「開放弦を混ぜて弾くとアコギの音色はやっぱりきれいで。このイントロはルートの動きとトップの動きでアルペジオを組んでいる」という。つまり、譜面を見ると16分音符が整然と並んでいるが、意識すべきはそこではない。“アクセントの位置は? 音を伸ばすところは?”ということに注意して弾くことが重要だ。「たとえば16分音符のアルペジオを同じ音量で整えるような練習をしても、“ここで強く弾きたい”と思ってもできない。逆に、“頭にだけアクセントをもたせよう”とか“裏にアクセントをもたせよう”とか、そういう練習をしていくとフレーズに対して“ここで強く弾きたい”とか“弱く弾きたい”ということができるようになる」とコツを語った。

■サビのサウンドメイク術
■「ストーリーがつくりやすい」

▲同ギタークリニックは、Kenをはじめ国内外ギタリストの機材を手掛けるFree The Toneの林 幸宏氏も招いて行われた。要所要素でKenによるサウンドメイク解説の協力も。

構成上、イントロに続いてサビとなる「虹」だが、同パートはクランチサウンドのアルペジオに加えて、アコギによるストローク、前述のクランチと部分的にユニゾンするオブリといった3本のギターがダビングされている。「レコーディングではクランチのアルペジオをベーシックに、アコギはそれを引き立たせる役割として、ストロークでアクセントをつけている」とのこと。ライヴ会場は残響が多いことから、「あまり多くの音を出してもひとつひとつの音色のサステインがみえなくなるので、ライヴではクランチのアルペジオ部分のみを弾いている」そうだ。結果、音を減らすことによって繊細なプレイまで浮かび上がることに加え、音源よりもダイナミクスを大きく表現することが可能となって、「エモーショナルにギターを響かせることができる」のだという。

クランチは、その強弱の要となるサウンドメイク。和音を弾いても音の粒立ちがよく、ピッキングニュアンスが表現しやすい。弦をはじくタッチが如実にサウンドとして出力されるという意味では、粗が目立つという短所にも転じるわけだが、Ken曰く「右手で強弱がコントロールできるわけだから、そっちのほうが楽しいでしょ。ヴォリュームの上げ下げとかピッキングの強弱に対して、歪み量がしっかり変わってくれるほうが、ストーリーがつくりやすい」と語って参加者を深く頷かせた。

■Aメロ〜Bメロのコード進行
■「“D”がすべてを目覚めさせる」

そして、解説はAメロ〜Bメロのコード進行へ。“Em”からスタートしたサビのコード進行は部分転調を含みながら、繰り返しなく変化し続けて“D”に帰結する。Aメロは「サビとは違うものが始まることを感じさせたいけど、トニック始まりはつまらない」という理由に加え、メジャー7thを含むAメロ頭のメロディラインに合わせて“GM7”で幕を開ける。流麗でキャッチーな旋律と、それに寄り添うコードワークはあまりにも美しく儚げ。同パートのコード進行もやはり部分転調やオンコードを活かした特徴的なものとなっているが、「どんなに難しい曲を書いても、hydeは歌うからね。だから、そこで苦労したことはなくて。たとえ自分の好きな調躍を入れても、何でも歌ってくれちゃう」と笑いを交えながら、hydeのヴォーカリストへの信頼をのぞかせた。

Aメロのプレイポイントは、1小節内のルート音を変えないことによってコード進行を落ち着かせるアルペジオ。また、メロディが変わるBメロ部分ではアコギによるアルペジオが重ねられているが、ライヴではクランチサウンドのカッティングを演奏しているとのことだ。これは「歌の隙間に合いの手のように入るギターが、メロディを引き立たせる」ことによるもの。広大なライヴ会場では、その残響音が十分に空間を埋めてストーリーを作ってくれるという。なお、同パートのラスト1小節は“D”で締めくくるが、これは前述したサビも同様で、場面切替の重要なファクターとなっている。「Bメロ最後の“D”がすべてを目覚めさせるというか、“次はサビにいくぜ”っていう記号のようなもの。だからドラムも、普通だったら2拍4拍を強調した4分音符を感じさせるところだけど、8分音符を聴かせることで“何かが始まる”ことを示すというか。ギターも2拍4拍を感じさせないフレーズで場面を派手にさせてサビにいく、という仕組みになってます」。

なお、ひとくちにクランチと言ってもサウンドメイクは、パートによって色付けが加えられている。イントロ部分は16分音符が基調となるだけに音の隙間が少ないが、Aメロ部分は音と音の間が広いことからディレイを多目に、それもクリーンであればあるほどディレイの“モジュレーション”を加えることで、音の広がり感が得られるという。Bメロも同様にディレイ(もしくはリヴァーブ)を加えているそうだ。

■ブリッジ&ソロにパワーと自由度
■「そのほうがみんなにも伝わる」

サビ後/ギターソロ前のブリッジはパワーコードの音圧感。サウンドメイク的にもボトムのしっかりした歪みエフェクターを踏みたいところ。「歪みエフェクターを2つ持っているとしたら、より歪むほうをここに入れるっていう感じにするかな。もしソロでその音色を使おうとするなら、ディレイを抜いた音色でここは弾くとかね」とのことだ。

そしてソロは、Ken曰く「アドリブだから、同じように弾いたことがない(笑)」。「虹」のレコーディングでは、オールドマーシャルもしくはマッチレスなど、歪み成分の多くないものを使用し、フィードバックさせている。「ギターってある種、音が減衰していくところも魅力で。フィードバックさせると減衰しない/フィードバックさせないと減衰する、という使い分けができるのも面白い」。そして「アドリブソロを弾く際にKenさんは何を考えていますか?」という司会者の質問に、Kenはこう答えた。

「スケールがわかっていて、どこで転調するっていうことがインプットされている前提で、“ご自由に”っていう気分でいつも弾いている」。さらには、“1弦の10、12、14フレット”と“2弦の10、12、14フレット”、“1弦の14、15、17フレット”と“2弦の14、15、17フレット”など同ソロのスケールの一部を披露しながら、「最後の“Bメジャー”の転調部分を気にしながらアドリブを弾くかな」と幾つかのアドリブをサウンドメイク解説も交えて実践するなど、その構成術を手厚く解説した。

楽曲はこの後、Aメロ〜Bメロを繰り返すカタチとなるが、Kenは「たとえば、ソロがロングトーンで終わった場合、ソロあとのAメロ部分までロングトーンが入り込むことになるから、Bメロまでギターを弾くのをやめることもある。その静かな空間に、hydeのライヴならではの歌い方が響いたら、それが自分にとっても気持ちいいし、そのほうがみんなにも伝わるんじゃないかな」と、あえてギターを抜くことで楽曲を活かす、その効用についても語ってくれた。「虹」の全ギターパートの解説が終了したところで、参加者からの質問に直接答える“Q&A”コーナーへ。次のページでは、その模様を再現したい。

◆<Ken (L'Arc-en-Ciel) Guitar Clinic>“Q&A”コーナーへ