20年超の付き合いを経て、稲葉浩志とスティーヴィー・サラスが懐を分かち合い、ひとつの作品を作り上げた。INABA / SALAS名義のアルバム『CHUBBY GROOVE』だ。

◆INABA / SALAS 画像

ファンキーでグルーヴィーなロックテイストは両者に共通するアーティスト資質だが、非常に勤勉家でストイックであるという共通の一面も、INABA / SALASが生み出すサウンドを紐解く重要なキーワードとなったようだ。大方の想像するサウンドをさらりと飛び越えて、ダンサブルでファンクテイストながら、エナジー溢れるサウンドが渦巻くサウンドがアルバムを彩っている。キャッチーでクールなグルーブは、どのようにして生まれたのか、稲葉浩志とスティーヴィー・サラスに話を訊いた。

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■いざ始めてみると
■想像つかない感じで(笑)──稲葉浩志

──おふたりの付き合いもずいぶんと長くなりましたね。

稲葉:機会あるごとにお互いのプロジェクトに顔を出したりしててね、わりと普通の友達付き合いみたいな感じですよ。

──今回、本腰を入れてアルバムを作ることになった経緯は?

稲葉:前から「時間が空いたら一緒に何かやろう」ってずっと言っていたんですけど、たまたま時間がありそうだったんで(笑)。だからほんとに、わりと気張ってないんですよ。

──自然な流れなんですね。

稲葉:ええ。

▲アルバム『CHUBBY GROOVE』

──ミュージシャン友達は世界中にたくさんいるでしょうけど、スティーヴィー・サラスと音楽が作りたかったということでしょうか。

稲葉:これだけ付き合いがあるにも関わらず、お互いの曲に参加したりゲストとして弾いてもらったりしただけで、実はがっぷり組んだことはなかったんです。自分のオリジナルのものを持ち寄ってバンドのように音楽を作るというのはやったことがなかったので、前から試したいことのひとつではありました。それが今回このタイミングでできたということです。

サラス:もちろん「お互いの音楽が好き」というのがあるけれど、それ以前に稲葉浩志は最高のシンガーだと思っているから、ぜひ一緒に仕事をしたかったんだよ。これまでもミック・ジャガーやロッド・スチュワート、テレンス・トレント・ダービー、ジャスティン・ティンバーレイクといった一流のシンガーと仕事をしてきたけど、その中でもKOSHIはトップ・シンガーだからね。ようやくタイミングが合って、お互いアイディアを持ち寄ることができた。

──どんな作品を作りたかったんでしょう。

サラス:ルールはなしで、誰っぽくもないようなサウンドにしたかった。自分らしくもなく稲葉浩志っぽくもないサウンドを「楽しみながらやりたい」と思っていたんだ。まるでバンドを始める時のようで「どういう方向に行くか、いいものになるのかどうか」もわからなかったけど、結果、素晴らしいものができたよ。

稲葉:僕は彼のスタイルを知っているので、「彼のスタイルの音楽……少しハードでファンキーなロックに、僕が歌う」という明快なものになるんだと思っていました。多分、みんなもそういうものを想像したと思うんですけど。

──私が想像したのもそれでした(笑)。

稲葉:「そういう感じかな」っておぼろげに思ってたんですけど、いざ始めてみると、想像つかない感じで(笑)。

──誰もコントロールしていないってこと?

稲葉:元の曲のアイディアは、スティーヴィーがもってくるんです。

サラス:もう25年ぐらいの仲だから、KOSHIの声もよく知っているし、どんなサウンドに合わせたら声が活きてくるかも分かるけど、それよりも、誰かが聴いた時「これ何? すごいクールでファンキーだね。誰が歌ってるの? え? 稲葉浩志?」みたいな、「アメージング!」って言われるような予想外の展開のサウンドを作りたかったんだ。あとは、踊れるサウンドでクラッシュのようなパンクロックがもっているエネルギーも入ったサウンドにしたかった。

──自分で作るソロ・アルバムとはアプローチが全然違うっていうことですか?

サラス:自分にとっては「ヴォーカリストが誰か?」がすごい重要。メロディにしても曲にしても、あるヴォーカリストに合う曲が別のヴォーカリストにも必ず合うわけではないからね。タイプや好み、その人の声を熟知することが大事なんだよ。

──稲葉浩志はどうでした?

サラス:KOSHIには制約が全然ない。何でも歌えてしまうし、ものすごい高音からすごい低い音までも出せる。だから、アイディアを伝えると「自分の想像以上のはるかに素晴らしいもの」が返ってくるんだよ。

──めっちゃ褒められてますよ(笑)。

稲葉:「何でも歌える」っていうのは誤解だと思いますけど(笑)。

サラス:でも、これだけは言える。「こんなに成功している人で、こんなにも仕事熱心な人は会ったことない」。

稲葉:あははは(笑)。

──やっぱ褒められてます。

サラス:KOSHIは、自分のラフなアイデアを何千倍にも煌めかせて戻してくれる。でも俺も、「こういうギターのアイディアがあるんだけど」ってKOSHIから言われると、それをよりいいものにして「こんなのどうだい?」って戻してきたから、ギターとヴォーカルのトレードみたいにいい関係にあったと思うよ。

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