【インタビュー】10-FEET、「ヒトリセカイ×ヒトリズム」完成「思い続けていることを切にひたすら」

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■グッと我慢して耐えている人に
■伝えたい2行なんです

──その「アンテナラスト」はリリース直後からライブでもはずせない曲となりました。いい感触や手応えを感じていますか?

KOUICHI:ライブでは客席のみんなが歌ってくれるので、それだけ届いているんやなと思いますね。反応がいいと思います。

TAKUMA:「アンテナラスト」に関してはライブの最中、僕はあまり会場の様子を見れてないんですよ。目をつぶって弾き語りを熱唱しているような感じになっているので。

──そうなんですね。

TAKUMA:“人前で歌うっていうことはこういうことでもあるのかな”と感じさせてくれる曲ですね。切にひたすら一生懸命歌って演奏するというか。それで成立しない曲や似合わない曲もたくさんあると思うんですけど、“その曲をそんな切々と歌われても”みたいな曲もあるから(笑)。「アンテナラスト」はわりとアップテンポな部分もあるのに、そうなっているのが面白い。外側にグワッと表現するよりも、内側にグワッと強く大きく深く叫ぶように歌うというか。それによってより届くんじゃないかなと思わせてくれる曲です。「ヒトリセカイ」も同じかもしれないですね。

──自分の内側をしっかり見ながら歌う曲なんですね。

TAKUMA:そうですね。

▲NAOKI (B&Vo)/<東日本大作戦番外編>2017.1.14-15@ゼビオアリーナ仙台

──「ヒトリセカイ」の歌詞について、もう少し深くお訊きしたいのですが、元となった出来事や気持ちは最近のものなんですか?

TAKUMA:ここ2、3年で思っていることですかね。

──「ヒトリセカイ」も「アンテナラスト」も、“言葉”そのものや、言葉と思いのすれ違いというのがテーマとしてありますよね。

TAKUMA:そうですね。なにかを発信する側が、事細かに説明したりせずに、あえて言葉を少なくすることによって、教えたいことや怒りだったりという感情をより深く伝えることができる。あるいは、“自分もこういうところがあるのやから、これはここまでで留めておこう”とか、本当は相手に全部言いたいけど、そこをグッと我慢することによって、相手を尊重することができるし、伝えられることがあると思うんです。家族でも恋人でも仕事場でも、いろんな場面が人ぞれぞれあると思うんですよね。ただ、そういうことを頭で考えず、心でジャッジして言えるのが親やったり、じいちゃんばあちゃんやったりしたなと。「アンテナラスト」はそういう思いを歌っているんです。「ヒトリセカイ」でいう最後のライン、“言葉のない遥か大昔 それなら今より少しは分かり合えたかな”というのは、逆に考えないというか。

──もっと本能的な感じ?

TAKUMA:究極に考えなくなった場合というのは、わめくだけというか、奇声に近いものだと思うんです。人間も動物やから、究極の感情表現で思いを伝える時って、そういうところにいくんじゃないかなと思っていて。究極に悲しい時は立ってもいられないだろうし、涙と一緒に鼻水もよだれも出るくらい悲しいやろうし。それくらいの思いで、“ありがとう”も“ごめんなさい”も“好きだ”っていう思いも、いっぱい伝え合える関係があるなら、それを親友と言ったり、義兄弟と言ったり、家族に近い存在と呼べるんじゃないかなと。そういう人が自分にも友達にも恋人にもいたらいいなという思いですかね。言葉じゃなくて、ぶん殴るとか、抱きつくとか……どちらも今やったら捕まると思いますけど(笑)。

──そうですね(笑)。

TAKUMA:本来、正直な感情表現というのは、そうなんじゃないかなって思う。けれども、それをグッと我慢して耐えている人に伝えたい2行なんです。

──深いです。

TAKUMA:でもきっと、そうは伝わらないとも思っているんです、作った時点で。歌はそういうものだなって思う。こういうことを伝えたかったんだよって思っていることが、きっちりその形で伝わらないということもずいぶん前から覚悟しているし、またそれも面白いと思ってやっていますしね。“自分のストーリーに重ねて、自分の歌にしてくれてはるんやな。そういうつもりで歌ったんじゃないけど、それってすごいことだな”って思えることもたくさんありますから。でも伝えたいことはこれであって、自分の思ってる100に近いものが何人かだけに伝われば、伝えたい自分の思いや望みは、それだけで満たされる。形を変えて解釈してもらえることも、同じぐらい作った意味があるんじゃないかなと思える瞬間があるんですね。

──そういう歌を書かせた思い、というのはなんだったんでしょう?

TAKUMA:家族や友達や仕事仲間や恋人だったり、どんなシーンでもたくさんありましたね、未だにありますし。伝えようとして選んだ言葉が正解じゃなかったり、カッとなって選んだ言葉がひどいことだったり、説明したことによって、逆にまったく伝わらなくなってしまったり、そういうことだらけ。目を見るだけで伝わればいいなと思うんですけどね、ラブソングじゃないですけど。でも、全部伝わったら、都合の悪いことも人間にはあるんやろうなと思うんですが(笑)。そういう狭間でうろうろと、喜んだり落ち込んだりしながら生きていくんだろうなって、そう思っているからですかね。あまり考えたことなかったですけど。

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