ベースヒーローといえば誰を思い浮かべるだろうか?

超有名なアーティストの名前を挙げる人もいれば、学校の先輩の名前を挙げる人もいるだろう。そして、悩む人も出てくる。「あの人もいいし……あの人もいい……」そんな風に悩んで誰かの名前を出すだろう。かくいう筆者もそうだ。何人かに絞ることはできるが、1人に絞ることは容易ではないのだ。しかし、今なら即答できる。「ベースヒーローって、誰ですか?」と言われたら、この一文字で答える。

「清」

今回オススメしたいア ーティストは『清(きよし)』である。

INSIDE ME、THE MADCAP LAUGHTS、MEGA HIGH BALL等のバンドでベースとヴォーカルを担当、映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』にも出演し、ZIGGYの森重樹一氏のソロやマーティ・フリードマンのソロ等でもそのベースを響かせる彼女。そう「彼女」である。字面だけ見ると男性のように思えるが、女性だ。かくいう私もINSIDE MEのライブを見に行った際に初めて気付いたぐらいだ。

しかし「ベースは女性なのか」程度に思っていたのだが演奏が始まった瞬間に、「あれ……? 今日のライブってMETALLICAのロバート・トゥルージロ、出演してましたっけ?」と錯覚するような、攻めの演奏を見せたのが彼女だった。長い髪を振り乱しながら、足を広げてベキンベキンとベースの音を響かせる彼女を見て「和製ロバート・トゥルージロだ……これはすごい人を見たぞ……」となっていた。



その後、彼女の活躍はどんどん広がっていき、全米でのツアーも経験するようになっていった。活躍の幅が広がる中、その知らせは届いた。

「ソロアルバム出します!」

思わず「マジかよ」と声が出た。ベーシストのソロ。どんな物ができるのか想像ができなかった。ギターは誰になるのだろうか? ヴォーカルは? ドラムは? 清氏のバンド経歴やサポートの経歴を見て、「この人とこの人は参加しそうだな……そうなるとなかなか豪華なアルバムになるんだろう」そう思った。

しかし、そんな予想はあっさりと裏切られた。清氏のアルバム『kiyoshi』に参加したミュージシャンは1人。ドラムの満園英二氏だけである。そう、彼女は2人でアルバムを作り切ったのだ。その事実を知り、最初は不安を覚えた。

ベースの音だけで表現できるのか? メロディは? 声だけ浮いたりしないか? 展開が単調になったりしないか? 湯水のごとく湧き出てくる疑問。しかし、そんな不安は試聴映像を観て吹っ飛んでいった。



ベースとドラムが中心となって作られたこのアルバムは、見事にすべてが成立していた。メロディを奏でながら低音も支えるベース、ヴォーカルに出る感情の抑揚が楽曲に華を添える。一曲一曲聴いていくごとに、ベースという楽器の幅広さを思い知る。「ベースってこんなこともできるんだ」ということを、このアルバムは教えてくれる。

1曲目の「SOLO」で幕開ける本アルバムは、全ての楽曲にベースと音楽への愛が詰まっている。過剰に装飾されず、生々しいままで届けられるこのアルバム。10曲目の「Dizzy Day」を聴き終えるころには、清という人間のドキュメンタリーを観ていたような気持ちすらわいてくる。映画館でエンドロールを見ているような気になるこの曲に見送られながら、聴いていた人は現実へと帰るのだ。その手に「充実」という土産を持たされて。

清『KIYOSHI』

2016年9月17日発売
[ 収録楽曲 ]
1. SOLO
2. Knock It Off
3. Celebrate?
4. Time Machine
5. NETA
6. The Sun
7. A Whole New World
8. Call My Name
9. JAM
10. Dizzy Day

◆清 オフィシャルサイト

記事 / 了

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