【インタビュー】10-FEET、「太陽の月」を語る「もし人生最後の作品になるなら」

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■その違和感こそが新しいチャレンジに対する
■リアリティそのものだと体感できていた

──カップリングの「月 〜sound jammer せやな〜」は同時期に作っていた曲ですよね。これもまた今までと雰囲気の違う、グルーヴのあるダンサブルな曲ですが。

TAKUMA:新しいことをやりたいなというのは、今回の制作でも思っていたので。4つ打ちでダンサブルなものというのは、他にやっている人が多かったから、ずっと避けてきていたんですけど。僕らは、それが得意やったり上手やったりはしなかったし、普通のベタッとしたビートで、こだわっておもしろい物作りをしていたんです。

──それがどうして今回4つ打ちを?

TAKUMA:4つ打ちがもはや流行でもなんでもないくらいスタンダード化したなかで、ちょっとおもしろおかしくやってみようかという、僕たちなりのそういう音楽に対する解釈というか。言葉も全部楽器にして楽しめばいいんじゃないかなと。

──言葉選びのおもしろさも特徴的です。

TAKUMA:英語と日本語ですよね。その歌詞に内容があろうとなかろうと、自分は音楽というものに感動してきたので。歌詞にこだわるところはとことんこだわって、そうじゃないところはより音楽的にというのは、これまで両方大事にしてきているんです。この曲に関しては、極力そっちに振り切ってみようかなと思いました。

──KOUICHIさんとNAOKIさんもこういうリズムというのは、トライという感覚ですか?

KOUICHI:そうですね。ここまでがっつり4つ打ちの曲はなかったので、難しかったですけど。このオケと歌詞のギャップというか、それが10-FEETっぽいなというのは思いましたね。

NAOKI:4つ打ちのグルーヴ感というか、ノリを出さなきゃなという部分はトライですよね。あとはフレーズでのダンサブル感というか、そういうところも意識しながら全体を仕上げていった感じですね。

TAKUMA:最初にサビの歌メロと歌詞がおもしろく出てきたので。“オモシロ”でやるんやったら、全部オモシロでカッコよくでええやんと。それなら、4つ打ちという、手を出さなかったところで楽しくやってもいいんじゃないかな、振り切って楽しめばいいんじゃないかな、と思いました。実際、楽しかったですけどね(笑)。

──レコーディングもだいぶ楽しめたんですね。

TAKUMA:おもしろかったですね、普段あまりやらないので。多分いちばん近いノリの曲で「ライオン」(2006年発表シングル)くらいですかね、4つ打ちは。新鮮でしたね。

KOUICHI:でも、そんなに順調ではなかった気がしますね、レコーディングは。

TAKUMA:歌や歌詞は二転三転していったからな。

──「太陽4号」と「月 〜sound jammer せやな〜」という2曲を、ほぼ同時に作っていたということですが、だいぶ対極的な曲です。

TAKUMA:全然違うものを作っていったほうが選びやすいだろうと思ってましたし。あとは、作曲するときになるべく違う曲を交互に手をつけたほうがいいんじゃないかなと。アレンジが似てしまうとよくないので。

▲NAOKI (B&Vo)/<京都大作戦2017>2017.7.7-9@京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ

──それで、より振り切ることができたという。さらにもう1曲、『thread』の頃にあったという「少し眠っていたんだ」を収録しようとなったのは?

TAKUMA:この曲は長い間、出そうよ出そうよとみんなで言っていたので。いい機会やなと思って。

──これも曲調的には新鮮で、ずっとサビのようなキャッチーな曲ですよね。曲の色味としてもトーンが明るい。

TAKUMA:そうですね、切ないですけど明るい。表打ちで、最初からずっと押し切っていくような曲を作ろうってことを言ってましたね。そういうテーマを持って作ったと思います。このテンポで表打ちで押していく曲は、これまで1曲もなかったと思うので。だからすごい違和感がありながらやっていたんですが。その違和感こそが新しいチャレンジに対するリアリティそのものだと体感できていたんですよ。だからずっと手応えがあった。そのぶん難しかったですけどね、慣れていないから。

──この曲はNAOKIさんのボーカルも効いてますね。

NAOKI:そうですね、掛け合いが。ベースとしては、他の2曲に比べると得意分野のほうではあるので。フレーズにしてもいろいろ入れやすかった感じはしますね。

KOUICHI:TAKUMAが言ったように表打ちの曲はあまりなかったので、当時はすごい違和感もあったんですけど、今聴いて見ると別に普通やなと。自然にはまっているなと思ってますね。

──このタイミングのシングルで、こうして新しいことを詰め込んだのは、バンドとしてもいろんなチャレンジをしようと向かっていたからだったのですか?

TAKUMA:全体を通して新しくというのは、いつも考えていますね。依存に近いくらいのクセで、アップテンポにいこうとする自分たちがどっかに必ず居るんですよ。それがいい時もあるのは知っているんです。ただなんていうか、いろんなところに行きたいけど、今はまだアップテンポなほうがいいんじゃないかなって毎回言っているような気がしていて。もっと冷静に、いい曲、グッとくる曲をっていう選び方や作り方がある上で、今回はアップテンポでとか、今回は跳ねたものでとか、今回はゆっくりでとか、弾き語り調でとか、スカ調でとか、選べていけたらいいなと思うんです。多分これからもアップテンポが基本になると思うんだけれども、それゆえに、そうじゃないものがないと逆にこっちが死んでいくような気もするんですよね。これはよく思うんですけど。

──ああ、なるほど。

TAKUMA:逆を言うと、バンドの傾向としてはアップテンポがいいんだけれども、自分の中で常にいいなと思うものはテンポ感に関わらずあって。同じくらいアイディアとしてもある。今回、テンポに分け隔てなくシングル作りすることができたというか。僕らが考えている時に、スタッフが「今回のシングルが、もし人生最後の作品になるならどうしますか?みたいな感覚で選んでいきましょう」と言ってくれたりしたんですよ。

──そうだったんですね。

TAKUMA:極論というのは、そんなに頻繁に使うものではないと思うんですけど、時にはおもしろいなって。これが最後だったら、何をどういう形で残すのかと考えた時に、ひとつは手紙を書いて(「太陽4号」)、もうひとつ(「月 〜saundo jammer せやな〜」)は真面目さや思いとかメッセージはなるべく度外視して、“全然関係ない話を酔っ払ってしましょう、楽しかったらそれでいいじゃないですか”っていう。そういうのも大事だなというのも、日々の生活でも感じるし、それがエネルギーに変わっていったりするわけだし。真面目な話ばかりしていても、ためになる話ばかりしていてもためにならないというかね。手紙とバカ騒ぎと、あとは一重に僕らがバンドというものを一生懸命やった時の音楽の形みたいな。今回1枚きりとして考えるんだったら、そういう3曲が入ったらいいなと思っていたので。

──スタッフの方はなぜそういうふうに言ってくれたんですかね。

TAKUMA:いろいろ決めかねていたんで。どれが1曲目になってもいい作品でもあったので、決まらんなあと思っていて。「これが最後やったらどれにします?」って言ってくれたら、結構すぐに決まったんですよ。

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