本多俊之「いま聴くべきサックスの名演10曲」/【連載】トベタ・バジュンのミュージック・コンシェルジュ

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音楽家/プロデューサーのトベタ・バジュンが毎回素敵なコンシェルジュをお迎えし、オススメの10曲のプレイリストを紹介していく【連載】トベタ・バジュンのミュージック・コンシェルジュ、18回目のコンシェルジュにお迎えしたのはサックス奏者の本多俊之だ。

報道番組『ニュースステーション』のテーマ曲「Good Evening」などこれまで人々の記憶に残る楽曲を多数制作してきた本多俊之だが、還暦を迎えてもなお精力的に活動を続けており、7月に新作『DINOSAX』を発表している。今回のプレイリストは「いま聴くべきサックスの名演10曲」をテーマとしながら、自身が担当した伊丹十三監督「マルサの女」のテーマの誕生秘話とそれにまつわる伊丹監督とのエピソードをも語ってくれている。


●本多俊之「いま聴くべきサックスの名演10曲」

(1)Just Friends/チャーリー・パーカー
(2)St.Thomas/ソニー・ロリンズ
(3)Autumn Leaves(枯葉)/ キャノンボール・アダレイ
(4)My Favorite Things/ジョン・コルトレーン
(5)Inner Urge/ジョー・ヘンダーソン
(6)Dindi/ウェイン・ショーター
(7)La Fiesta/ジョー・ファレル
(8)Spring Can Really Hang You Up Most/フィル・ウッズ
(9)Some Skunk Funk/マイケル・ブレッカー
(10)Parce mihi domine/ヤン・ガルバレク

   ◆   ◆   ◆

(1)Just Friends/チャーリー・パーカー
サックスってもともとクラシックの楽器なんだけど、ジャズで発展しながらも未だにオーケストラに定席させてもらっていないという、変な楽器なんです。この作品はストリングスとの相性がめちゃくちゃいいんだっていうことを証明したアルバムですね。これ以降、ウィズ・ストリングスっていうものがすごくブームになったんです。

(2)St.Thomas/ソニー・ロリンズ
アルバム『Saxophone Colossus』の1曲目。16小節しかないのに、よくぞこんなキャッチ―でポップな曲を作ったなと感心します。

(3)Autumn Leaves(枯葉)/ キャノンボール・アダレイ
チャーリー・パーカーがいなかったら、サックス奏者としてはキャノンボール・アダレイがトップかと思うほどすごい人なんですけど、実はこの人、マイルス・デイヴィスのグループなんです。ジャズのアドリブを取るスタイルが変化してきている頃で、速いテンポで音数が多かったビバップ時代から、もっと空間を作って演ろう…と、ちょっとクールになってきている。シャンソンなんだけど、ジャズで採り上げられるスタンダードになった素晴らしいアルバムですね。

(4)My Favorite Things/ジョン・コルトレーン
『サウンド・オブ・ミュージック』の曲ですが、このころからジャズが変わってきて、ツー・ファイブ・ワン(II-V-I)コード進行でやってていいのかな…一発もんでやろうじゃないかってマイルス・デイヴィスが言い始めた。それでジョン・コルトレーンが、これをEマイナーで延々とソロをとるんですけど、その魅力がものすごく詰まっている。同じ繰り返しがまるで祈りみたいなんですよ。

(5)Inner Urge/ジョー・ヘンダーソン
プレイもすごいけど作曲がすごい。メジャーセブンスの羅列で、いわゆるツー・ファイブ・ワン(II-V-I)じゃない。独自のスタイルを作った人。ジョン・ヘンダーソンってメジャーセブンスをシャープイレブンスにしちゃうんですよね。ルートを半音下げるとフリジアンスケールみたいになって、ちょっと日本っぽく聴こえるでしょ? それがこの人のカラーで、かつ、この曲は24小節なんで、もしかしたらブルースの変形なんじゃないかなとも思う。この人の和声感覚で作ったブルースですよ。

(6)Dindi/ウェイン・ショーター
この曲はアントニオ・カルロス・ジョビンの曲ですね。その解釈の仕方が、もうジャズとは言えないぶっ飛んだもの。この1969年ってすごい時代ですよね。

(7)La Fiesta/ジョー・ファレル
実はジョー・ファレルの「La Fiesta」を聴いて、私はソプラノサックスを始めました。そんなにいい演奏かどうかはわかんないですが、キラキラしてそれまでの感じと違う。大好きです。

(8)Spring Can Really Hang You Up Most/フィル・ウッズ
ジョージ大塚さん(Dr)というベテランの方がいるんですが、その人がフィル・ウッズとの共演直後に「お前、フィル・ウッズって知ってるか?」と、録りたての曲を聴かせてくれて本当にびっくりしました。アルトサックスってこんな音がするのかって。しばらくフィル・ウッズから抜けられない時代がありましたね。

(9)Some Skunk Funk/マイケル・ブレッカー
「なんなんだこれ?」ですよね。物凄いスピード感がある。これは、確か兄のランディ・ブレッカーの曲なんですよ。ブレッカー・ブラザーズはターボエンジン搭載、音楽全部のスタイル満載ですごかった。

(10)Parce mihi domine/ヤン・ガルバレク
ヒーリングになるのかな?この人もソプラノがメインだけど、カーブドソプラノっていうのを持ってて独特の音色なんです。それとグレゴリオ聖歌との組み合わせには、やられたっていう感じです。

   ◆   ◆   ◆


――7月5日には『DINOSAX』が発表されましたね。

本多:ありがとうございます。1978年にデビューアルバムをキングレコードで出し、紆余曲折あってまたキングレコードに戻ってきました。

――総勢100名が参加している作品ですよね?

本多:いわゆる吹奏楽なんです。吹奏楽って聴かれます?

――はい。最近では、東北ユースオーケストラのアレンジもしました。

本多:僕は全然経験がなかったんです。吹奏楽部にも入ったことがないし、いわゆる吹奏楽団で初めて吹いたのが55歳の時(笑)。5年前に吹奏楽のイベントで曲を頼まれたんですね。それが<バンド維新>っていうイベントなんですけども、10人くらいの作曲家が1人1曲書いて自衛隊でCDを作るんです。それをお手本として、浜松のスーパーキッズっていう上手い子たちが1曲ずつ担当して発表するイベントなんですね。それで作曲家が現場に行って「いい」だの「悪い」だの言うんです。そこで自衛隊のレコーディングに付き合ったら「サックスを吹いてくれ」って言われたんです。経験もないので「ご迷惑をかけるからご遠慮します」って言ったんですけど、「サックスが足りない」って押し切られちゃって。

――本多さんですから仕方ない。


本多:普通サックスって4人ですけど「5人で書いていい」っていうから5人アレンジで書いたんです。そしたら「サックスプレイヤーが足りない」って(笑)。でね、そこで初めて吹いたとき、バンドの中で吹いたほうが色彩感があると思ったんです。吹奏楽って、もわっとしてて取っ付きにくい印象で興味なかったんですけど、中で聴くととてもカラフルで「へぇー」って思った。

――吹奏楽への印象が変わったんですね。

本多:浜松会場では「いい音してるじゃん」と思ったら、高校生だった。彼らの練習する機会に出会えたんですけど、これまたびっくりしちゃった。もちろんプロの器用さはないですけど、すごいしっかりした音でストレートに吹いてるし、自衛隊が苦労したとこなんか涼しい顔で吹いている。「これは一体何なんだろう」ってカルチャーショックを受けたんですね。それから今回に至るまで一緒にやる機会が多くなってきたんです。で、自分の還暦をきっかけに去年辺りから「アルバムどうしましょうか」って。

──以前、アドルフ・サックスに捧げたアルバムを出していますよね。


本多:僕以外みんなクラシックのサックス奏者総勢13人で、トリオがあったりカルテットがあったり…今回もその延長線で行こうかなと思ったところで「吹奏楽のほうに行っちゃったら?」っていうご意見がきた。「60歳になって吹奏楽ってどうなのかな」って思ったんですけど、高校生たちと一緒にやったら、この子たちは変なこだわりがないから面白いんじゃないかと。ホール録音ではなく、スタジオでひとりひとりマイクを立てて、クラシックパーカッションもドラムもベースもオーバーダビングで、全員がクリックを聞いて吹いたら面白いんじゃないかと思って、そういうことをモチベーション高く喜んでやってくれる高校生吹奏楽を探したんです。

――レコーディングに参加したのは、吹奏楽の強豪校のメンバーですね。

本多:やはり自信があったのでしょうね。チャレンジ精神があって先生も喜んでやってくれた。

――作品としての美しさ/かっこよさと同時に、ブラスとかサックスをこれから始める人や未来の人たちに向けた教則本的な財産である印象も持ちました。

本多:譜面も一緒に出ているので、そうなって欲しいんですよね。実はこのアルバムにはアドリブはひとつもないんです。前のアルバムもそうだったんですけど、アドリブに聴こえるけどアドリブじゃない。

――全部書き譜?

本多:書き譜です。

――すごいですね。すべて完全再現できるわけだ。

本多:そうなんです。2年くらい前の某レコーディングでアドリブで吹いたら「譜面通りに演れ」と言われて、その通りに吹くと、異様にバックとシンクロしたんです。普通のアドリブだとあり得ないシンクロが起きるから「なるほどな」と思って。

――そんな経験が。


本多:アドリブでやったほうが楽ですけどね(笑)。でも再現性を考えると、音譜が置いてあるほうがやっぱりいいのかなと。昔楽譜を発売した時、アドリブで吹いた部分を「アドリブ」って記述したら「この部分こそ譜面にしてほしかった」って言われたことがあったんです。ユーザーの人はそういう思いが強いんだろうなと思って、それからはそうしてます。

――アルバム『DINOSAX』は、未来のサクソフォン奏者や吹奏楽奏者へのメッセージ/財産なんですね。

本多:そんなオーバーなもんじゃなくて「こういうのもありますよ」ぐらいですけどね。ホールの生録ではなくレコーディングブースでダビングで録ったら「吹奏楽ってどんな音がするんだ」というのを聴きたかったし、「クリックを聴いてリズムがピッタリ合ったときって、吹奏楽だとどんな風になるんだろう」というのを自分でやってみたかったんですよね。

――普段、音楽はどのようなものを聞いているんですか?

本多:ジャズも聴きますけど、『スター・ウォーズ』のジョン・ウィリアムズとか好きですよ。というかジョン・ウィリアムズを聴いてクラシカルな編曲に興味を持ったから。サントラとか好きですよ。

――CDで?

本多:好きなやつをMP3にしてiPhoneとかで聞きます。いっぱい入れちゃうから、ずっと続けてると25~26時間くらいかかりっぱなし(笑)。

――カジュアルな環境ですね。本格的なオーディオとかで聴いているのかと思いました。

本多:じゃあこだわることにしておいてください(笑)。全然だめなんですよ…オーディオ興味ない。もうCDかけるのも面倒くさくなっちゃったから、車とかかけっぱなしです。

――そんな中でも、今回の「いま聴くべきサックスの名演10曲」は、The本多セレクションというべきものでした。

本多:本当は『タクシードライバー』のトム・スコットも良かったんですよねぇ。

――『DINOSAX』の次の構想やイメージはあるんですか?


本多:何となく。予定調和になっちゃったものはあんまりやりたくない。例えばフュージョンも今は予定調和だから、これがフュージョンだっていうところからズレたものじゃないとつまんない気がするんですよね。吹奏楽も「ホール録音でやりました」じゃ絶対つまらない。「こんなの吹奏楽じゃない」っていう人もいると思うんですけど、やるとしても何か挑戦はしたいですね。

――僕が本多さんとご一緒できるんだったら、はみ出たジャズ・ルネッサンスみたいなことがやりたい。

本多:そういうのこそやりたいですね。某評論家先生たちが「これはジャズだ」「これはジャズじゃない」ってケンカする、そういうのって面白いよね。

インタビュー:トベタ・バジュン

本多俊之『DINOSAX(ダイノサックス)』

2017年7月5日発売
KICC-1371 ¥3,000+税
1.AMPLITUDE(アンプリチュード)
2.FEATHER TOUCH(フェザー・タッチ)
3.WADDLE-WADDLE(ワドル・ワドル)
4.THE TIME HAS COME(ザ・タイム・ハズ・カム)
5.IN THOSE DAYS(イン・ゾーズ・デイズ)
6.TO THE SKY(トゥ・ザ・スカイ)
7.SEA FANTASY(シー・ファンタジー)
8.FILLED WITH TENDERNESS(フィルド・ウィズ・テンダーネス)
9.TACHIMACHI(たちまち)
10.CRETACEOUS WIND (クリテイシャス・ウインド)
11.うつろい

<本多俊之DINOSAX with 吹奏楽 in 和歌山>

11月19日(日)
【会場】和歌山県民文化会館大ホール
開場11:30 開演12:00 終了16:00
本多俊之音楽クリニック&公開リハーサル
開場17:30 開演18:00 終了19:30
本多俊之 DINOSAX with 吹奏楽コンサート
【出演】
本多俊之(Ss,As)、田中靖人(Bs:トルヴェール・クヮルテット)
本多尚美(Pf)、 松原孝政(Ss,As:カルテット・スピリタス)
田端直美(Ts:Osaka Shion)、 沢田穣治(B:ショーロクラブ)
Osaka Shion抜粋メンバー
ワッパプロジェクト
和歌山県立星林高等学校吹奏楽部
和歌山県立桐蔭高等学校吹奏楽部
和歌山県立和歌山商業高等学校吹奏楽部
和歌山県立向陽中・高等学校吹奏楽部
和歌山県立那賀高等学校吹奏楽部
和歌山市立紀伊中学校吹奏楽部
海南市立第三中学校吹奏楽部
ショークアンサンブル
プレジール・ウインド・アンサンブル
【予約・詳細問い合せ】
090-2380-7524(長谷川)
http:// www.wappa-juku.com
チケット取り扱い:イープラス / 和歌山県民文化会館 / ワッパ塾地域交流イベント実行委員会

◆本多俊之オフィシャルサイト
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