【インタビュー<後編>】フルカワユタカ、「days goes by」を語る「誰かと作るというデカいテーマ」

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■美学というかロマンというか
■バンドって人生に1個でしょ

──基本的に既発表曲のデモが中心ですよね。その完成形とデモを聴き比べてみるとおもしろくて。たとえば「Beast」のデモ音源「ケモノ」は、ギターのテーマが入ってるデモに対して、完成形の「Beast」はそれが入ってなかったり。

フルカワ:そう。そういう聴き方をしてもらえると、曲にストーリーが生まれますよね。

──それに、歌が乗る前のインストだろうなというデモもありますが、「ariki」は最初からインストチューンとして生み出されたデモですか?

フルカワ:「ariki」は洋服デザイナーの有木くんっていう友達がいて。オファを受けて彼のホームページ用に作ったインストですね。「パパッとで良いなら」って作った曲なんですけど、そういうモチベーションで書いた時ってけっこういいんですよ。乱暴すぎるラフを人に聴かせるものにアレンジしていく前段階だから、何でも許されるというか。自分が好きな洋楽っぽくなったかな。

──あと、「isolation」は「真夜中のアイソレーション」のデモですが、この女性ヴォーカルは?

フルカワ:これ、僕が歌ったものにオートチェンジャーを掛けてピッチシフトで上げてるんです。結局、『And I'm a Rock Star』に自分のヴォーカルで収録しましたけど、作った当初は女性シンガーが歌うことを想定して書いた曲だったんですよね。SMAに戻って一番最初に作ったデモかな。まぁ、演奏とか打ち込みのシンベはすごく甘かったり、今だったらもっと生ドラムに聴こえるようにするんですけどね。

──ただ、このバージョンのアレンジも疾走感があっていいです。

フルカワ:僕も聴き返してる時に、“これ、超いいな”と思って。だから入れたんです(笑)。

──「欲望」と「tropical」に関しては未発表曲のデモ音源ですよね。両曲とも歌メロが乗るだろうなっていうアレンジですが。

フルカワ:「欲望」も実は女性が歌うことを想定して作ったもので。本当は主旋律もあるんですが、歌を抜いてるのはそういう理由もあってね。この曲はドラムンベースをポップに落とし込んだアレンジがすごく好きで収録したんです。海外のドラムンベースって、もうちょっとクラブ寄りじゃないですか。ドーパンでも「thunder」とかでドラムンベースのリズムにJ-ROCKのメロを乗せるみたいなことをやってるんですよ。あと「tropical」は打ち込みですけど、アレンジ自体はほぼ完成形ですね。相当なところまでいってるデモ(笑)。

──わかりました。では2018年1月リリースのアルバム『Yesterday Today Tomorrow』ですが、現在(10月末)のところ進行状況は?

フルカワ:もう録り終えて、マスタリングを待つだけです。RECは7月から8月くらいに短期集中で。だから夏フェスの合間に録ったり、歌詞を書いたりしてたんですよ。遡ると、今年2月にアルバムを作ろうって決めて、3月ぐらいにTGMXさんにオファーして、打ち合わせを始めて。

──全曲が、そこから作り始めた新曲ですか?

フルカワ:ですね。自分の気持ちとして、TGMXさんにプロデュースしてもらうなら前の曲じゃないほうがいいと思ったんで。やるって決めた時から曲を書き始めたんです。

──前アルバム『And I’m a Rock Star』は音楽的に、その時点までのフルカワさんの総括的な側面もあったと思うんです。アルバム『Yesterday Today Tomorrow』は今年書いた新曲ばかりということですが、どういう内容になりますか? 今、語れる範囲で教えてください。

フルカワ:一にも二にもTGMXさんとやるって決めたことが、僕にとって大きな変化だと思うんです。ドーパンのインディーズ時代にTGMXさんと作ってたわけですけど、「俺はTGMXさんと一緒じゃないといいもの作れないんじゃないか。そんなはずはない!」っていう強迫観念みたいなものがそこにはあって。それでメジャーに飛び出すんですけど、以降、プロデューサーを立てなかったのはそういうことなんです。

──それどころか、エンジニアリングまで自分が行うところまで突き詰めましたよね。

フルカワ:そう、自分を証明したくてね。でも、ソロになって1枚目のアルバムを作ったところから、再びエンジニアをつけて、その作業に対して僕が何かを言うことはなくなったんです。つまり、誰かとやりたいっていう方向に少しずつメンタルが変わっていって。今回、TGMXさんをプロデューサーに迎え入れたことも、フェスイベント<5×20>も、そういうメンタリティと繋がっている。誰かとものを作るっていう、でっかいテーマがありますね、そこには。

──ひとりでやれるところまでやったから、ということも大きいんでしょうか。

フルカワ:僕の歴史は誰かを排除してきた歴史でもあって、それが正義だと思ってましたから。芸術家というか物作りは鋭利な状況下でないと良いものが生まれない。いろんな人がいると薄まっていく。突き詰めれば最後に見つかると思っていたんです。だけど、そこでどん詰まった後、もしかしたらそれは違うのかもしれないなって。そこまでいったからそういうふうに思えたんでしょうね。根本的にはひとりが好きっていうところは変わらないと思うんです。でも、ひとりで突き詰めていくのかと言えば……きっとこの先は絡まり合いながら、誰かとものを作っていくんじゃないかな。自分が音楽的に成長したり、新しい可能性を開くために。たぶん、これも変わらないでしょうね。

──少し話を飛躍させますが、それはバンドがやりたいっていうことではないんですよね? あくまでもソロで?

フルカワ:これってバンドじゃわからなかったことですからね。それも変な話なんですけど、でも実は全然矛盾してないのかもしれない。ひとりだから、否応なしに誰かとやらなきゃ進められない。だから人とやるっていうことに意義を感じてるっていう……やっぱり変な話ですかね(笑)。

──そもそもバンドを解散したら、別のバンドを組むっていう選択肢もあったはずだし、それは今からだって出来ることですよね。複数のバンドを同時進行させているミュージシャンも少なくない。でも、フルカワさんもLOW IQ 01さんもやっぱりソロでやっていくんでしょうか。

フルカワ:バンドを組まない人ってけっこう決まってますよね。僕もよく「バンド組みなよ」ってアドバイスをもらったりするんですよ。市川さんがどう思って組まないのかはわかんないんですけど、組まない人なんですよ、きっと。僕もそうなんです。

──でも、解散するまでバンドを組んでたわけじゃないですか。

フルカワ:だから、それしか組まないんでしょうね。

──愛がある発言だなー。

フルカワ:愛だけじゃないんですけど、愛もあるんですよ。SUPER STUPIDの話を市川さんはすごくするし、僕もドーパンの話をよくするんです。だからきっと愛はあるんだけど、それだけじゃなくて。やっぱりやりたくないんですよ、解散したら次のバンドはないっていう人種がいるんです。もちろん人それぞれだし、もしかしたら再結成とかあるかもしれないし、企画バンドみたいなことはやるかもしれないですよ。でも、美学というかロマンというか、バンドって人生に1個でしょって……今、答えながらそう思いました。

──ロックスターらしい言葉です。

フルカワ:いや、なんとなくですけどね(笑)。「組め」って言われたら組むかもしれませんよ。

──今、ソロとしていろいろな人と関わりを持ちたいと思っていることは、矛盾してるようで、やっぱり矛盾してないんですね。

フルカワ:うん。そうでなきゃ良いものが生み出せないっていうのは、ひとつの答えですね。丸くなったって言う人もいるかもしれないけど、ずぶずぶになって染まっていくわけじゃないですから。僕自身やってきたことがそうはさせないでしょ、何があったって。自然体でそうなってるんですから。

──なるほど。それにしても11月からますます忙しくなりますね。

フルカワ:<5×20>をあいだに挟んで、アルバムツアーも久々にありますからね。今、すごく前向きですよ。続けていると難しいことや大変なこともあるけど、ポジティヴなフルカワユタカを、その全部に置いていければいいなと思ってます。それが花になって咲いてくれれば、それがまたポジティヴな自分を作るんじゃないかな。

──今、まさにそういう状況の中に居ますから。

フルカワ:そうだと思います。あんまり実感はないですけど、あれよあれよと人前でギター弾いて、アルバム作ってるなっていう……もっとやりたいですね、もうどんどんよくしたいです。

取材・文◎梶原靖夫 (BARKS)

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■シングル「days goes by」

2017年11月8日(水)発売
【CD】NIW136 1,700円 +税
01. days goes by
※Guest Backing Vocal:ucary valentine
※Producer:TGMX
02.ケモノ('12年6月)
03.'12年4月 ariki pt1('12年4月)
04.'13年7月 2step('13年7月)
05.ハネたバラード('13年7月)
06.isolation ('14年10月)
07.ariki pt2 ('13年11月)
08.deep sleeper inst ('15年9月)
09.欲望 ('16年2月)
10.メロコア ('16年7月)
11.tropical ('17年8月)
12.フェアウェル ('12年12月)
※新曲1曲+[ボーナストラック]デモ音源11曲収録

■アルバム『Yesterday Today Tomorrow』

2018年1月10日(水)発売
NIW137 3,000円(+税)
01. revelation
02. シューティングゲーム
03. busted
04. 僕はこう語った
05. days goes by
06. デイジー
07. DAMN DAMN
08. nothin' without you
09. バスストップ
10. no boy no cry
プロデュース:TGMX(FRONTIER BACKYARD)
▼ゲストヴォーカル
M1:LOW IQ 01
M5:UCARY & THE VALENTINE
M8:米田貴紀(夜の本気ダンス)
M9:荒井岳史(the band apart)
▼作詞
M7:須藤寿 (髭)

■全国ツアー<フルカワユタカ presents 『yesterday today tomorrow TOUR』>

2018年1月13日(土) 愛知県 伏見JAMMIN'
2018年1月14日(日) 大阪府 Shangri-La
2018年2月11日(日・祝) 静岡県 Shizuoka UMBER
2018年3月17日(土) 岡山県 岡山ペパーランド
2018年3月18日(日) 福岡県 INSA
2018年3月21日(水・祝) 宮城県 enn 3rd
【チケットオフィシャルサイト最速先行受付】
受付URL http://www.getticket.jp/g?t=e9fmz3z  (PC・携帯・スマホ)
受付期間:〜11月13日(月) 23:59

■<フルカワユタカ SHELTER 3days>

▼11月28日(火)下北沢 SHELTER「バック・トゥ・ザ・インディーズ」
サポートメンバー bass: 村田シゲ (ロロロ) / drum: 福田忠章 (Frontier Backyard , Scafull King)
▼11月29日(水)下北沢 SHELTER「フルカワユタカはこう弾き語った」
▼11月30日(木)下北沢 SHELTER「無限大ダンスタイム’17」
サポートメンバー guitar: 新井弘毅 / bass: 宇野剛史 (QUADRANGLE,GOLIATH) / drum: 鈴木浩之 (U&DESIGN, QUADRANGLE,GOLIATH)
▼チケット
全公演 前売り¥3,500(税込、D別)※SOLD OUT
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888 (weekday12:00~19:00)

■<フルカワユタカ presents「5×20」>

2018年1月28日(日)新木場STUDIO COAST
開場13:15 開演14:00
出演:フルカワユタカ / the band apart / Base Ball Bear / …and many bands , musicians
▼チケット
スタンディング 4,800円(税込)
※ドリンク代別
※3歳以上要チケット
一般発売:2017年11月25日(土)
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888 (weekday12:00~19:00)

■<FRONTIER BACKYARD 6th album「THE GARDEN」Release Tour>

2017年11月10日(金)宮城・仙台 enn 2nd
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / フルカワユタカ
2017年11月11日(土)岩手・大船渡 KESEN ROCK FREAKS
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / the band apart / フルカワユタカ
2017年11月12日(日)岩手・宮古 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / the band apart / フルカワユタカ
2017年11月14日(火)北海道・札幌 BESSIE HALL
出演:ASPARAGUS / FRONTIER BACKYARD / フルカワユタカ
2017年11月16日(木)青森・aomori SUBLIME
出演:FRONTIER BACKYARD / フルカワユタカ
2017年11月17日(金)宮城・石巻BLUE RESISTANCE
出演:FRONTIER BACKYARD / フルカワユタカ
2017年11月18日(土)栃木・HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
出演:FRONTIER BACKYARD/ CALENDARS / フルカワユタカ

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