【対談】矢内景子 × 野島一成が語る、『ラファンドール国物語』初ALとプロジェクトの革新性

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■ アルバムとして1枚を通して聴いたときに気持ちいいかどうか/矢内

▲AL『SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語』

── 今回、そうやって作り上げられた曲がひとつのアルバムになったわけですが、キャラクターの台詞も含めた状態で収録されていることに驚きました。

野島:僕も「CDにも台詞が入るんだ」って思った。

矢内:もちろん入れますよ! そこも含めてラファンドールのCD作品ですから。

企画プロデューサー:ラファンドールでは、「台詞も音楽」という認識です。

矢内:そうですね。ただ、アルバムとして1枚を通して聴いたときに気持ちいいかどうかは凄く大きいと思っていて。今はそういった流れを意識しないで聴く人も多いのかもしれないですけど、作り手としては大事にしたいし。だから、収録順はストーリーの時系列とも公開された順とも違うんです。

── 収録された曲の中で、特に印象的だったのはどの曲でしょうか?

野島:僕はやっぱり、「約束」ですね。最初にいただいた曲ということもありますし、東京ゲームショウ(2016年)で聴いたときに「いい曲だな」と感じて、ずっとサビが(頭の中で)鳴ってました。


矢内:ありがとうございます。

野島:あと、シェルシュは抜けのいい周波数帯の歌声なんでしょうね。

矢内:私は……ストーリー的に主要な曲である「約束」や「大切な人」はもちろん印象深いですが、「four windows」やアルバムで初公開となる「walking away」は凄く気に入ってます。「four windows」は、“自分も他者も知ってる自分”、“自分は知ってるけど他者は知らない自分”、“自分は知らないけど他者は知ってる自分”、“誰も知らない自分”という、心理学で使われることが多い“ジョハリの窓”という考え方からイメージしたんですが、私の思想のすべてなところがあって。ラファンドールに関しては、最初から二面性がテーマだと言っていますが、“光と影”、“善と悪”、“好きと嫌い”── そのどちらかが良くて、どちらかが悪いというわけじゃないし、その両方があったときにどう向き合って、どう受け入れていくのか? そこに、人が生きていく上での面白さがあるという想いです。この曲では、リエン、シェルシュ、トレスタ、アイソルという4人がそれぞれどういう道を歩んでいき、立場の違うキャラクターたちが自分の知らなかった自己と向き合い、どう飛び立っていくのか。── 歌詞の中では“名前”という表現をしてますけど── 自分で自分を誰だと決めるのか、要は“自分にとって自分は誰なのか”という認識についてですよね。そういうことが全部入ってる曲なので、ストーリーの中でも後ろのほうで出てきますし、アルバムでも「大切な人」の前に置きたいと考えてたんです。



── それぞれのキャラクターとシェルシュのデュエット曲に関してはいかがですか?

矢内:鈴木達央さん(ネブラエス・デュガン役)とシェルシュによる「愛しい人よ」は思い入れがありますね。ネブラエスの年齢は40代をイメージしてるんですが、歌うときは「お母さんを思い出して回想してる曲なので、ちょっと若くなってください」って私からディレクションをしてるんです。なので、少し高めに歌ってもらってたりもして。そういう工夫をご本人ともスタッフとも話し合って作った曲です。

── そういったところまで緻密にプロデュースされてるんですね。

矢内:このプロジェクトを通して、野島さんから学んだことがあって。最初に原作をお見せしたときに「ここはどんな国で何世紀のお話で、どんな言葉や文字の民族で、どんな背景なんですか?」ということをおっしゃっていたんですね。その場は、てっきりキャラクターの関係性だったりを話すのかと思っていたら、「いちばん大切なのはそういうディティールなんです」と。

野島:そういったリアリティがないと、どうしてもフワフワしたモノになっちゃうんです。ファンタジーだからこそ、そこが重要。何がアリで何がナシなのか。例えば、魔法使いが1人しかいない場合と大勢いる場合ではかなり違うじゃないですか。そういうのはわりと気にしますね。ただ、今でも決まってない設定があったりもします。

▲野島一成

矢内:結構ありますよね(笑)。

野島:そういうのを決めるのが楽しいときもあるし、辛いときもある(笑)。

矢内:私、野島さんとのやり取り、大好きですよ。凄くハッとさせられることも多いですし。そして、言われたことをあたかも自分で考えたように誰かに話しています(笑)。

野島:僕は自分が言ったことを片っ端から忘れていくから、巡り巡って「おぉ!」って感じるかも(笑)。

── ハハハハ(笑)。先ほど、「walking away」が挙がりましたが、未公開の曲を収録したのはどうしてだったんですか?

▲矢内景子

矢内:この曲がどうしてストーリーの中で出てこなかったかというと、同じような時期についての曲があったからなんです。二面性のうちの光側が「ひとつだけ」、それを影側から解釈したのが「walking away」になってるんですよね。


── ストーリーを読み込んだ人にとってはプレゼントになる曲ですね。

矢内:そう感じてもらえたら嬉しいです。あと、同じようなシーンがある曲というと、「囚われた光」もそういう立ち位置だったりします。花江夏樹さん(リエン・マキュール役)とシェルシュとのデュエット曲なんですが、「リエンの目線でリエン本人が自分の迷いと葛藤を歌ったときにどうなるのか?」を描いていて。ラファンドールの曲は声優さんたちから「難しい」と言われることが多いんですが、特に「囚われた光」は難しかったと自覚してるんです。ただ、その難しさに意味があるというか。そんなに単純な感情じゃないし、混乱の中で自分が気づけたこと、気づけなかったこと、迷ってること、迷いのないこと……そういったことが全部集約された肝になるところだと考えています。だからこそ、テレビアニメとして放映していただく際、オープニングナンバーとして使わせていただきましたし。ラファンドールを象徴する曲のひとつではあるかなと思ってます。

◆インタビュー(3)へ
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