【インタビュー】ONE☆DRAFT、“あなたの歌”に出会える最新作『ENDRUN』

ポスト

■いろんな人の意見を聞かなきゃいけない

──MAKKIさんが関わった曲は「君との足跡」ですか。

MAKKI:そうです。きっかけは、今年の春のツアー中に12年飼ってた犬が死んだことで。LANCEもRYOも犬を飼っていて、死んじゃった経験があるから、LANCEが「線香あげにいくわ」ってうちに来てくれて。その時にうちの母親の姿を見たLANCEが、最初の歌詞を思いついたらしく。

LANCE:MAKKIのお母さん、犬のことを溺愛してたから。お母さんのことは高校1年から知っていて、沖縄生まれですごく優しくて、家の中で唯一沖縄言葉でしゃべってるし、すごく親近感があったんですよ。いつも元気で「ハイサイ!」みたいなノリだったのが、冷たくなった犬の頭をなでている、その時に初めてお母さんのせつない顔を見た気がして。それから3日後ぐらいにまた行って、「お邪魔します」って言ったら、「ああ、どーも」って言うんだけど、どこか違うところを見てる感じだったんですよ。物思いにふけってる感じの、間抜けな顔をしてたんですよ。

MAKKI:おい! すげえディスだな。

RYO:いい話してるのに(笑)。

LANCE:それが余計にせつなかったというか。僕らは全員犬が好きだから、だから犬は必ず死ぬけれど「天国の一歩手前で飼い主を待ってるんですよ」って。それで飼い主が天国に行く時に一緒に行くのが動物だから、「たぶん今待ってくれてますよ」って。僕もいつか死んだら、何匹もの犬が天国の入り口で待ってるから、「今頃すげえ賑やかにやってるんですよね」っていう話を、お母さんにしたことがあって。それで家に帰ったら、やっぱり書かざるをえなくなって、途中まで書いたものをMAKKIに託して、「このあと、どういう感じだったの?」って、二番からあとを書いてもらって。

──ああ。そういうことだったのか。

LANCE:二番に書かれているのが、本当にMAKKIの家であったことの描写だから、僕には書けない内容なんですよね。“君との足跡 / 雪の上に残したよね”というのも、MAKKIにしか書けないすごいリリックだなと思ったから、タイトルは「君との足跡」にしようと言ったんですよね。

▲MAKKI(DJ)

──でもこれ、人間のラブソングとしても成立するようになってるじゃないですか。そこがいい。

MAKKI:そうなんですよ。最初は僕も気持ちが入りすぎちゃって、LANCEに「犬感強すぎる」と言われ(笑)。冷静に考えたら、僕と犬の話はここだけの話で、人に伝える歌にするんだったら犬感はいらないなと思ったんで。ただそこに気持ちが入っていればいいと思ったんで。大切なものを失った人は、いっぱいいると思うんですよ。そういう人たちが聴いて、ちょっとでも胸の苦しみが取れる方向に行ってもらえればいいなと思います。

LANCE:最初は犬感出てたよね。♪ノミがいっぱいわいてたね〜って。

MAKKI:そんなに汚くねえよ!

──そして何と言っても聞きたいのは、10曲目の「傾奇炎II」ですよ。総勢8名のマイクリレーで、LANCE、RYO、KLUTCH(ET-KING)、コブラJP(FANTAGROUP)、ヤス一番?(nobodyknows+)、GooF(SOFFet)、SEAMO、YOPPY(エイジア エンジニア)という、かつての同志たちが大集合してる。

LANCE:これはもう、言うことないですよ。

MAKKI:10周年ということで、今まで本当に関わりが深かった人たちをメインに声をかけて。

──これを聴くと、いろんなことを思うんですよね。言い方はアレですけど、この10年でいろんなことがあった人ばっかりじゃないですか。

MAKKI:その通りです(笑)。

──順風満帆にキャリアを過ごしてきた人なんて一人もいない。そこがすごく深いんですよ。

MAKKI:さすが、時代を知ってらっしゃる。

──個人的に、会って話をしたことのある人ばかりなんで、余計に思い入れは強いんですけどね。順風満帆の人は一人もいない。でもこうして今も歌い続けている。それぞれの人生を思うと、ぐっとくるものがすごくあるんですよ。

LANCE:本当にそうですね。これは本当にそういう人のために作った歌というか、世の中に対して書いたというよりも、このメンツ全員と近い人たちがわかればいいかなという感じなんですよ。今の世の中の音楽好きの人がこれを聴いてどう思うかは、意識してないですよね。近い人にわかってもらえれば、それでもう満足です。それぐらい、中身がない曲なんで。

──まあ、リリック的にはただのお祭りソングですけどね(笑)。いわゆる感動的な曲ではないけど、だからこそ感動しましたよ。

LANCE:でも今回のアルバムコンセプトって、それかもしれない。俺たちに近い人とか、犬を亡くして悲しんでる人とか、振られて悲しんでる男の子とかに、「この曲を聴いて助けられました」と言ってもらえれば、それでいいかなって。たとえばファースト・アルバムだったら「この曲をきっかけに僕らを知ってください」とか言ってましたけど、自分らをきっかけに曲を知ってもらって、ずっとその1曲しか聴かないという人がいてもいいんですよね。「君との足跡」もそうだし、「HERO」にしても「Believe」にしてもそうだし。徳間に来てこれを言うのは何なんですけど、ソニーの当時のプロデューサーの木村さんに8年振りに電話して、「このアルバム、どう思います?」って聞いたんですよ。

──ほお。

LANCE:「なんだよおまえ、久しぶりだな」「俺も急に電話するのはどうかと思ったけど、この曲がいいか悪いかだけ教えてださい」って。ONE☆DRAFTがデビューして10年たつけど、「最初の扉を開いてくれた木村さんが、10年目に選ぶ曲はどれですか?」って。そしたら、一番響いたのが「Believe」だと言われて、それもでかかったですね。逆に言うと、ほかの曲は響いてないんですよ。恋愛もしてないし、失恋もしてないし、ヒーローでもないし、犬も飼ってないし(笑)。「今はただ本当に平和だよ」って。ちゃんと稼いでるし、心にゆとりもある、子供もすくすく育って、すごく幸せだよと。だけど自分を信じなくなる時、自信がなくなる時が今もあるんだよと言われて、「なるほど」と。

──うーん。深い。

▲LANCE(MC&Vo)

LANCE:人はいろんな経験をして今の自分があるけど、最終的な一番の悩みどころは、自分を信じなくなることで。自分をなくしてしまいそうな時に、「やっぱり音楽っていいよなって思うよな」という話をして。自分を信じると書いて自信ということが、この年になっても、これだけ幸せでも、「足りないものは自信なんだよな」って。だから彼にハマるのはこの1曲だし、この先の人生で自分を信じられない時が来たら「一生この曲を聴くよ」と言ってくれたのを、この人に電話して良かったなと思いながら聞いてたんですけどね。同じように、徳間の人にもいろんな言葉をもらったし、だからいろんな人の意見を聞かなきゃいけないなと思ったんですよね。

──話が一周しました。なるほど。

LANCE:「君との足跡」がいい、「オトノセカイ」がいい、「傾奇炎II」がいいという人もいて、どの曲も「いい」と言ってくれる人がいるじゃんと思って。そういう意味では、全部の曲を必要だと思ってくれる人がいるんだなということだなと思いました。

──「これはあなたの歌です」。そう書いておきます。最後にタイトルのことを。野球用語でいうヒット・アンド・ランから発想した言葉ですよね。

LANCE:そうです。正確には「AND RUN」ですけど、“エンドラン”としか耳で聞いたことはないから、“ENDRUN”って書いてみたら、ダブルミーニングっぽくて良くね?ということで。『ENDRUN』=最後のつもりで毎回やってきた最新の1枚ももちろんエンドランです、みたいな感じですね。

取材・文◎宮本英夫

New Album『ENDRUN』

2017年12月20日(水)発売
TKACA-74589 ¥2,778+税
M1.「HERO」
M2.「Believe」
M3.「better days」
M4.「Sunshine」
M5.「作文用紙じゃ描けない」
M6.「Oh My Little Girl」
M7.「オトノセカイ」
M8.「君との足跡」
M9.「Treasure Hunter」
M10.「傾奇炎II feat. KLUTCH(ET-KING)/コブラJP(FANTAGROUP)/ヤス一番?(nobodyknows+)/GooF(SOFFet)/SEAMO/YOPPY(エイジア エンジニア)」

この記事をポスト

この記事の関連情報