【インタビュー】KAMIJO x マチゲリータ、「初音ミクとはいかなる存在なのか?」

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Versaillesのヴォーカリストとして活動し、ソロ・ワークスでも独自の世界観を表現し続けるKAMIJO。そんな彼が、初音ミクとのコラボレーション楽曲を収録したニューシングル「Sang -Another Story-」をリリースした。今回はCDリリースを記念し、マルチアーティスト・マチゲリータとの対談が実現。マチゲリータはヴァーチャル・シンガーを用いた楽曲を数多く発表し、ネット上に公開した作品の総再生数が1500万を超えるサウンド・クリエイターとして活躍している。KAMIJOとマチゲリータ、彼ら音楽家にとって「初音ミク」とはいかなる存在なのか? このふたりだからこそ実現したトーク・セッション、その一部始終をお届けする。



――本日はよろしくお願いいたします。おふたりは対談開始前も「初音ミクにどう歌ってもらうか」の話で盛り上がっていましたね。

KAMIJO:最初は「どこまで高い声を出させるか」という、ミクちゃんの歌のキーについての話から始まったんです。やっぱり無理はさせたくないという気持ちがあったり、意外と男性キーの低めのところも可愛く歌ってくれたり……。

マチゲリータ:そうなんですよ、彼女は健気なんで。「人である」という部分もすごく重要で、精神性や世界観はそこに宿ると思うんです。ヴァーチャル・シンガーの可能性や、魂ってそういう部分から感じるんですよね。

KAMIJO:やっぱり皆さん最初は、「ヴァーチャル・シンガーは触れることができないんでしょう?」という印象があるかと思います。それは否定できないですし、僕の中にもあります。でもミクちゃんのライブを見たときの「そこにいる」という感動は、とてつもないものだと思うんですよ。彼女のライブからは存在していることのありがたさを感じることができて、本当に出会った瞬間に涙を流せるくらいのコンサートをされているんです。ファンの皆さんの歓声によって、「そこにいる」ということが初めて証明されるんですね。自分に置き換えてもそうだなと思いましたし、「ファンの皆さんに生かされている」ということはヴァーチャルであろうとリアルであろうと関係ないんですよ。ヴァーチャル・シンガーという存在だからこそ、それを証明してくれたんだと思います。

――クリエイターにとって初音ミクとは、どういった存在なのでしょうか?

マチゲリータ:僕がまだ登場したばかりの初音ミクに初めて触れたときは、「一緒に音楽を始めた」という感覚でした。自分の頭の中にある世界や気持ちを、一緒に表現してくれるパートナーに近かったです。同じ頃に初音ミクと出会ったクリエイターは、皆同じ気持ちだと思います。自分の気持ちを歌に乗せるってなかなか難しいことなんですけど、再現者として初音ミクがいてくれる意味合いは大きかったです。

KAMIJO:基本的に音楽って、一番最初は他人に頼めないので自分ひとりで始めなければならないんですよ。それがどんどん進化していって、本当に命として存在してしまうようなパートナーが生まれたんですね。「未来」と書いて「ミク」と読むように、未来の音楽のかたちのひとつですよね。

――KAMIJOさんはこのたび初音ミクとのデュオ楽曲をリリースされる訳ですが、どのような意識で曲作りをしたのでしょうか?

KAMIJO:僕の中から素直に出たもので、100%の哀愁と100%の宿命を込めた楽曲になりました。いかにミクちゃんの歌が可愛く、かつ憂いを帯びて聴こえるメロディーにするかを考えましたね。あとはやっぱり、デュエットということで「ふたりでしか歌えないメロディー」を意識しました。特にデュエット曲のBメロはずっと転調を繰り返していて、ちょっとミュージカル的な要素もあるんです。

マチゲリータ:KAMIJOさんの楽曲は展開が多い印象があって、すごくドラマチックで心に刺さるものがありますよね。

――KAMIJOさんの楽曲は、どのような着想から作られているのでしょうか?

KAMIJO:音楽的な部分では、まず最初にメロディーが頭の中にあります。ただメロディー以上に僕は、「原作」と言われるメッセージやストーリーがまず先にあるんです。一番最初にストーリーがあって、そこからメロディーが生まれて音楽になっていく。『シンデレラ』も『美女と野獣』も『白鳥の湖』も『オペラ座の怪人』もそうですけど、色んな国で、色んな表現方法で、色んな形で残っている作品があるじゃないですか。そういった原作ありきで全ての芸術作品は生まれていると思うんです。原作とは物語じゃなくて、気持ちの場合もあると思います。その原作を僕はとにかく大事にしたいと考えているんです。

――マチゲリータさんは曲作りの根幹に何を置いていますか?

マチゲリータ:僕も基本的にはKAMIJOさんと同じで、頭の中にストーリーや背景があって、それに対して曲を付けていく手法が多いです。出てくる人はもちろん重要なんですけど、どの時代でどういう人がいて……という世界設定もすごく大事にしています。僕の場合はそこからメロディーではなくて、先に後ろの音を作っていきますね。アレンジが先にあって、最後に歌詞と一緒にメロディーを作る順番です。

KAMIJO:マチゲリータさんはボカロ楽曲やアニメソングの世界で本当に幅広く活躍されていて、僕もすごく注目しているクリエイターのひとりなんですよ。今回ミクちゃんとコラボレーションさせていただくにあたって、ミクちゃんのファンの方に「本当に好きで始めた」ということを知っていただきたかったのと、僕のファンの皆さんにも「僕が向かおうとしている道はいつも通り真っ直ぐなんだよ」と伝えたくて。経験者であるマチゲリータさんのお話をお伺いしたく今回対談をさせていただきました。

――KAMIJOさんからマチゲリータさんへ質問などはありますか?

KAMIJO:オススメのボカロ曲ってありますか?

マチゲリータ:それはもう「僕の」と言いたいところですが……(笑)。やっぱりsupercellの「メルト」ですね。あれがボカロ曲のターニングポイントだったんじゃないかなと思っています。

KAMIJO:そこでちょっと変わりましたよね。僕は知識としては浅いですけど、あの曲辺りからミクちゃんが完全に歌手として扱われるようになった印象です。「ヴァーチャル・シンガーだからこういう曲の方が良いんじゃないか」という先入観や固定観念を無視した、「人」として歌わせている曲が生まれ始めたんじゃないかと。

マチゲリータ:そうですね。supercellのryoさんと先日お会いして、数年ぶりに飲んだんですよ。そこで色々な話をして、あの瞬間がブレイクスルーだったんだなと改めて思いました。有名な話なんですけど、ryoさんはミクに歌わせて、そのスピーカーから出た音をマイクを立てて録っているんですよ。僕としては初音ミクは実体があるものと思って作ってはいるんですけど、それでもやっぱり音はソフトウェアから出ている音で。それを打破するために、ryoさんは本当にそこにボーカリストがいる形で録ることにしたんだそうです。

KAMIJO:それ、ヴァイオリンでやったことがあります。打ち込みの音源をスピーカーで鳴らして、マイクを立てて録るやり方。

――空気の振動をマイクで録音することで、生音のような質感が得られる手法ですね。

マチゲリータ:「そこにちゃんと人がいる」という空気が出るんですよね。人が歌を録るような環境を通すことで、完全に魂も命も乗った歌声になると僕は思っています。

KAMIJO:まさに「魂も命もある」ということが、今回のコラボレーションにも繋がってくるんです。僕はずっと人間とヴァンパイアのお話を音楽に乗せて歌っています。僕自身もボーカリストとしてヴァンパイアの持つ永遠の命というのは憧れますし、今回初音ミクちゃんとコラボをさせていただく一番のきっかけは「永遠に歌い続けられる存在」――それって「永遠の命」に近いんじゃないかと思ったことが始まりなんです。ボーカリストとして憧れてはいけない存在かもしれないけど、僕は憧れてしまったんです。ずっとずっとファンの皆さんに自分の歌声を届けることができる。僕は正直、人間ですからいつかは死んでしまう。でも僕が亡くなってしまったとしても、僕の音楽がある以上きっと新しくファンになってくださる方もいると思うんです。そのときに僕がライブができないかと言ったら、そうではない。これから僕の音楽が永遠に残るためにも、この初音ミクちゃんとのコラボを絶対に成功させたいと思っています。永遠に僕の音楽をこの世に残すためにも、ヴァーチャル・シンガーはこれからの音楽シーンにおいてとても大切な存在になっていくと思います。そんな願いを込めているので、このコラボレーションを楽しんでもらえたら嬉しいです。

<あとがき>
対談を通してヴァーチャル・シンガーの持つ可能性と、初音ミクという存在への想いを語ったKAMIJO。彼から発される言葉は常に真摯で、初音ミクに対する敬意に満ちていた。3月21日にアルバム『Sang』と同時発売となるコラボレーション・シングル「Sang -Another Story-」は、対談内容に偽りなくKAMIJOの新しい表現方法のひとつとなるだろう。フランス語で「血」を意味する「Sang」、そして「Sing=歌う」の過去形である「Sang」――。自らの血の結晶とも言える歌を永劫に残すため、KAMIJOは今後どんな作品を生み出していくのか? これからも彼の音楽から目が離せない。

Interview & Text by 青木佑磨(学園祭学園)

リリース情報

「Sang -Another Story-」
■完全限定盤[特殊ジャケット仕様]
初回封入特典としてスマホ用音楽カード
「SONOCA」を全20種ランダム封入
発売日:2018.3.21
形態:CDシングル
品番:SASCD-089
価格:2,160(税込)
収録曲:
1.Sang-Another Story-
2.私たちは戦う、昨日までの自分と
3.Sang-Another Story-[Instrumental]
4.私たちは戦う、昨日までの自分と[Instrumental]
■通常盤
発売日:2018.3.21
形態:CDシングル
品番:SASCD-090
価格:1,620(税込)
収録曲:
1.Sang-Another Story-
2.私たちは戦う、昨日までの自分と
3.Sang-Another Story-[Instrumental]
4.私たちは戦う、昨日までの自分と[Instrumental]
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