【アルバムレビュー】The BONEZ「ニュー・アルバム『WOKE』は“聴くドキュメンタリー”だ」

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聴くドキュメンタリー。ついに完成に至ったThe BONEZのニュー・アルバム、『WOKE』を聴いていて、ふとそんな言葉が浮かんだ。

このバンドの母体となるJESSE and The BONEZが始動したのが2012年11月11日のこと。当初はあくまでRIZEのJESSE(V/G)を中心とするソロ・プロジェクトとしてのスタートだったが、Pay money To my PainのT$UYO$HI(B)とZAX(Ds)、そして彼自身とRIZEで長い時間を共にしてきたNAKA(g)との合流によるこの“場”は、まさしく運命的にバンドへと発展。4人が重なり合う図をイメージしたNの文字をモチーフにしたシンボルマークを掲げながら、The BONEZとして動き始めたのは2013年9月のことだ。早いもので、それからすでに4年半以上の月日が流れている。そこでの濃密な時間経過のなかで何が生まれ、バンドがいかに成長を遂げ、何がどう変わったのか。世の中が変わり続けていくなかで、何が変わらぬままであり続けているのか。それをあくまでリアルに、過剰な演出抜きで伝えてくれるのが、この『WOKE』という作品なのだ。

まず、タイトルに掲げられた“woke”という英単語に着目したい。これが“wake(目覚める)”の過去形/過去分詞形であることは学校でも教わるはずだが、単純に眠りから覚めることだけではなく覚醒した状態をも意味するこの言葉は、近年では<意識を持った状態(や人)>を指すものとして使われることが多々ある。たとえば、さまざまな社会問題について知識と見解を持つ人なども“woke”と呼ばれる。とはいえ、べつに彼らはこのタイトルを掲げることで社会派を気取ろうとしているわけでは全然ない。自分たちの身のまわりで起きていることについて認識できていること、時流に押し流されることなく揺るぎない自我を貫いていることをしっかりと自覚している現在の状態を指すものとして、この4文字を掲げているのだ。

そうしたタイトルとともにアルバム・カヴァーに描かれているネイティヴ・アメリカンの横顔にも、何やら示唆的なものがある。その意図についてはのちに彼ら自身の口からも明かされることだろうが、シンプルでありながら機知に富んだアメリカ先住民たちの言葉には、はっと目を見開かされることも多々あるものだ。たとえばナバホ族の教えのひとつに「眠ったふりをしているなら、その男は起こせない」という言葉があるのだという。森でクマに遭遇した時には死んだふりをするのが有効らしいが、問題だらけの世界で眠ったふりを決め込んでいては何ひとつ解決しない。国会で居眠りしているような政治家に未来のルールを決められてしまうなんて、たまったもんじゃない。世の中を動かし得るのは文字通り“woke”な状態にある人たちだけであるべきだし、それは音楽シーンについても同じことではないだろうか。

話は横道に逸れるが、5月9日のリリースに先駆け、4月29日に渋谷・TSUTAYA O-EASTで行なわれたアルバム完全再現ライヴ(同公演がいかに素晴らしかったかについては先日アップされたライヴ・レポートをご参照いただきたい)の際に先行販売された今作の完全会場限定盤の特別パッケージは、明らかに往年のBEASTIE BOYSの写真を連想させるものだったりもする。これは明らかに完全なる悪ふざけであり、おそらくそこに深い意味はない。The BONEZは世の動きや音楽シーンの現状について客観と主観の双方を持ちながら認識していると同時に、自分たちが純然たる音楽ファンのままであり続けていることについても自覚的なのだ。加えて、悪ガキのような風情を損なわないまま常に鋭い視点や風刺の精神も持ち合わせていた先人としてのBEASTIE BOYSに対する改めての共鳴、敬意もそこには感じられる。

アルバムは、まるで眠っている我が子にそっと囁きかけるような歌い出しの「Until you wake up」で幕を開ける。歌詞はもちろん英語だが、その冒頭部分に綴られているのは〈俺は待ち続ける/君が目を覚ますまで/その顔にまた笑顔が戻るまで〉という意味合いの一文である。ライヴ会場に集結するオーディエンスのなかにたくさんいる〈昔の自分みたいなクソガキども〉を扇動するのみならず、彼らを覚醒させ、先導していくことを使命として背負おうとしているJESSEの意志が、そのわずか一行からも伝わってくる。同時にそこから感じられるのは、彼の父性だったりもする。遠い昔、RIZEの存在を広く世に知らしめた「why I’m Me」において、自身が父親から受け継いだものを自覚しながら、青くさく〈俺はなぜ自分なのか?〉と問いかけていた彼は、今、同じ疑問を抱えている世代の背中を無闇に押すのではなく、ある種の〈気付き〉をもたらすべく語り掛けている。当然ながらそれは、彼だけに限ったことではない。守るべきものを持ち、背負うべきものを背負った各々メンバーが奏でる音のひとつひとつにも、そうした念が込められているのだ。

もちろん「Until you wake up」は、冒頭部分こそやさしい手触りをしているが、すぐさま激しく展開していく。その先に並べられている各曲についても、基本的にはラウドでアッパーな楽曲がほとんどだし、いずれもすぐにライヴの定番になりそうな即効性のある曲ばかりだ。が、聴き手を元気づけようという意図がありありとうかがえる音楽が世に溢れているなかで、彼らの楽曲は無闇に陽気なのではなく、かといって社会への不満を闇雲にぶちまけるわけでもなく、スッと自然に心に入り込んでくる。それは彼らの主張が何かを押し付けようとするものではなく、<俺たちの場合は実際こうだった。で、キミはどう考える?>というラインに踏みとどまったものだからこそだと僕は思う。繰り返しになるが、彼らは説教や洗脳の真似事をするわけでもなく、実は誰もがわかりきっている多数派の考えを声高に唱えることでインスタントな共感を集めようとするのでもなく、あくまで自分たちの人生経験に則った表現をしながら、聴き手たちに<気付き>をもたらそうとしているのだ。

メンバーたち自身は今作の楽曲がいずれもライヴを見据えながら作られたものだということを認めており、実際、4月29日のライヴでも各曲は見事なまでに効力を発揮していた。なにしろ観る側にとっては<聴いたことのない曲ばかりが並んだライヴ>でしかないのに、オーディエンスは少しの時間差もなく真新しい楽曲たちに同調していたのだ。しかも<いかにも>な曲ばかりが並んでいるわけではなく、新鮮な要素も随所にちりばめられている。エレクトロニックな感触が新機軸な「LIFE」のポップさ、敢えて熱を抑えながら徐々に胸に迫りくる「ANTHEM」の浸透力などにも特筆すべきものがあるし、淡々としているようでいて胸に迫るものがある「Kings Work」にもこのバンドの成熟ぶりが感じられる。アルバム全体を繰り返し聴き込んでいくなかで、グルーヴと疾走感の心地好さに身をまかせているとそのまま聞き流してしまいそうになる歌詞の意味深長さについて気付かされたりもする。

そして同時に確信させられるのは、このアルバムが決して突然変異的なものではなく、あくまでこれまでの歴史からのごく自然な延長上にあるものであり、前々作の『Astronaut』(2014年)の存在なしに前作の『To a person that may save someone』(2016年)が成立し得なかったのと同様に、この『WOKE』もまた今日に至るまでのすべてがなければ生まれ得なかったはずのものだということ。洒落を言うつもりはないが、このアルバムは“woke”であると同時に“walk”でもあるのだと思う。つまり彼らの〈自覚した現在の状態〉ばかりではなく、これまで歩んできた道程も映し出されているのだ。そうした意味において、僕は<聴くドキュメンタリー>だと感じたのだ。だからこそ今は、このアルバムが誕生し、世に放たれることで、この先にどのような物語が綴られ、自分自身が何に気付かされていくことになるのかが楽しみでならない。なんだかこのアルバムとは、長い付き合いになりそうである。

文:増田勇一


The BONEZ OFFICIAL MERCH WEB STORE限定『WOKE - Bundle Set -』

2018年5月9日(水)発売
TBRD-0509 5,000円(+税)
内容:
・CD (Digipak)
・Limited T-shirt (Silkscreen print 7color)
・Original Sticker

Tracklist :
1 . Until you wake up
2 . Bird ~people with wings~
3 . Rude Boy
4 . One more
5 . SUNTOWN
6 . LIFE
7 . Kings work
8 . Code name
9 . Nice to meet you
10 . Anthem
11 . See you again

通常盤『WOKE』

2018年5月9日(水)発売
収録曲数:11曲
TBRD-0509 2300円(+税)
仕様:デジパック

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