答えは神のみぞ知る? ボブ・ディラン、フジロック出演の顛末

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■ 『ボブ・ディラン、捕まらん、喋らん、電話つながらん』

──そして、2016年にはノーベル文学賞を受賞してしまうわけで。

白木:10年以上、ノミネートはされているらしいと言われてきましたから、いつかはと思ってましたが、まさかあの時に受賞するとは不意打ちのようでした。あの時のマスコミからの問い合わせは凄かったです。携帯鳴りっぱなし。ボブ・ディランが言葉を発しなかったということもあるんですが、僕からなんとか言葉を引き出そうとするわけで。週刊誌の洗礼も受けました。30分くらい一生懸命話したんですけど、電車の中吊りの見出しで「ボブ・ディランの変人伝説」「18年間でソニー・ミュージックの担当者、面会時間30秒!」って見た時は驚愕、「ひえ〜ホントにこの人達、たった一言を切り取るんだ!?」って(笑)。

──日本では『ボブ・ディラン、捕まらん、喋らん、電話つながらん』なんて見出しも踊ってましたね。

白木:見出しもボブ・ディランばりに韻を踏んでるのはおかしかったですね(笑)。本人がコメントを出さないから様々な憶測が流れて、ノーベル文学賞を辞退するんじゃないか?とか大騒ぎでしたが、でも、ご本人は嬉しかったんだと思いますよ。賞は結構きっちりいつも受け取ってますし。アカデミー賞受賞時のトロフィーを毎回ステージにさりげなく飾ってるんですが、今回のフジロックにも持ってくると思いますから、どこかにありますから、是非その辺もウォッチしてほしいですね。そもそも一般の常識や感覚なんて関係ないわけですから、彼が何を考えているのかなんて、誰もわかるはずがない。担当になってから特に「なんて不思議な人なんだろう」って思いがどんどん強くなります。

──常人じゃないんだ。それを含めて人は彼を“神様”と表現するんでしょうね。

白木:ご本人は完璧に嫌がってると思いますが(笑)。初来日の記者会見映像を観ると、「“フォークの神様”と言われてますけど、どうお考えですか?」なんて質問訊くわけですよ。そうするとブスっとして「いや、僕は“フォークの神様”でも“神様”でもない。ただ音楽やってるだけ」と答える。『ドント・ルック・バック』(当時23歳のボブ・ディランを記録した映画)でもつまらない質問をした記者に対してボブ・ディランがもの凄い勢いでやり込めるという場面がありますが、イメージを勝手に決めつけられたり、変に崇め奉られることは本当にイヤなんでしょうね。常に彼にとっては普通のことをやってるつもりでも、常人にはワケわからない、理解不能ということが多々ある。

──白木さんが理解不能なら、日本人で理解してる人はいないってことになるな。

白木:いや、そんなことはないと思います。何より日本のファンの皆さんは熱心に真剣に作品を聴きますし、作品の内容とか、何を歌ってるのか? 何をテーマにしてるのか?という作品に対する分析や研究は、世界の中でも秀でているとも思えます。でも、パーソナルな部分は一切出さないから、ボブ・ディラン自身が何を考えているのか?こればっかりは世界中の誰にもわからないし、ミステリアス。今は自伝や映画もありますから明らかになったこともありますが、こっちへ行くのかと思いきや、スッといきなり方向転換、「なぜ?」「え?」っていうことばかり。人とあえて逆を行っているような天の邪鬼的なところもありますよね。昔、思わず帯に「ディランよ、あなたはどこにいこうとしているのか…?」って書いてしまったこともありました(笑)。

──今回「なぜフジロックに出演を決めたのか?」みたいな質問自体、お門違いなんでしょうね。

白木:はい、たぶん。「今年はフェス・モードなんだよね」くらい一言だけでも言ってくれたら、それはそれは楽なんですけど(笑)。

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