【インタビュー】sleepyhead、ソロでの日々が“滴り落ちた”1stフルAL『DRIPPING』

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■絞り出している途中という感じを出したくて“ING”にしました。
■苦しみながら絞り出している段階だったので。


——過去の延長線上ではなく、ひとりのアーティストとしてスタートを切るという気持ちが大きかったんですね。“ステージが自分の場所だ”みたいな余裕はなかったと?

武瑠:そこまでの気持ちにはなれなかったですね。あとはスタッフなしでやっていたので、雑務に追われて集中しきれていなかったのかもしれない。

——そこから、どういう経過をたどって吹っ切れるんですか?

武瑠:若干、時が解決したのと、前に進むためにいっぱいいっぱいになって、「過去のこと思い出して落ち込んでも仕方ないじゃん」って。環境に対する疑問があったり、人が信じられなくなったりしたけど、今の自分を良くすることだけを考えようって。で、10年間、関わってくれた人たちを幸せにする方法は俺がぶっちぎりでカッコよくなることしかないっていうのが少しずつわかり始めたんですよね。そのために今、何をすべきかがだんだんわかってきて、前に進もうと思えるようになった。ひとつ大きなものを超えられたと思ったのは5月に行なったバースデーライブ(<birthday scream party>)でした。バンドのサポートメンバーを含めて曲をちゃんと掴んで演奏して歌えるようになって、自分自身、いい歌が歌えたことが自信になって。

——そこで本当の意味のスタートが切れたんですね。sleepyheadとしての1stフルアルバム『DRIPPING』は、いろんなことがあった武瑠さんから滴り落ちた音楽そのものだと感じました。

武瑠:はい。絞り出している途中という感じを出したくて“ING”にしました。曲を作っている時はまだ切り替えられていなかったんですよ。苦しみながら絞り出している段階だったので。

——そういう時だからこそ生まれてきた音であり、言葉ですよね。ダンスミュージックでもあり、ロックミュージックでもあり、正気と狂気の間を行き来しているような音楽という印象を受けました。とにかくセンスがいい。

武瑠:ありがとうございます。作っている最中は日記でしかなくて、思い浮かぶことを書いただけだったんですけど、あとで聴き直してみたら音楽性はバラバラだけど、歌詞でちゃんと繋がっているなと。音の美学も含めて自分が生きてきた人生が詰まってるアルバムだなと思いました。バンドっぽさやエモさがありながら切なさがフィーチャーされていて、歌もブレス混じりの声だったり、本来、得意としている低いキーも使っているし。

——ちなみにアレンジも自分自身で?

武瑠:サウンドプロデューサーはいないんですけど、6人のアレンジャーさんとやりとりしながら作っていました。「この曲にはこの人が合うな」って。

▲『DRIPPING』通常流通盤

——そんな曲たちを武瑠さんから紹介してほしいんですが、まず1曲目の「MY FORTUNE FADED」は翳りのあるナンバーでサビの溢れ出すようなメロディとグルーヴ感が心地よい。

武瑠:MUSEが好きなので、サビにはその影響が出ているかもしれないですね。シューゲイザーとまではいかないけれど。

——会場限定シングル曲でもあった「闇雲」は決意表明の曲でもありますよね。後半では這いつくばっても明日を求めて泳いでいくんだというところにたどり着いている。

武瑠:「闇雲」、「ALIVE」、「HOPELESS」は復活しようか悩みながら書いていた時の曲ですね。いちばん最初に歌を録ったのが「闇雲」で、最初から最後まで一発録りした曲です。

——歌詞が切実なのは悩んでいた最中だから、こぼれ落ちたんだと思います。「結局」にしても光が見えなかったからこそ生まれたというか。

武瑠:悩んで悩んで結局、前を向くしかないんだっていう気持ちをそのまま書いた感じですね。

——だからこそ導き出された答えがあると思います、「結局」では“大事なものを失くすならば愚かで良いよ”と歌っていますよね。

武瑠:そうですね。1回どうでもよくなっちゃったけど、損しても遠回りしてもいちばん大事なものは譲れないと思ったのはありますね。

——そして「酩酊」はファンクで色気があってやばいナンバーです。

武瑠:曲順には心の流れがそのまま出ていますね。「闇雲」、「結局」で決意して、「酩酊」はやりたかったこと。ギリギリアウトみたいな、ちょっとイケないことを音楽やステージで表現したいと思っているんですけど、そこに直結するのが「酩酊」ですね。音楽に酔うみたいな。

——こういう音にしたいとリクエストしたことは?

武瑠:現代版の岡村靖幸さんをテーマに作りたかったんです。“夜明けまではぼくの神様”という歌詞もそういうイメージ。

——(笑)わかるような気がします。“無菌のビートには興味ないや”という歌詞もこの曲を象徴していますよね。

武瑠:(笑)そうですね。

——開放感のある「熱帯夜」は?

武瑠:ライブをイメージして、このアルバムで唯一ギターから作った曲です。 Bメロ以外は3コードなので誰でも速攻コピーできる曲。sleepyheadがやる激しい曲って何だろう?と思ったら夜のイメージかなって。楽しむというよりは乱れる。理性を捨てて正気じゃなくなる在り方のほうが自分の感性に合うので、言葉のバランスを考えました。常識なんか捨てちゃえっていう。

——なるほど。「HOPELESS」はアルバムの中でいちばん最初に作った曲なんでしたっけ?

武瑠:作り始めたのは2年ぐらい前ですね。バンドに対して先が見えないと思っていた時期にもう何も見たくないみたいな心境で作っていた曲を元に完成させました。最後の1行“遠回りだったねと 笑い合えばそれでいい”っていうのを付け足したんですけど、その結論にたどり着くまでの歌というか。

——メロディがどこか日本的な印象を受けた曲でもあります。

武瑠:ルーツを辿っていったら、自分にとって大きかったのが浜崎あゆみさんだったのでBメロの転調の仕方は影響を受けていると思います。

◆インタビュー(3)へ
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