【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、6thアルバム完成「現実か非現実かわからない場所へ」

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BREAKERZのギタリストAKIHIDEが6月20日、6枚目のソロアルバム『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』をリリースする。ギタリスト、ボーカリスト、作詞家、作曲家などなど、アーティストとしてのさまざまな魅力が開花した同作品は、“棄てられた遊園地にひとり残されたお化けのフィーリーが、大切な想い出と新しい自分に出会う物語”が描かれたコンセプトアルバムだ。歌がこれまで以上にフィーチャーされていると同時に、ロック、ニューウェーブ、ジャズ、シャンソンなど多岐にわたるジャンルが昇華されたテクニカルで味わい深い演奏も聴きどころだ。

◆AKIHIDE 画像&動画

また、アルバムには60枚におよぶ描き下ろしの絵と文章で構成された絵本も封入。初回限定盤にはアートワーク、ミュージックビデオ、レコーディングなどの制作現場を生々しく捉えた87分の長編ドキュメンタリータッチによる特典DVDもパッケージされている。現時点での全てを出し切ったという今作について、AKIHIDEにたっぷり語ってもらった。

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■今回はピンポイントの感情を込めた
■目からウロコの体験でしたね

──アルバム『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』は大人のファンタジーを感じると同時にAKIHIDEさん自身が歌われている楽曲も多く、久しぶりというか新鮮でもありました。どんな発想から生み出された作品ですか?

AKIHIDE:最初に新しい作品を作ろうと意識したのは2年ぐらい前のことですね。当時、僕の誕生日でもある7月5日にEX THEATER ROPPONGIで<想い出プラネタリウム>と題してライヴをやったんですが、その時に今回のアルバムの1曲目の「プラネタリウム」と4曲目の「Wonderland」という曲を披露していたんです。当時はシンセを使ったエレクトリックな楽曲をやりたいなと思っていたんですが、そこから悩みの時期に入ってしまって、同時にいろいろなイメージが浮かんできて“どれをやったらいいんだろう?”って。

──アイデアが溢れすぎての悩みでしょうか。

AKIHIDE:エレクトリックなサウンドなのかアコースティックなインストなのか歌ものがいいのか、どこに絞ればいいんだろう?とずっと考えていたんです。そんな中、いろいろなクリエイターの方とコラボしたAcid Black Cherryのアルバム『Acid BLOOD Cherry』に昨年、参加させていただく機会がありまして、「KEDAMONO」という曲の歌詞を書かせていただいたんです。そこで歌詞を書くことの面白さを改めて教えていただいたことをキッカケに“久々に歌いたいな”と思ったんです。

──歌詞を書くことにどんな面白さを発見したんですか?

AKIHIDE:これはyasu (Acid Black Cherry)さんのおかげでもあって、ひとつは言葉の選び方ですね。感情を伝えるにしても、いろいろな表現の仕方があるんだなって。リズムに対してどこに濁点を持ってくるのか、どこに子音を持ってくるのかを意識することで、楽曲がカッコよくなる。人に伝えるということを学ばせていただきました。そんな経験を活かして今回のアルバムではキーも含めて僕自身が歌いやすい曲を作ろうと。このメロディにはこういう音の響きが歌いやすいとか声が出しやすいとか、ひとつひとつチョイスしながらやっていったのが面白かったですね。言葉次第でメロディがどう活きるか変わってくるし、歌いやすいか歌いにくいかにも関わってくるんだなって。今まで歌詞は言葉を詰め込みたいタイプだったんですけど、今回はピンポイントの感情を込めたものにしたいと思ったし、目からウロコの体験でしたね。

──昨年、そういう新しい可能性が見えた?

AKIHIDE:可能性というよりも音楽を作る楽しさをまた知った感じでした。エレクトリックだとかアコースティックだとか頭で考えないで、自分の中から湧いてくるものを全部つぎこもうと思ったのも、その頃で。ほぼ同時期にアルバムとセットになっている絵本のストーリーが浮かび始めたんです。バラバラだったいろいろなジャンルの楽曲たちを絵本が繋いでくれる感覚がありました。なので、絵本ありきで書いた曲は少なくて、書き溜めていた曲たちが自然とリンクしていったんです。

▲『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』初回限定盤

──“棄てられた遊園地にひとり残されたお化けのフィーリーが、大切な想い出と新しい自分に出会う物語”が描かれたコンセプトアルバムということですが、部屋にひとりでとり残された孤独な心情を歌ったリード曲「Ghost」は切なくて情景が浮かんできます。

AKIHIDE:「Ghost」にはもともと違う仮タイトルがついていたんですけど、これは絵本の主人公、フィーリーのイメージで歌詞が書けそうだなって。とはいえ、絵本に登場するキャラクターやストーリーは“種”のようなもので、そこから全然違う花が咲いたという感じなんです。音楽と絵本が太い線で繋がれているわけではなく、自由な糸でリンクしているイメージ。ゴーストとゴーストロボットは言葉としては繋がっているけれど、聴いた人それぞれの想像力に委ねたいなというところがあります。

──なるほど。サウンドもこれまでと違う感触ですよね。

AKIHIDE:タイトルが『Electric Wonderland』なので、エレクトリックな感じと歌やギターの生なものが合わさるサウンドにしたいと思っていたんです。今回、ベースはアナログシンセを使いました。

──そのアナログシンセの音の質感もあって、今回はサウンドの質感としてニューウェーヴ色の印象も強いですよね。たとえば「Wonderland」のような楽曲にはそれが顕著で。

AKIHIDE:もともとニューウェーヴを通っていたというわけではないんですけど、たしかに「Wonderland」はそうですよね。だから、僕自身新鮮なんです。今回のサウンド的なテーマのひとつに“ニューウェーヴ”とか“エレクトロ”もあって、最初はプラグインのソフトシンセを使ってみたんですよ。でも、「これじゃないな」と思っていたら、キーボードを弾いてくれている小林岳五郎さんがレコーディングで本物のアナログシンセを持ってきてくれて、「これだ!」って。全然違うんですよ(笑)。シンセベース用にモーグとシンセパッド用にプロフェットの2台を買っちゃいました。

──アナログシンセありきのニューウェーヴ感? それともニューウェーヴというお題があった上でのアナログシンセというセレクトですか?

AKIHIDE:後者です。けど、アナログシンセにはハマりましたね。知らなかったんですが、アナログシンセは電源を入れただけではチューニングが合わないんです。プログラミングされているものではなく、ある意味、生の楽器と同じなんですよね。人間味のあるものなんだなって。なので、この曲は今までの自分のソロとは少し違う機械的な感触だけど、核にあるのは人間の感情なんです。それを機械とアコースティックギターと歌詞で包んだのが「Ghost」。アルバムを象徴する曲だと思います。

◆インタビュー(2)へ
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