【インタビュー】メトロノーム、エレクトロ・ポップの最新形を提示する20周年記念作品『廿奇譚AHEAD』

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■今回は三人揃って“死”を意識している
■“まだまだやっていきますよ”と宣言するアルバムなのに(笑)


――7曲目の「夜空に舞う花弁」から「我が為に鳴くパンドラ」へと続くメトロノームならではのハイテンションな盛りあがりは必聴です。その後畳み掛けるようにハード&パンキッシュな「孤独氏」がくるという流れもいいですし。

シャラク:「孤独氏」は、シングル候補の選曲会のときに作った曲で、カッコよくて、売れそうな感じをイメージして作りました。選曲会に出したときに、別に深い意味があったわけではないみたいですけど、リウさんに「これって、この後また展開があるの?」と聞かれて。それで、やっぱり展開が少ないかなと思って、無理やりスカっぽくなるパートをつけたんです(笑)。

リウ:いきなりシュールな感じになるのがいいよね(笑)。

フクスケ:あのパートがあることで、よりインパクトが強くなっているし。

シャラク:ならよかった(笑)。「孤独氏」の歌詞は、自分がこうなりたいと思っている姿というのは、結局自分が動く事でしかなれないんだなということを歌っています。

リウ:「孤独氏」に関しては、今回アルバムの曲順を決めたのは僕なんですけど、曲を一通り並べて考えたときに、まず「血空」がリード曲としてあって、その次に「不安の殿堂」と「孤独氏」はすごくインパクトがあるから、どこに入れようかなと思って。いろいろ考えた末に「孤独氏」を9曲目に持ってくることにしたんです。そうすることで、絶妙な位置に強打者がいる感じのいい並びになったんじゃないかなと思います。

フクスケ:「孤独氏」は、ギター的にはリフでゴリ押す形になっています。シャラク君からデモが送られてくるときは、いつもギターはギターっぽい音の打ち込みでくるんですね。だから、この曲のデモを聴いたときは、“これは、どうやってギターで弾くんだ?”と思いました(笑)。最初は悩みましたけど、きれいに纏まってよかったなと思っています。


▲『廿奇譚AHEAD』<初回生産限定メト箱(CD+DVD)>


▲『廿奇譚AHEAD』<初回生産限定廿メト(2CD[CD-1]+[CD-2])>


▲『廿奇譚AHEAD』<通常盤(CD[CD-1])>

――「孤独氏」のギター・リフは、メタルも通っているギタリストならではのハードネスが光っています。さらに、10曲目に収録されているメロディアス&エモーショナルな「おやすみ世界」にも惹き込まれました。

リウ:こういうゆったりしたテンポ感の曲は、今までのメトロノームにはなかったんです。ミディアムとスローの中間くらいのテンポ感で、4つ打ちで、バンドメンバーにシンセサイザーを使う人がいるかのような曲を作りたいなというところから入っていった曲です。サビとかイントロのリードのシンセ・フレーズが出きたときは自分で気持ちよくなってしまって、何回も聴きました(笑)。歌詞は、自分たちは運よく音楽を続けられていますけど、志なかばで諦める人とか、亡くなってしまう人とかをいっぱい見てきて。自分たちは恵まれているなと思いながら、これからもがんばるぞという気持ちを書きました。

――根底に前向きな気持ちがあることで、“別れ”を描いた哀しい歌詞のようでいながら澄んだ味わいの歌詞になっていますね。

リウ:そう。タイトルから暗い歌詞をイメージする人が多いみたいだけど、この歌詞で僕が一番言いたかったのは、最後に出てくる人生について歌っている部分なんです。でも、タイトルに“人生”という言葉が入ったらマズいだろうというのがあって(笑)。それで、みんなのタイトルと合うように考えて、歌詞の中に出てくる言葉の中から響きのいい言葉をタイトルにしたんです。

シャラク:今思ったんですけど、今回は三人揃って“死”を意識しているという。“20年を超えて、まだまだやっていきますよ”ということを宣言するアルバムなのに(笑)。

フクスケ:ハハハッ! いや、さすがに、この歳になるとねぇ(笑)。

――大人のロックといえますね。

シャラク:えっ? それは、ちょっと意味が違う気が……(笑)。「おやすみ世界」は、この曲に限ったことではないんですけど、リウさんのメロディーとか符割りはとても難しくて。ゆっくりな曲だから余裕だろうと思っていたら、歌はそんなにゆったりしていないんですよね。実際に歌ってみたら難しくて、“おおっ?”となりました(笑)。

フクスケ:ギター的には、やっぱり一番最後のソロがとても気に入っています。途中のリズムを刻みながら上がっていくところは、実音とディレイの返り音が重なってハモリが増えていく感じのニュアンスに作れて、それがきれいにできてよかったです。

――「おやすみ世界」に限らず、今作のギターはよりエモーショナルになっていますね。

フクスケ:わかってもらえましたか?(笑) 再起動してから1枚目のアルバムを作ったときにも言いましたけど、休んでいる間にギターを弾くことが結構多くて、そこで得たものをメトロノームに持ってこれたというのがあって。今回のソロは、どれも気に入っています。プレイもそうだし、「主人公ルート」とかはアコギが鳴っているので、ソロの音はちょっとメロウな感じにして、鉄っぽいアコギの音との差をつけたんですよ。そういうふうに、音の面も考えられたのはよかったと思います。

――音といえば、「不安の殿堂」の“ブッシャァー!”としたエフェクティブな音も曲調にマッチしています。

フクスケ:この曲は8ビットに落とすエフェクターを使いました。ギターで、ファミコンっぽい音が出せるヤツ。そのエフェクターにはアルペジエイターもついていて、最後のほうで音が速くなっていくところはアルペジエイターのスピードを上げているんです。そのエフェクターは結構ノイズが激しいので、ライブで使うとPAさんに「そのエフェクター故障していませんか?」と言われて「いえ、それでいいんです」みたいな(笑)。あと、「血空」のソロもアーミングを多用した雰囲気ものというかトリッキーなソロだけど、歌っている感じになってよかった。ただ、ライブとかで動きながら弾くと、うまくできないんですよ。なので、この曲のソロはライブのたびに変わると思います。その場のフィーリングに合わせてアーミングするといい感じになる予感がしていて、それを楽しみにしています。

リウ:今回のベースで特に印象が強いのは、「主人公ルート」ですね。この曲はダウンロードしたデータを僕が紛失したのが原因なんですけど、ベースを録るのがすごく遅れてしまって、歌録りが終わってからベースを録ったんです。歌録りの後ということは、最終的なメロディーとか歌詞がわかっている状態。だから、よりベースラインを作り込めたし、感情を込めることができたんですよね。締切に追われて夜中にアップライト・ベースを弾いたんですけど、メロディアスなフレーズがいっぱい出てきました。それが、すごくよかったと思います。

――「主人公ルート」のベースは、絶妙の一言です。それに、冒頭で今作はロック感が強いと言いましたが、それはベースがよりパワフルになっていることも要因の一つという印象を受けています。

リウ:今回は、前よりも細かいパッセージが多くなっているんです。今までだったらルート弾きで埋めていたような場所も動いていたりするんです。それで、派手に聴こえるのかもしれない。シャラク君とフクスケ君は作曲するときに、ある程度自由にベースラインを弾けるところを残しておいてくれるんです。そういう意図も感じとりながら、フレーズを考えていきました。で、自信がないときは、「我が為に鳴くパンドラ」みたいに2パターン作るみたいな(笑)。


▲リウ

――フレージングに加えて、「素晴らしい世界」や「夜空に舞う花弁」「我が為に鳴くパンドラ」といったスラップをしている曲は、スラップにマッチするゴリゴリした音のまま1曲を通してブリブリ弾いていますよね。それも、強力にロックです。

リウ:なるほど。それは自然にやっていることで、狙ったわけではないです。ただ、「我が為に鳴くパンドラ」みたいにガラッとベースのアプローチを変えてしまうのもそうですけど、「素晴らしい世界」の頭は要所要所がキメになっているんですけど、キメから飛び出たスラップを入れてもOKが出たんです。そういう意味では、恵まれた環境にいることを感じますね。ベーシストの友達とかは、もっと弾きたいと思っている人が多い中、僕は結構自由に弾かせてもらっているから。

フクスケ:トリオバンドは全員が立っていないと成立しないですからね。だから、リウ君が派手なベースを弾くのは構わない…というか、いいことだと思っています。

シャラク:リウさんは他のパートの邪魔にならないようにしながら派手なベースを弾くしね。今回の歌に関しては、昔というか再起動前は、あまりビブラートをかけないようにしていたんです。ビブラートとかは、あまりいいと思えなかったから。それで、再起動してから最初に作った『CONTINUE』はできるだけ昔の歌い方を再現することに徹したんですけど、今回はせっかくいろんな声が出せたり、自分の中に引き出しがあったりするなら全部ぶっ込んじゃったほうがいいかなと思って制限するのはやめました。「不安の殿堂」が一番極端に、いろんな声詰め込んでいます。メトロノームの「ボヘミアン・ラプソディー」みたいな感じで(笑)。

――この曲の表情の幅広さは圧巻です。演劇的なボーカリゼーションも聴きどころで、女性も交えたコーラスなども……。

シャラク:いえ、この曲は女性の声は入っていません。全部、自分の声です。

――えっ、そうなんですか? ……やりますねぇ。

シャラク:実は、ああいうのも得意なんです。他の曲もそれぞれの楽曲に一番合う声やニュアンスを出すようにしたし、ビブラートをかけたほうがよければかけるし…というふうに歌っていきました。そこが、今までのメトロノームとの大きな違いになっています。

――その結果、よりエモーショナルなアルバムになっています。皆さんの意欲的なスタンスが実を結んで、『廿奇譚AHEAD』はメトロノームの新たな魅力を味わえる一作になりましたね。本作を携えて8月から9月にかけて行う全国ツアー『結成20周年全国巡業 ヤプー三神・巡礼【05→98→18 迄-7=20】』も楽しみです。

フクスケ:ツアーは“廿奇譚AHEAD=まだまだ続いていくよ”という意味合いをちゃんと表したいというのがあって。特に再起動後はライブで盛りあがる曲も多いので、お客さんも含めて一緒に“廿奇譚AHEAD”の世界に入っていけたらいいなと思います。それに、20周年を記念したツアーではあるけど、過去を振り返るだけではなくて『廿奇譚AHEAD』を軸に据えたライブをします。新しいアルバムを聴いてほしいし、新曲を楽しんでもらえる自信もあるし、なによりここで昔の曲に頼ったライブをしたら“AHEAD”という意味合いが薄れてしまうから。ただ、メトロノームのツアーは全会場セットリストが違うんですよ。なので、昔の曲もたくさんやります。ツアーを通してメトロノームのすべてをお見せするので、楽しみにしていてください。

シャラク:オイラは20周年ということは、あまり意識していなくて。今回もいつもどおりそれぞれの楽曲を、どれだけ忠実に再現できるかということに集中すると思います。なので、かなり表情豊かなライブになるんじゃないかなという気がしますね。あとは、僕はツアーを通して平均点が80点じゃなくて、毎回100点みたいなライブをすることを心がけているんです。1ヶ所しかライブにこれない人とかが観るライブが80点とかなのは嫌だなというのがあるので。だから、今回も全ヶ所のライブに全力で臨みます。

リウ:フクスケ君が新譜の曲を軸にするという話をしましたけど、再起動後に作った『CONTINUE』の楽曲はアルバム・ツアーでも大活躍したし、その後のライブでもコンスタントにやっていて。そうすることで新曲がお客さんの中でどんどん大切な曲になっていっていて、それはすごく嬉しいことなんですよ。そういう意味で、今回の『廿奇譚AHEAD』の楽曲もツアーを通して、お客さんにとって大切な曲になるといいなというのがあって。そうなるように、新曲の魅力をしっかりと伝えるライブを各地でしたいと思っています。

取材・文●村上孝之

リリース情報

NEW ALBUM『廿奇譚AHEAD』
2018.7.25 RELEASE
<初回生産限定メト箱(CD+DVD)>
¥5,000+税/KICS-93723
[CD-1]※3種共通
[DVD]弊帚トリムルティ&血空 [Music Video]
メトーク
(90分を超える20周年記念のスペシャル・トーク番組)
ミニ・フォトブック封入&メト箱(三方背BOX)付き
<初回生産限定廿メト(2CD[CD-1]+[CD-2])>
¥4,000+税/KICS-93724~5
<通常盤(CD[CD-1])>
¥3,000+税 / KICS-3723
[Disc-1]
01.廿奇譚AHEAD
02.血空
03.不安の殿堂
04.回游論
05.素晴らしい世界
06.主人公ルート
07.夜空に舞う花弁
08.我が為に鳴くパンドラ
09.孤独氏
10.おやすみ世界
11.弊帚トリムルティ
[Disc-2] (2018 年再録ベスト・アルバム)
01.誤sick
02.不機嫌なアンドロイド
03.ΦD-SANSKRIT
04.魔法
05.薔薇と紅蓮
06.僕が僕の為に僕を辞める僕
07.ねじ式
08.カフカフ
09.先生
10.MATSURI
11.PSYCHO-ENEMY
12.三つ数えろ
13.デリート
14.アクアリウム
15.青い鳥

ライブ・イベント情報

<結成20周年全国巡礼 ヤプー三神・巡礼[05→98→18迄-7=20]>
8月02日(木)仙台MACANA
8月04日(土)札幌KRAPS HALL
8月05日(日)札幌KRAPS HALL
8月06日(月)函館 club COCOA
8月11日(土)福岡DRUM Be-1 -シャラパ-
8月12日(日)広島SECOND CRUTCH
8月18日(土)大阪BIG CAT
8月19日(日)名古屋ElectricLadyLand
TOUR FINAL
9月01日(土)豊洲PIT -ヤプーが召喚された夜-

<ART POP ENTERTAINMENT PRESENTS『CRUSH OF MODE-PREMIUM HOT SUMMER'18-』>
7月29日(日)TSUTAYA O-EAST 出演:メトロノーム/筋肉少女帯

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