【連載】中島卓偉の勝手に城マニア 第74回「丸子城(静岡県)卓偉が行ったことある回数 1回」

ツイート

1回しか行ったことがないのにコラムを書かせてもらうのは恐縮だが、その初回見学に4時間近くみっちりと見学させていただいたことで隅から隅まで丸子城の魅力を堪能、まさに名城、この城をいち早く紹介しないわけにはいかなくなった次第である。かねてからずっと行きたいと思っていた城の一つであり、城マニアの評価は高い。私としてもここ最近来城した城でダントツに良かった。保存状態も素晴らしい。山を降りた瞬間にああもう一度行きたいと思わせてくれた最高の城である。ちなみに「まるこ」とは読まず「まりこ」と読む。私も10代の頃この名前の女子と2人付き合ったことがあるのでなんだか心が甘酸っぱい。


1400年代に今川氏が築城となっている。だが治めていたのは斎藤氏だったりして城主は何度か変わっている。注目すべき点は1568年に武田信玄公がこの地を治め、この城を改修し今の形が出来上がったということである。武田ファンにもたまらない城であり、武田らしい作りがとことん味わえるのである。戦国時代の駿河は(現在の静岡県)江戸と尾張に挟まれ、絶対に通らなければならない東海道に面した場所でもあったので誰もがこの地が欲しく常に戦が絶えなかった。徳川と今川、そして武田の領地の取り合いが繰り広げられていたわけだが、近所の城で言えば高天神城同様、丸子城も自分の城とするだけで戦い方は随分と変わる。なくてはならない場所に建てられた最高の城だったのである。

武田信玄公が亡くなり武田の勢力が衰え、そして傾き始めた1581年に跡を継いだ武田勝頼は無血でこの城を徳川家康に明け渡す。1590年まで城は機能していたが家康公の天下統一に向けての判断により廃城。静岡には良い城であっても廃城になった城がたくさんあるのである。その中でも私が特に好きなのはここでも紹介した諏訪原城(どっちかと言えばやっくん)高天神城(どっちかと言えばふっくん)そしてこの丸子城(多分もっくん)なのである。これを駿河のシブがき隊と呼びたい。


まず何と言ってもこの城の魅力は三つもある「三日月掘」であろう。武田の城に良くあるこの三日月堀だが山城に三つもあるということがぶったまげる。新府城は大手に一つ。諏訪原城こそ二の丸の前に三つあるが、諏訪原城は平山城なのでスペースがある分三日月堀を作ることは可能なのはわかる。丸子城が凄いのはスペースのない、奥行きすらない140メートルの山城の上に、そしてその城内に三つも三日月堀を作ってしまったということなのである。そんな無茶なと思うがこれがまた素晴らしい保存状態で残っているのだ。


登城口から登りまず大手に面した突如現れる三日月堀に痛く感動する。堀の深さ、土塁の高さ、綺麗な三日月のライン。元々は馬出しとして作られているはずなのだが曲輪の角を作らないデザインは、この形じゃなきゃいけないのです!という武田のこだわりが感じられる。まさに武田感が半端ない。武田感と言っても鉄矢の方ではない。縦長に伸びた城内の至る所に竪堀や横堀が設けられ、曲輪から曲輪の移動も毎回深い堀切が施されている。北の曲輪に残っている土塁の高さも凄く、城内からも外が見えないほどだ。ここは今川氏の頃の本丸だったとされる。現在の本丸は更に奥まで進む。山を切り開き、土を掘り、そして盛り、新しい曲輪を増築。どこを見ても絶対に攻められてはならないという戦国時代ならではの緊張感が感じられる。ちょいちょい出てくる虎口もあれば要害山城のように敢えて虎口にせずそのまま曲輪から曲輪に移動出来る門跡もある。本丸には食い違い虎口もある。家来たちの移動の道もしっかりと考えられた作りであり、空堀の中を移動していたことがわかる。堀切の深さを考えると曲輪から曲輪への移動、そして馬出しである三日月堀への移動には木橋が架けられていたことも見て取れる。土橋もいくつもあり、保存状態が本当に良い。

駿河湾側は主に崖になっており、天然の要害を利用した守りになっているが逆側の守りは凄まじい。堀も二重になっているし、土塁の上がいくつもの「コ」の字になっている場所もある、これは超お洒落だ。奥まったスペースに敵を誘き寄せ、横から撃つという仕組みになっている。まるでチャールズ・チャップリンの独裁者の戦争シーンのようだ。竪堀と横堀、家来が移動出来るために作られた掘が一気に交差する場所もあり、五差路になっている。ここも圧巻。目黒の蛇崩か!もしくは五本木の交差点か!ここまで敵を誘き寄せたら全方向から撃てる仕組みになっている。しかも堀切の先が崖になっているので突き落とすことも簡単に出来る。こんな山の中にこれほどの防御が用意されているとまず思わないし想像も出来ない。武田ならではの最高な防御システムに完敗、長渕剛には乾杯である。決して大きいとは言えない面積に、どちらかと言えば小さな城のはずなのに物凄いボリューム感がある。圧巻とはまさにこのこと。初来城はtvkのミュートマ2のロケだったが、この日は気温35度、うだるような暑さの中ひたすら興奮してタードクチンマーの10ホールで(ドクターマーチン)歩き回り両方の足をおもクソ靴ずれしてしまった。だがその痛みも気にならないほどの充実感であった。まさにお勧めの名城である。


丸子城の麓に駿府匠宿という和風な作りの最高な施設がある。喫茶店、お土産売り場、休憩所もあり至れり尽くせりだ。静岡県では普通かもしれないがペットボトルの本気の生茶がある。キャップを開けると茶っ葉が落ちてそこから初めて生茶が始まるという仕組み。上下に振ってシェイクシェイクブギーな胸騒ぎしてから飲む。そのままにしておくとしっかりと茶っ葉が下に落ちる。そもそも普通のペットボトルのお茶は茶っ葉が下に落ちないのでおかしいのだ。お茶は茶っ葉が下に落ちて初めて生茶と言える。これをこの日計3本も飲んでしまった。前は東京駅にも売っていたのを見たが最近は都内でも見なくなった。静岡ならではのペットボトルのお茶である。是非これを飲んで丸子城に登城してほしい。

これを丸子城の行き帰りに何本も買って飲んでいたら店員さんに笑顔で「更にもう1本ですか!」と言われて恥ずかしかった。何本飲んでも暑く、アイスキャンディーも売っていたのでそれを買って食いながら暑さを凌ぎロケのエンディングを撮影。するとその現場をジロジロ見てくるおそらく生粋の静岡県民で、静岡弁丸出しのおばさんがいた。通り過ぎる度に僕をジロジロと覗き込むように見ていく。でもわかってしまったのだ。僕はマダムキラーなのでこのおばさんは僕のことがタイプだったんだと思う。うん!そうそう!タイプだったのだと思う。目があうと何度もニッコリとされる。「これ何の番組だら?」と聞こえるように言う。話しかけたそうにするがカメラが回ると、「邪魔しちゃダメだら」的なことをモゴモゴ言いながら躊躇する。カメラの後ろを行ったり来たりしながら僕のコメントにいちいち頷いて、「そうだら~」的なことを言いながら笑顔でリアクションする。撮影が終わり、アイスの棒をゴミ箱に片付ける時、とうとうおばさんは、「今だら!ここで話しかけられるら!」と意を決して近寄ってきた。おばさんは言った。もう再来月40歳になる私に言った。もう完全に中年の私に言った。湯船に浸かると「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~!」と言ってしまう私に言った。朝起きると腰と背中と肩が終わっている40歳前の私に言った。

「僕~アイス美味しかった~?」

いくら何でもそんなガキじゃねえら。

あぁ 丸子城 また訪れたい……。


◆【連載】中島卓偉の勝手に城マニア・チャンネル
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス