MAGIC!、サウンドも歌詞もより自然体へシフトした最新作『エクスペクテーションズ』とは?

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カナダのポップ・レゲエ・バンド、MAGIC!の最新作『エクスペクテーションズ』が9月26日にリリースされる。2014年にリリースしたデビュー・シングル「ルード」が、結婚ソングとして記録的なヒットでも知られる彼らにとって通算3作目となる本作だが、アルバムをする紹介の前に彼らが歩んできた道のりを簡単に紹介したい。

MAGIC!は2014年にカナダで結成されたバンドで、ナズリ・アトウェ(vo)、マーク・ペリ(g)、ベン・スピヴァク(b)、アレックス・タナス(d)の4人組だ。ボーカルのナズリはMAGIC!としての活動する以外に、アダム・メッセンジャーとともにプロデューサー・デュオとしてジャスティン・ビーバーやシャキーラなどの楽曲制作を手掛けており、グラミー賞の受賞経験を持つ。


長年作曲家としてのキャリアを持つナズリを中心に結成されたMAGIC!は、「ルード」の予想外の大ヒットでポッと出てきたシンデレラ・ボーイというよりも、ポップ・マナーをわきまえた楽曲で、しかるべき評価を得たというのが正しいだろう。いずれにせよ先述した「ルード」は全米チャートで6週連続1位を記録し、その流れは世界へと波及。翌年にはマルーン5の北米ツアーのサポート・アクトを行い、二度目の来日時には初出演ながらサマーソニックのメインステージへの抜擢されている。

2016年には2ndアルバム『プライメリー・カラーズ』をリリース、同作収録のシングル「レイ・ユー・ダウン・イージー」ではレゲエ界のアイコンでもあるショーン・ポールをフィーチャーし、これがまた大ヒットを記録。同年に来日ツアーも行っている。

最新作『エクスペクテーションズ』は前作より約2年ぶりとなる作品。幸運にもデビュー曲がヒットして成功の道を突き進んだ彼らは、この4年間でバンドとして、ミュージシャンとしてのライフスタイルも大きく変化したはずだ。本作にはそんな変化とともに経験した、パーソナルな内容を語っている。そのことについてボーカリストのナズリはこう語る。

「今回のアルバムは僕の人生について多くを語っている。今、自分が経験していること、自分の恋愛、私生活。タイトルは『エクスペクテーションズ』っていうんだけど、僕が発見したのは恋愛関係の中では、お互い何かと期待してしまうことが多いってことなんだ。その題材はこのアルバムにもあるように色んなものがある。今回は初めてコンセプト・アルバムみたいな感じにすることを試みたんだよね。すべてがその関係についてのことなんだ」


アルバムに収録され、2018年6月にリリースされているファースト・シングル「キス・ミー」は、赤裸々に恋人へキスを求める歌詞が印象的だが、すでに1,800万回ものPV数を記録している。これは2009年からナズリが交際しているドイツ人のシンガーソングライター/女優のサンディ・モーニングのために書いたという。

「このシングルでは“contemplation(じっくり考えること)”について歌っているんだ。その中で“love is the only thing that we leave behind(僕たちの後に残るのは愛 ただそれだけ)”って言っている。それは、自分たち自身にフォーカスしないといけないっていう意味なんだ」


このように本作ではモーニングとの恋愛の押し引きをストーリー的に繰り広げる内容となっている。「キス・ミー」では愛を語るが、アルバムタイトル曲で、今後PVも公開予定の「エクスペクテーションズ」は相手の期待の大きさの不満を抱く気持ちを綴っているほか、「モア・オブ・ユー」はアコースティック・ギターの弾き語りで、恋愛の浮き沈みの“浮き”にフォーカスし、愛する人をもっと知りたいと歌うストレートなラブ・ソング。彼らしい抑制の聴いた歌でありながらも、これまでに以上に気持ちのこもった歌を披露している。ナズリはこの曲の歌い方についてと、またこの曲を書くときに秘めた思いをこう語る。

「こっちの方が僕の歌のスタイルに近いと思うんだ。だから僕にとっては、ああ歌うのが自然なことだったよ。僕の両親は中近東出身なんだけど……(アラビア語で)“バハ”って言うらしいんだけど、声の中にある呼吸みたいなものをそう呼ぶんだ。子供のころ父親によく“お前はバハを持って生まれたんだ。それは天から授かった宝物だよ”と言われたよ。それで、その呼吸法を使って、いつかはステキなバラードを歌いたいと思っていたんだ。でも、普段僕たちがやっているようなレゲエだと、もっとリズミックになるんだよね。

例えば「キス・ミー」なんかも“I’ve been thinking about my life〜”って歌うと、スティーヴィー・ワンダーみたいになるけど……「モア・オブ・ユー」はもっと僕にとってナチュラルな歌い方というか、ロマンティックな歌い方なんだよね。今後はもっとこういうのを歌いたいと思っているんだ。で、この曲はサンディを泣かせようと思って書いたんだ。で、実際聴いてもらったら泣き出しちゃったよ。でも、他の人も泣かしたよ。僕たちのマネージメントで働いているエミリーって人がいるんだけど、彼女も泣いていたね。だから結構色んな人が泣くんじゃないかな。すごくロマンティックな曲だし、アコースティックのステキな曲だから、バラードでの大ヒットを目指したいね」


ちなみにポップ・レゲエ・バンドとしてデビューを飾っている彼らだが、ナズリはこのバンドを結成してはじめてレゲエに触れているよう。その理由を“ちょっとレゲエで実験してみたかった”という。それもあって、本作は従来のポップ・レゲエ路線にとらわれず、よりモダンなポップス的な楽曲もあり、よりポップ・アルバムとしての幅を持った作風に仕上がっているのもポイントだ。これまでレゲエ=夏な印象を持っていた彼らだが、本作はバリエーション豊かなサウンドとともに、歌詞の面でもパーソナル性を覗かせた作品。そういった意味でもポップ・レゲエの足かせをみずからはずし、ポップ・バンドとして飛躍する一枚になりそうだ。ナズリが本作に込めた思いで本稿を締めくくりたい。

「このアルバムを作ったことで彼女とも、前よりずっと良くなったよ。今は子育てやプレッシャーとかのバランスの取り方をふたりで学んでいるところなんだ。あと、僕は仕事を家に持ち込まないことを学びつつあるよ。スタジオに20年間もいて、頑張って、夢が叶っていくのを目の当たりにして、その6ヶ月後には子供が生まれた。だから今の僕には子供たち、それに彼女と過ごす時間が必要だ。彼女の家族や、僕の家族ともね。その調整が段々うまくなってきた気がするよ。それと、レゲエにこだわりたくないのは、もともと僕は夏っぽいカルチャーの人間じゃないから(笑)。

そういうキャラになろうとしたこともあるけど、僕はやっぱりディープなソングライターなんだ。そして、子育てをしている普通の人間なんだよ。僕も毎週日曜日になるとビーチに行って遊ぶし、自分の世界のバランスを取るようにはしているけど、これから死ぬまで花柄のシャツを着てステージに立ち続けたくはない(笑)。でも、「キス・ミー」のビデオは既に1,700万回ビデオが再生されているから(編注:8/22インタビュー当時の再生回数)、僕の決断は絶対に間違っていなかったと思うよ」

文:伊藤大輔


『エクスペクテーションズ』

2018年9月26日(水)発売
(9月7日配信)
13曲+ボーナス・トラック1曲収録/¥2,200+税/SICP-5844/通常盤/歌詞・対訳付き
■収録曲
1. エクスペクテーションズ
2. コア
3. モア・オブ・ユー
4. キス・ミー
5. アプリシエイト・ユー
6. アイズ・ドント・テル・ライズ(インタールード)
7. ダーツ・イン・ザ・ダーク
8. モーションズ
9. スペース(インタールード)
10. ハウ・ドゥー・ユー・リメンバー・ミー
11. シングス・ユー・セイ
12. ウェン・ザ・トラスト・イズ・ゴーン
13. ア・リトル・ビット・オブ・ラヴ
ボーナス・トラック
14. キス・ミー(アコースティック)

◆MAGIC! オフィシャルサイト(ソニーミュージック)
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