【インタビュー】wyse、手塚アニメへの愛とコラボ作品を語る「後世に自慢できる一生もの」

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■「なぜヒカリという言葉を選んだのですか?
■ピッタリの言葉です」と手塚さんが

──では、お願いします。3作品に収録されている曲は全てTAKUMAさんが作詞作曲を手がけていますが、これは最初から決まっていたんですか?

TAKUMA:決まっていたわけではないんですが、自然とそうなりました。3作品共通の表題曲が「ヒカリ」で、例えばカップリングはMORIやHIROのオリジナル曲が入っていてもいいんですけど。

HIRO:そういう作り方もできたんですけど。

TAKUMA:例えば、コラボではないwyseの新曲や旧曲が入っていてもいいけれど、それだとコラボさせていただく意味がないと感じるようになって、それぞれの手塚作品のテーマや世界観を自分たちのフィルターを通して楽曲で表現することにチャレンジしようということになったんです。HIROの言うプレッシャーはすごくありましたけど、逆にいうとすごくやりがいがあるし、何をすべきかが明確に見えていたので。

▲TAKUMA(Vo&B)

──ということはメンバーとのやりとりをはじめ、いつもと作り方が違ったわけですね。

TAKUMA:そうですね。表題曲の「ヒカリ」を含めてwyseの曲ではありますが、wyseとしての新曲を作るというよりも「こういうテーマを元に曲を作ってみたんですけど、どうでしょう?」っていう。

──手塚治虫ファンも手にとってくれる可能性があるシングルですものね。

TAKUMA:そうですよね。先日、手塚るみ子さん (手塚治虫氏の長女であり、手塚プロダクションの取締役)と対談して、いろいろお話させていただいたんですが、作品のテーマを背負って曲を書くというより、僕たちが思うイメージを表現して、聴いていただいた時になにかピンとくるものがあったり、繋がるものがあったら嬉しいなという想いはあります。20年前には僕は高校生で手塚さんの作品とコラボする未来が来るなんて思いもしなかったんですけど、そう考えるとこれまでの月日がこの作品を作るための準備だったのかなと思えるぐらい。そういう意味でもスイッチが入って「やるぞ!」という気持ちになったし、これまでやってきたことをフルに活かして、wyseらしいかどうかよりもwyseが作る手塚さんとのコラボ作品としての、一つの答えを目指したい気持ちがありましたね。

──表題曲「ヒカリ」には“10年前の僕等が 今を描けなかったように 想像するそのさらに 向こうへ歩いていこう”という歌詞が出てくるので、TAKUMAさんが今言ってくれたことと通じていますね。

TAKUMA:コラボが決まったその時くらいから、タイトルは「ヒカリ」に決めていたんです。

──ちなみにその理由は?

TAKUMA:僕たちが生きている世界は光だけではなく、対極にある影があって成立していると思うんですね。例えば近くにいる誰かが影の世界に居続けてしまっているなら、どうにかその人の為に、その人を照らせる光になってあげたい。自分自身はどちらかというと影のサイドの人間なので努力をしないといけないけれど、その人の為でなら僕はその努力をしてでも光となって照らしたり、導いてあげたい。その結果、その影から抜け出せたならば、今度は光と光とでは共存することはできないから僕が影になって、その人がより輝けるうように、という精神論が自分の中にあるんですが、そういう光と影に通じる世界観が手塚先生の作品にあるんじゃないかと思ったんです。なので、僕にしては珍しくタイトルは最初から「ヒカリ」に決めていました。

HIRO:曲もできてないのに「ヒカリ」だって言ってて(笑)。

──捉え方としては、表題曲「ヒカリ」に手塚作品全体に通じるテーマがあるということなんですか?

TAKUMA:手塚さんの作品がそうだとは僕は言える立場にはいませんが、僕たちなりに感じ、繋がったものがそうであれば、それは嬉しいことだなと、そう思っています。手塚るみ子さんも曲を聴いて、今回の3作品以外でも手塚先生が描かれてきたものの核と通づるものがあるとおっしゃってくれて。

HIRO:手塚先生は戦後の暗闇の時代を過ごされて、復興に向かっていく中、街の灯りが1つずつ点いていく様を見て「僕はこれを描く」って漫画家を目指されたそうなんですよ。なので、「なぜ“ヒカリ”という言葉を選んだのですか?」と向こうからおっしゃってくれて。

TAKUMA:ありがたかったですね。

HIRO:「ピッタリです」っておっしゃってくれて。

▲鉄腕アトム Disc「ヒカリ / 僕のヒーロー」

──聴かせていただいて、どの曲も素晴らしいですが、「ヒカリ」はメロディラインがいちばんwyseらしいと感じたんです。

MORI:コラボのいちばんのキーワードが“ヒカリ”だったので、演奏にしてもwyseらしい色に落とし込みやすかった曲ですね。手塚作品のファンの方たちにとってはwyseに出会うスタートラインになる楽曲だと思うし、アトムが入り口になってくれることはすごく大きいですね。

HIRO:最初に原曲を聴いたときはコラボすることが決まったからこそ、生まれた曲なのかなって思いましたね。「wyseの新曲、作ります」「どういう曲にしようか」って話してできる曲じゃないなって。原曲の時点ではタイトルと曲だけだったんですけど、歌詞がなくてもメッセージが伝わってきて、ギターのフレーズもすぐに浮かびました。僕自身、「ヒカリ」がいちばん好きなので、「wyseらしいね」って言っていただけるのは嬉しいです。自分たちの中では“らしさ”は意識していなかったので。

──ギター録りにもいつもと違う意識で臨んだんですか?

HIRO:そうですね。原曲から受けとったイメージを崩さずにシンプルに。それは今回の4曲に通じることかもしれない。曲に込めた想いをそのままトレースする形で弾けたらいいなって。余計なことは一切してないです。

TAKUMA:トゥルトゥルトゥルとか?(笑)。

HIRO:僕の色は出さない。

TAKUMA:ギターソロでちょこっとだけ出てくる(笑)。

──ははは。控えめな速弾きが?

HIRO:でも、短くしてます(笑)。

──ギターに対するアプローチというところで同じくMORIさんは?

MORI:僕は自分が得意なことをやってますね。楽曲に沿うという意味でいったらそういうギターがスッとハマってくれた曲なので、プレッシャーというよりも「楽しいな」って。

月森:「ヒカリ」に関しては、タイトルを聞いたときにポジティヴな印象を受けたのと手塚プロとのコラボの表題曲なので、“がんばっていこうぜ”っていうわかりやすいものになるのかなと想像していたんですけど、そうではないなと。曲を聴いて幸せの絶頂にいる人より、辛かったり悲しい経験をしてきた人のほうが希望が見えるし、望むんだろうなと思ったので、いろいろなことがあったからこういう声になって、こういう歌になるんだろうなって感じられるものにしたいと思って響きや息遣いに気を配って歌いました。今の年齢だから歌える「ヒカリ」があると思ったので。

──いつもと違うプレッシャーはありましたか?

月森:うーん、手塚ファンが聴いてくれるかもしれないと考えたらプレッシャーですけど、これを機会にwyseをガンガン押していろんな人たちに知ってもらいたいという気は全然なかったんですよ。4曲の中では「ヒカリ」はいちばんwyse寄りかもしれないですけど、今回はコラボということが大事だったので、全曲、wyseらしくて同時にらしくないことをやっていると思います。

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