【インタビュー】ZIGGY、『ROCK SHOW』完成「スポットライトを浴びる覚悟を持てるか否か」

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■パブリックイメージとのギャップというか
■違和感を味わってもらうことを優先した

──あくまで音楽的なファクターとしてL.A.メタルの手法を使っているわけですよね。面白いのは、当時のあの種のバンドの楽曲というのは“いかにも”なリフがあって、その上にすべてを構築していたのに対して、この『ROCK SHOW』における楽曲のいくつかというのは、おそらく最終的な落着点としてそうしたリフを当て嵌めることで完成していると思われる部分があることで。

森重:そう。ただ同時に、自分のなかでリフ作りが流行っていたというのもあって。というのも、たまたま家に置いてあるポール・スタンレー・モデルのギターをドロップDチューニングにしてたのね。で、いろいろとリフを作っていくなかで、そういえばモトリー・クルーの『モトリー・クルー』というアルバムでのリフのテイストが全体的に似てるんだよな、と気付かされて、それを狙ってみようかと思った。リフ感に共通性のあるものに自分のメロディを載せてみようか、と。

──なるほど。それはモトリーの、ジョン・コラビ時代の唯一のアルバムですよね。

森重:うん。俺、ヴィンス・ニールのたたずまいは好きだけども、シンガーとしてはジョン・コラビのほうが超好きだから。すごく彼は歌がいい。ああいうふうに歌えるんだったら俺はああいうタイプのバンドをやろうとしたんじゃないかな、と思えるくらい。俺はあそこまでダーティじゃなくてメロウなところがあるから、こういう音楽を作っているけども。ああいうちょっとブルーズ寄りというか、オールドスクールな歌唱法で歌えるジョン・コラビがいることを前提にしたヘヴィでダークなリフ感が、あのアルバムにはあった。ただ、そのまま同じことをやろうとは思わないし、そこにもっとキャッチーでわかりやすいメロディを盛り込んだものじゃなきゃ、俺がやる意味はないと思ってるから、そこは当然のように強く意識してましたね。同時に今回は、ライヴでシンクロさせるものを流さないで、バンドだけでやりくりできるものを作ることにすごく意味があるんじゃないかと思えた。だから過度な重ね方はしていないんですよ。いつもコーラスを被せ過ぎになりがちな傾向にある俺が、今回はちょっと踏みとどまってるというか(笑)。ギターソロもいつもよりちょいデカめに目立つようにしたかったし、ドラムのフィルだったりベースのイントロだったりにもちゃんとフォーカスがいくようにして。ライヴをイメージした時に、“ここではドラムにスポットが当たってる”というのが見えてくる部分というのがあるじゃない? それをサウンドから感じてもらえるようにしたかったんです。

──そういうことを、肩書き上はサポートメンバーとされている人たちと一緒にできている、というのがとても素敵なことだと思います。バンドがなかなかできずにいることを。

森重:うん。ただ同時にね、今にして思えば、かつて3人だったZIGGY、2人だったZIGGYにおいてそうした部分を補完してくれていたのは、やっぱりゲストとかサポートとして参加してくれた人たちだったし、要は常にバンドだったんだよ、作り方としては。ZIGGYがずっとそれをやってきたからこそ、俺はこうして1人という形をとることに何ら不安がなかったわけだよね。対外的な部分でめんどくさそうだなと思える部分はあったけど(笑)、音楽的なところで不安がなかったのは、かつてもそうだったように音楽に愛情をもった人たちとやれば絶対にできるから、という確信があったからこそ。そういう意味ではZIGGYは、常にサポートメンバーに恵まれてきたバンドだしね。手前らの力だけでやってこれたなんて、ちっとも思えちゃいないよ。

──実際、とてもバンド然とした空気が作品自体にもあるし、今作からのビデオクリップもバンドでの演奏シーンだけで作られています。しかも曲は、いちばん派手でキャッチーな曲というわけではない「この夜の向こうへ」。

森重:それは当然、そういう部分を強調したかったのと、いちばんポップなものをシングルとかリードトラックにしたくないというのが相変わらずあるからで(笑)。だから、まず「この夜の向こうへ」を選んだんです。

──敢えて「WONDERFUL FEELING」ではなく。

森重:ああ、ZIGGYはやっぱりこうなんだよね、というある種の予定調和感があると思うんです、そっちを選んでいたら。ある意味、ファンにとっては安心材料にもなり得る曲だと思うけど、むしろ一瞬でいいからちょっと違うものを与えたかった。たとえば街頭のヴィジョンでちょっと流れた時に、“あれ? 今のってZIGGY?”というちょっとした違和感を。それを意識した選択にはなっているかな。それこそ当初はストレートに「ROCK SHOW」でビデオを作ろうかという話もあったんだけど、曲がちょっと短いというのもあってね。そこで、それこそ俺がYou Tubeで “11の挑戦”企画をやったのと同じことで、いわゆるパブリックイメージとのギャップというか、違和感を味わってもらうことを今回は優先してみたんです。

──しかもそうしたちょっとした違和感を、音楽自体から出そうとしているわけではない。

森重:うん。要は興味を持ってもらうためにはある種の違和感が有効なんじゃないかと思えるけども、音楽自体を継続的に聴いてもらうため、リピーターになってもらうためには、そういう仕掛けだけでは駄目だし、いわばカッコいいとか悪いとかすべてを超えたところにある本質的な“これ、いいよね、染みるよね”みたいなものを作っていきたいしね。そこで、どういうものだったら自分自身は聴いていてグッとくるのか、というのはやっぱり常に思うことだし。

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