【インタビュー】リチャード・カーペンター、オーケストラ・サウンドを加えヒット曲に新しい息吹

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■オーケストラ用にアレンジし直したただけでなく
■オーバーチュアから書いて全部の曲を繋げている


──アルバムはアビーロードスタジオでオーケストラの指揮をされながらレコーディングされたのことですが、どういった雰囲気で進められたんでしょうか?

リチャード:すごく緊張したし、すごく深い経験だった。スケジュールを調整するのは大変だし、自分が求める演奏を大人数のミュージシャンから引き出さなければならないので、本当にずっと緊張はしていたよ。仕事の量も多いので精神的にもけっこう大変だったけど毎日本当に楽しみで、「明日もまたスタジオに行くんだ」ってすごく充実した日々だった。頭の中に描いているものと、実際にそれが音になって聴こえてくるのは全く別もの。でもそれを体験するのは本当に楽しかった。


──サブ・プロデューサーのニック・パトリックさんとの作業は?

リチャード:ニックは本当にいい人なので、一緒にいてくれて楽しかったし、すごく才能のある人だと思う。特に今のテクノロジーだからできることっていっぱいあって、僕は自分でレコードをしばらく作っていなかったから、きわめて伝統的なレコードメーカーなわけだよね。それが今回、ニックとのレコーディングの過程で、「こういうふうにすれば今のテクノロジーではこういうことができるんだ」ということをわりと早く体得できたと思う。だから今だったら一人でできるかもしれない(笑)。そのへんをアシストしてくれたのがニックだったんだ。

──アルバム全体に流れを感じました。前の曲を引き継いで次の曲が始まる流れが、ミュージカルのような映画的に作られていると思いましたが、そのあたりは意識されましたか?

リチャード:今回のほかのアーティストのシリーズとの大きな違いがそこだと思うんだ。僕は、オーケストラ用にアレンジし直したただけでなく、オーバーチュアから書いて全部の曲を繋げている。ほかの作品とはそこが違うところかな。サントラ的だとかミュージカル的というのは、自分では意識していなかったんだよ。言われてみたらそうだね。イントロがあって曲が始まって曲間があって次の曲に行くのではなく、全体が流れていく。その感じはサウンドトラック的だと言えるね。


──何曲かポイントをお聞きしたいんですが、「ふたりの誓い/FOR ALL WE KNOW」のイントロがアコースティックギターから始まるのにちょっとビックリしたんですが、この曲のアイディアは?

リチャード:そもそも前の曲「青春の輝き/I NEED TO BE IN LOVE」のキーがAで「ふたりの誓い/FOR ALL WE KNOW」のキーがGなんだ。だからキーを変えなきゃいけないんだけど、不自然に無理やり変えて繋ぎたくない。ここはけっこう時間をかけて作ったアレンジなんだけど、アコースティックギターでやってみたらいいんじゃないかなとひらめいて、ギターのティムに来てもらってやった結果がすごく良かったんだ。だから、「じゃあ、“スーパースター/SUPERSTAR”でもやってみようか」って。オリジナルにはギターが入ってないし、必要とは思っていなかったんだけど、上手い人の演奏を聴くとやってみようかと思うものなんだなと。


──もう一つ、「涙の乗車券/TICKET TO RIDE」でよくわかるんですが、ドラムのシンバルの音がかなり違うんじゃないかと感じたのですが、ドラムは全体に音質も変えていらっしゃるんですか?

リチャード:ステレオで録り直したんだ。「イエスタディ・ワンス・モア/YESTERDAY ONCE MORE」のタムタムもステレオになっているんだよ。1969年の1stアルバムの頃は贅沢だったんだけれど、まだ8トラックしかなかったからね。それで作ったものなのでエンジニアと喧々諤々やりながら「これを録ったら、あっちが消えちゃう」ってやりながら録った曲だから、ヴォーカル重視でやらざるを得なかったところもある。「イエスタディ・ワンス・モア/YESTERDAY ONCE MORE」もそうだけれど、「遥かなる影/(THEY LONG TO BE)CLOSE TO YOU」のピアノや、「涙の乗車券/TICKET TO RIDE」のアコースティックの部分、みんなモノラルだったものを今回、ステレオに変えているんだ。それによって、オケを入れる前の段階でステレオにしただけでも元の音源がかなり膨らんでいたということになるよね。音的に。

──なるほど。だから、かなり印象が違って聴こえたんですね。

リチャード:当時は、ストリングスセクション全部でワントラックしか使えなかったんだ。ブラスやバックボーカルでさんざんトラックを使っちゃってたから、エンジニアに「何かあきらめてよ」って話になって、仕方がないからストリングスはまとめてワントラックっていう。よく聞き分けられたね?

──そうですね。とにかく40年間、聴きこんでますから。

リチャード:まさにそこだよね。これはロイヤルフィルを入れたというだけの企画ではないんだ。それ以前の段階で僕らにできることがいっぱいあったということなんだよね。

──最後に「プリーズ・ミスター・ポストマン/PLEASE MR.POSTMAN」が日本語版のボーナストラックで入っているんですよね。日本以外の人たちはかわいそうですね。

リチャード:オーッ(笑)。たぶん文句言ってるんだろうな。

──日本のファンにメッセージを。

リチャード:ホントにずっとついてきてくれて感謝しているよ。おかげさまで、来年はもう結成50年。ここまで応援してくれたときにとにかく感謝しています。

取材・文●森本智

リリース情報

『カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団』
Carpenters “Carpenters With The Royal Philharmonic Orchestra”
2018年12月7日(金) 全世界同時発売
CD品番: UICY-15801  価格: 2,500円(税抜価格)+税
1. オーヴァーチュア OVERTURE
2. イエスタデイ・ワンス・モア YESTERDAY ONCE MORE
3. ハーティング・イーチ・アザー HURTING EACH OTHER
4. 青春の輝き I NEED TO BE IN LOVE
5. ふたりの誓い FOR ALL WE KNOW
6. タッチ・ミー TOUCH ME WHEN WE’RE DANCING
7. アイ・ビリーヴ・ユー I BELIEVE YOU
8. 想い出にさよなら I JUST FALL IN LOVE AGAIN
9. メリー・クリスマス・ダーリン MERRY CHRISTMAS, DARLING
10. ベイビー・イッツ・ユー BABY IT’S YOU
11. 遙かなる影 (THEY LONG TO BE) CLOSE TO YOU
12. スーパースター SUPERSTAR
13. 雨の日と月曜日は RAINY DAYS AND MONDAYS
14. マスカレード THIS MASQUERADE
15. 涙の乗車券 TICKET TO RIDE
16. 愛にさよならを GOODBYE TO LOVE
17. トップ・オブ・ザ・ワールド TOP OF THE WORLD
18. 愛のプレリュード WE’VE ONLY JUST BEGUN
日本盤ボーナス・トラック
19. プリーズ・ミスター・ポストマン PLEASE MR. POSTMAN
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