【インタビュー】トライ・ステイト・コーナーのブズーキが鳴り響くハードロックとは?

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ギリシャの伝統楽器ブズーキを採り入れたハードロック・バンド、トライ・ステイト・コーナーが、2019年2月に来日公演を開催する。初来日となる公演を控え、レイジのドラマーでありトライ・ステイト・コーナーではヴォーカルを担当するヴァシリオス“ラッキー”マニアトプロスに話を聞いた。



──トライ・ステイト・コーナーのニュー・アルバム『ヒーロー』が日本でも発売となりました。これはどのようなアルバムだと言えますか?

ラッキー:『ヒーロー』は俺たちの5枚目の作品で、バンドとしてはもう15年目になる。ここに至るまで、ブズーキなどの素晴らしいオリエンタルな要素とハードロックをどのようにミックスするのかをずっと探って来た。それがこのアルバムではうまくまとまったと思う。アルバムを聴いた人は、このバンドのやりたいことがわかってくれるんじゃないかな。このアルバムは3部作の最終作でもあって、6~7年かけて続けて来たストーリーの結末であり、バンドとしての完成型でもあるアルバムなんだ。

──その3部作のコンセプトはどのようなものですか?

ラッキー:3部作は、2011年の『Historia』というアルバムからスタートしたのだけど、これは1960年代初頭の移民の話でね、故郷を離れ外国を目指し、戦争や経済状態のせいで祖国では成し遂げられなかった愛や成功を見つける人たちの話なんだけど、俺たちの両親の実話に基づいているんだ。ギリシャ人の両親をはじめ、当時の移民はみんな何かを成し遂げるためにドイツを目指したんだ。両親の時代はとても大変だったんだよ。彼らの素晴らしくクレイジーなストーリーをアルバムのコンセプトの中心にしたんだ。続く2作目『Home』では、現在の俺たちの様子をテーマにした。両親たちが移住をした結果、現在の俺たちが今、外国の地でどんな困難に直面しているのか。2つの異なった文化の狭間で生きるとはどういうことなのか、異なった言語の中で暮らすとはどういうことなのか。そして、俺たちが世界をどのように見ているかを描いている。そして3部作の最後となる『ヒーロー』のテーマは未来。つまり、歴史、現在、未来という構成だね。世界はこの先どうなり、どう発展していくのか。俺たちは、経済のことばかりではなく人間のことを考えるべきだ。数字や機能ばかりに捕らわれるのではなくね。『ヒーロー』というタイトルだけど、実際にヒーローがいるというわけではない。ヒーローはそれぞれの内面に存在しているんだ。世界をより良いものにしていくためのヒーローがね。

──トライ・ステイト・コーナーの音楽は、ハードロックとギリシャの音楽を混ぜたものですか?それとも、トルコやアラブの音楽なども射程に入っているのでしょうか。


ラッキー:とても良い質問だね。こういう質問は大好きさ。たいていブズーキというギリシャの楽器にばかり焦点が当たるからね。そもそもブズーキは、トルコも含まれていたビザンティン時代の楽器なんだ。俺はトルコ音楽も大好きだよ。モロッコやチュニジアといった国々でも、似たような楽器が使われていた。だから俺は、自分の音楽をグリーク・ハード・ロックとは呼びたくない。これはオリエンタルな影響を受けたハードロックなんだ。俺が大好きなバンドのひとつにMyrathがいるけど、チュニジア出身の彼らも俺たちと同じ考えを持っている。つまり、彼らはチュニジアだけではなく、モロッコやアルジェリアやトルコ/ギリシャの音楽にも目を配っている。これらの国々の音楽には、共通したオリエンタルなスタイルがあるからね。

──トライ・ステイト・コーナーというバンド名は、どのような意味ですか?

ラッキー:"Tri State Corner"というのは、英語で3つの国が接するポイントという意味なんだ。例えばヨーロッパではドイツ/オランダ/ベルギーが同時に接しているポイントがある。アジアにもあるはずだよ。ロシア/モンゴル/中国とか。俺たちは、ドイツに住んでいるギリシャ人とポーランド人ということで、このバンド名にしたんだ。3つの国がひとつのスポットに集まっているという意味でね。

──トライ・ステイト・コーナーのブズーキ・プレイヤー、イオアニスとは兄弟なんですよね。

ラッキー:そう、兄だよ。彼はただ兄貴というだけでなく、俺にとっては親友で、最高のミュージシャン、そして世界で最高の人間だね。

──あなたの音楽的バックグラウンドは?どのようにして音楽の道に入ったのでしょうか。

ラッキー:これは少々興味深い話だよ。親父はミュージシャンで子供達も音楽学校に通わせていたんだ。だけど子供は音楽学校なんて行きたくなくてね、外でサッカーをやりたいものさ。6~7歳の頃は無理やり音楽学校に通わされて、音楽の基礎を学ばされた。嫌だったけど選択権はなかったし、楽しくなかった(笑)。ところが2~3年も続けていると音楽の楽しさというものがわかり始めた。そして兄貴は、父親が望んだようにギリシャ音楽の道を進み始めたんだ。ギリシャ音楽に自分の世界を見出したんだよ。だけど、俺は違った。俺はロックが好きになってね。アイアン・メイデンやスレイヤーとか。それで、兄貴と俺はまったく別の道を歩んでいたのだけど、結局一緒にトライ・ステイト・コーナーをやることになったんだ。俺は14歳の頃、レイジが大好きだった。部屋にポスターを貼りまくって、彼らのライヴを観るために、親父に200~300kmも離れたところまで連れていってもらうほどのファンだった。当時コンサートの会場で、たまたまクリスと話す機会を得て、直接「ドラムを教えてください」ってお願いしたんだ。俺たちはそうやって知り合った。それでクリスが7年ほどレッスンをしてくれた。俺はレイジのドラムテックもやってモーターヘッドやサクソンなどともツアーをしたよ。俺は15歳か16歳だった。そして30年後、俺がレイジのドラマーで、クリスが俺のバンドのドラマーなんだからクレイジーだよね。トライ・ステイト・コーナーは、ただのバンドじゃないよ。俺たちは友達であり家族であり、お互いが大好きで、リスペクトもし合っている。

──ハードロックやメタルに限れば、影響を受けたバンドというのは?

ラッキー:一番大きな影響はドリーム・シアターだね。彼らは様々な音楽を採り入れたとてつもない才能を持ったバンドさ。彼らのライヴは27回も見たことあるよ。それからラッシュからの影響もある。俺はレッド・ツェッペリンやレインボー、イエス、ラッシュ、ナザレスなんかを聴いて育ったんだ。メタルに関しては、俺はジューダス・プリースト・ボーイだった。メタリカやメタル・チャーチ、フロットサム・アンド・ジェットサムとかも大好きだった。ロニー・ジェイムス・ディオ、ブラック・サバスとかね。子供の頃はこういう音楽を吸収する以外のことは何もしていなかったほどさ。


──2月に開催される日本での初ライヴはどんなものになりそうですか?

ラッキー:俺たちにとって初めての日本でのライヴだから、どのような見せ方をするのがベストかを考えているんだ。みんな俺たちのことを知らないだろうからね。俺はレイジのメンバーだし、クリスがドラムを叩いているということで、どういうバンドなのか調べている人はいるかもしれないけど、ほとんどの人は俺たちの音楽を聞いたことがないだろう?だけど、反応を伺ってライヴをやるのではなく、俺たちの旅へと誘うようなステージにしたいと思っている。45分間の、これまで体験したことのないような旅になるよ。

──では日本のファンへのメッセージを。

ラッキー:日本のファンのみなさん、俺はレイジのメンバーとして3度日本に行っているけれど、俺のバンドであるトライ・ステイト・コーナーでまた日本に行って、みんなと時間を共有できるというのは、最高に名誉なことだ。俺に親切にしてくれてきた人たちにありがとうと言いたい。あの美しい国に行って、またみんなに会えるのを楽しみにしているよ。Stay tuned and see you soon!

取材・文:川嶋未来
写真:TimTronckoe


トライ・ステイト・コーナー『ヒーロー』

2018年12月21日 発売
【CD+日本盤限定ライヴCD】 GQCS-90658~9 / 4562387208081 / ¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
01.フォーチュン・イン・ライズ
02.トゥモローランド
03.デイドリーマー
04.セイヴ・マイ・ワールド
05.フォロー・ミー・ブラインドリー
06.ダウンフォール
07.ヒーロー
08.ヴォイセズ
09.ブレイキング・ニュース
10.ウォンテッド
11.イン・ザ・ブリンク・オブ・アン・アイ
日本盤限定ライヴCD
01.ファスター
02.ナッシング・アット・オール
03.フリー・プリズン
04.スーナー・オア・レイター
05.スリープレス
06.カピア・スティグミ

【メンバー】
ヴァシリオス“ラッキー”マニアトプロス(ヴォーカル)
クリス・エフティミアディス(ドラムス)
イオアニス(ブズーキ、ヴォーカル)
ブラット(ギター、バッキング・ヴォーカル)
マルクス(ベース)

<REFUGE JAPAN TOUR 2019(SPECIAL GUEST : TRI STATE CORNER)>

2月19日(火)大阪:梅田クラブクアトロ
2月20日(水)名古屋:ボトムライン
2月21日(木)東京:TSUTAYA O-EAST
OPEN 18:00 / START 19:00
前売チケット:スタンディング 8,500円(税込)(※ドリンク代600円別途)
東京音協 https://ameblo.jp/tokyoonkyorock/

◆トライ・ステイト・コーナー『ヒーロー』レーベルサイト
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