【インタビュー】yohiaco、Eins:Vierの浩文と佳嗣が語る「バンドでは得られない気づき」

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■3分で終わる人には理解できない
■願いと信念だけはしっかりと持ってる

──全曲を通して共通しているのは、アコースティックギターの弦の擦れる音や息遣いまで感じられる生々しい仕上がりということです。

浩文:それがこのユニットの根本です。アコースティックギターと歌でベーシックを固めるということは、ライヴも音源も変わらない。だから、レコーディングでもライヴのようにストレートに思いっ切り歌ってます。「月光」とかテンポが遅めのリズムが入っていない曲は、歌うのが難しいんですよ。

──こういう曲って技術が必要ですよね。スローテンポなアコースティックチューンは、年輪を重ねないと出来ない業で。

浩文:そもそもアコースティックがいいって感じるのも年齢的な部分が大きいと思うんですよ。聴く音楽もそういうものが増えましたし。若い頃はアコースティックに全然興味がなかったですからね。なんか勉強にもなります。バンドでは得られない気づきが、演るたびにあるから。

▲yohiaco

──余計なものを削ぎ落としたシンプルなものだから、ごまかしがきかないですもんね。メロディーの豊かさ、ギターのひとつひとつの音に表情が如実に表れる。だからこそ、技術や経験が必要だし、2人の呼吸が合わないとできない。

佳嗣:そうかもしれないですね。ライヴを観てくれた人に言われたことがあるんですけど、2人のタイミングの合い方が絶妙らしいんですよ。あいだにブランクがあるにせよ、もう何十年と一緒にやってるので。

浩文:合わせにいかなくていいっていう。むしろ、クセが強くて練習しないと合わないだろうなみたいな部分こそ、普通にタイム感が合うみたいなところがあるんですよ。

佳嗣:ダテに長くやってない(笑)。そういう呼吸みたいなものも、聴いてくれる人には伝わるんですね。

──では、曲作りにしてもアレンジにしても、自然体で進めていった結果、『kéɪn』が完成したという。

佳嗣:時間が限られていたこともあるんですけど、最初に“こうだ”と決めた方向で進めて、結果それが良かったみたいな。今は、レコーディング技術も発達しているから、やろうと思えばいろいろなことができるじゃないですか。でも、あれこれ寄り道せず、ストレートに到達できましたね。自分的にわりと上手くいったなと思ったのは「稜線」です。

浩文:それは俺も感じたな。「稜線」はリード曲として、『kéɪn』リリース前にオフィシャルYouTubeチャンネルで1曲丸々聴けるリリックビデオを公開したんですけど、6分半以上ある長い曲なんですよ。それでもリード曲にしたのは、聴いてて曲の世界に浸れるところが一番強かったから。

──「君惑うニュアンス」や「ゆらゆらゆれてる」などキャッチーな楽曲がある中で、「稜線」をリード曲にセレクトされたのは意外でした。

浩文:普通しないでしょ、6分半以上の長さも含めて(笑)。途中で聴くのを止めちゃったとしても、それはそれでまあええかと思って。“雰囲気がいいな”って最後まで聴いちゃったっていう人にこそ伝えたい曲。それでいいのかなと。カッコつけではなく、世の中の流行やマーケティングにヘンに抵抗する気もないっていうか。アルバム宣伝用にリリックビデオを作るのではなく、伝えたい曲を届けたいという。


──大人の余裕も感じます。

浩文:いやいや、必死なんですけどね(笑)。YouTubeに動画をアップすると管理者は、平均何分試聴されたとか、細かいデータを見られるじゃないですか。その平均時間って3分くらいなんですよ。でも、最後まで聴いてくれる人もいっぱいいる。この曲って、最後の音が消える6分半……そこからさらに10秒くらい固まってしまう人のために書いたものなんです。そういう人にはなくてならない曲になるはずだっていう、願いと信念だけはしっかりと持っておきたい。もちろん、“こっちは好き勝手やってるから、最後まで聴かない人は別にいい”っていうんじゃない。本当は後を追いたい気分だし、必死なんやけど(笑)。追ったところで、3分で終わる人にはこの曲の良さはたぶん理解できない。でも、この曲の深みをわかってくれる人は絶対にいるから。

──yohiacoサウンドの核の話ですよね。

浩文:そうそう。5年活動してきてるけど、今回のアルバムを作ったことで、ようやく“これがyohiacoやねんな”って深く理解できたというか、自分自身納得いったところがありますね。

──「稜線」こそアコギはもちろん、エレキギターやストリングスのアンサンブルがドラマティックで。

浩文:音を入れすぎず、絶妙ですよね。最後のほうでサウンドが大きく展開するしね。この曲は本当に最後まで聴かないと絶対ダメ(笑)。

佳嗣:「稜線」とは打って変わって、「君惑うニュアンス」はエンジニアさんの力がわりと大きいんですけど、ここまでの仕上がりになるとは予想してなかった。リズムはカホンで、ベースは僕が弾いて。

浩文:ごっつバンドサウンドになった(笑)。思ったよりキャッチーでポップというか。

──「ゆらゆらゆれてる」もバンド感のある曲ですね。

佳嗣:そうですね。「ゆらゆらゆれてる」と「月光」は去年のEins:Vierのツアーが終わってから作った比較的新しい曲なんですよ。「yes i do」は、当初はアコースティックギターに少しエレキを乗せるくらいに考えてたんだけど、違う音も欲しくなって、歌入れが終わってからもギリギリまで作業して、良い結果になりましたね。

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