【インタビュー】彩冷える、本格再始動の狼煙はアルバム&全国ツアー「9年分の想いがある」

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彩冷えるが8月24日、実に9年ぶりとなるオリジナルアルバム『辞するモラトリアム』をリリースした。2019年5月に東京・SHIBUYA TSUTAYA O-EASTで開催された結成15周年記念ライブにて、向日 葵(Vo)、タケヒト(G)、夢人(G)、インテツ(B)、ケンゾ(Dr)による5人の本格的な再始動をアナウンスした彼らだが、これまでの道のりは波乱万丈だった。

◆彩冷える 画像

2004年に結成した彩冷えるは、インディーズ時代を経て2009年にメジャーデビューを果たした。以降、キャッチーで彩り豊かな曲と華やかなステージで楽曲をチャートの上位に送りこみ、ホール公演を行うほどの成功を収めている。しかし、メンバー間のすれ違いにより2010年には葵以外の4人がバンドを脱退するという異例の事態に──。脱けた4人が一時期AYABIE名義で活動するなど、その動向はファンのみならずシーン全体に波紋を広げるニュースとして報道された。

再始動に至るまでの道のりもまたメンバーにしかわからないものがあると想像するが、家族よりも長い時間を20代のときに一緒に過ごしてきた5人が再びここに結集、不退転の覚悟のもと彩冷えるを動かすことを決意した。その心境がストレートに反映されたタイトルが『辞するモラトリアム』でもある。9年ぶりとなる全国ツアーを控えた5人に再結成のわけ、そしてその真実が散りばめられているというアルバムについて、たっぷり語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■音楽的にも人間としても経験を積み
■新たにストーリーを持ち得た気がする

──彩冷えるは2018年に8年ぶりのワンマンライブを開催、翌年2019年には東名阪ツアーも行い、5月の結成15周年特別公演をもって5人での本格活動再開を発表しましたが、また一緒にやろうと思った決め手は?

タケヒト:彩冷えるはインディーズ時代に高田馬場AREAのレーベルでお世話になっていたこともあり、AREAの15周年イベントのときに「5人でやってみませんか?」ってオファーをいただいたのが最初ですね。その後、2017年の20周年イベントのときにも声をかけていただき、Zepp Tokyoでのイベントに出たんですけど、久々に集まったとき雰囲気が昔の5人に戻ったような感じがあったんですよね。

ケンゾ:そうだね。自然と。

タケヒト:2年前、葵くん(向日 葵)は事務所に所属していたんですけど、ライブに向けて集まったときはスタッフがいない状態で5人だけで動いたんです。メンバー同士でやりとりしてライブを作り上げた実感があったので、“いまならできるかな”って思ったんです。

ケンゾ:で、2018年5月にワンマンライブ<感謝祭'18-DAY1,DAY2->をTSUTAYA O-EASTで開催して、今年1月にZepp Tokyoでワンマンをやってっていう流れだよね。

▲向日 葵(Vo)

──「またやろうよ」というのは誰からともなく?

タケヒト:去年の段階では本格始動とまでは考えていなかったんですよ。感謝祭の2daysワンマンでファンのみなさんが待っていてくれたことを改めて感じて。もっと多くの人に自分たちの音楽を届けたいと思うようになったし、今年は15周年という節目もあって「もう一度やってみようか」って。

向日 葵:それと、彩冷えるはいろいろなことがあったバンドで、5人での活動ができない時期が長かったんです。にも関わらず、応援してくださる人たちがいたのをライブで実感したんですね。最初は自分たちで一歩を踏み出せなかったんですけど、「だったら、またライブやってみようか」って。5人で音出したり、会うだけでも楽しかったので、単純にバンドを始めた頃の気持ちに戻れたっていうところが大きかったです。

夢人:僕は彩冷えるに2006年に加入して、お兄さんみたいなメンバーと20代を過ごしてきたんです。最初は“空白だった時間を感じたりするのかな?”って思いましたけど、いざ集まったら時間は経ってるけど、地続きでずっと一緒にいた感じがして自然でしたね。

──不思議ですよね。

インテツ:僕も自然としっくりきましたね。同じことをファンの方が感じてくれているのがライブでわかって、“この5人が集まるだけで彩冷えるだな”って。そう思えるのは代えがきかない魅力だと思ったし、やっぱり居場所なんだって。いまに至るまでいろいろお騒がせしましたけど、各自が考えてそれぞれ経験を積んで乗り越えてきたからこそ、いまの活動があると思ってます。

──ファミリー感は変わらなかったわけですね。

ケンゾ:そうですね、確かに。

夢人:毎日、家族以上の時間を一緒に何年も過ごして、どうしたらいい曲が作れるか、いいライブができるかって共有してきたことがお互いの信頼関係に繋がっていると思います。

▲アルバム『辞するモラトリアム』

──お互いに性格もわかっているから多くを語らなくても通じ合えるんだろうし、多感な時期に組んだバンドってやっぱり大きいんでしょうね。だから休止とか解散しても再び集まるバンドが多いんだろうなと思うときがあります。

夢人:ただねぇ。不思議なんですけど、再び集まったらみんな年取ってたんですよ。

──はははは。

向日 葵:ははは。そこは空白じゃなかった。

夢人:時間だけはねぇ。夢じゃなかったですね(笑)。なにが言いたいのかというとみんな成長していたんですよ。

インテツ:そこが面白いよね。音楽的なスキルを磨いて人間としても経験を積み、新たにストーリーを持ち得た気がする。僕たちみたいにライブハウスからスタートしたバンドにとってメジャーデビューすることは夢だったので、自然だって言えるのも過去にみんなで作り上げてきた安心感があるからだよね。

──本格始動するにあたって、会社を立ち上げたんですよね? タケヒトさんが社長だとか。

タケヒト:そうですね(笑)。

インテツ:タケヒトCEOです(笑)。

タケヒト:それぞれのキャリアを活かせたら面白いんじゃないかと思ったんです。ケンゾはバンドやソロ以外にいろいろなミュージシャン(Aki、BAROQUEなど)のサポートドラマーも経験して、すごくスキルアップしていたし。インテツはカメラマンとして活躍して、夢人はバンド(ベル)を組んで活動していた。葵くんは音楽以外でも役者として舞台に出て表現力も上がっていて、僕は僕で会社員をやっていたので、会社を立ち上げたほうが各自のスキルが発揮できるんじゃないかって。昔の僕たちはやりたいことがあってもどうやって形にしたらいいのかわからなかったので、レーベルやライブ制作の力を借りていたんですけど、それでもイメージ通りに着地できなかったり。でも、いまはそれぞれの経験やスキルもあるし、インターネット使えばなんでもできちゃうじゃないですか。

◆インタビュー(2)へ
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