【インタビュー】キズ、来夢「僕が死にました」(後編)

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キズの来夢が「一年前の僕が死にました。だからファンに話しておきたいことがあるんです」と話し始めたインタビューは、二時間にも及んだ。前編も賛否両論がうずまきそうなことを自由に話していたと思う。

後編はニューシングル「黒い雨」のCDジャケットや衣装についても聞いた。しかし、来夢はそれを踏み越えて「自分が思う敵と味方」や「バンドに終わりが近づいていること」にまで言及し始めた。

しかし、今回のインタビューはどこか「暖かい空気」が流れている。例えば、「送ってくるな」と言い放っていたファンレターを「読むのが楽しくなった」と話しているのだ。さらには「ファンには全てバレてますよ」とまで。

「バンドの終わりの空気」と「暖かい空気」という相反する空気もまた、来夢の願い通り「自然体で」感じて欲しい。

  ◆  ◆  ◆

■平和な日本と音楽を楽しむことのできる今に、僕らはもっと感謝しなくてはいけない

──今回の「黒い雨」はCDジャケットにも変化を感じました。手触りがあるものですし、曲の全体像を真っ直ぐ伝えてきますよね。

来夢:あの絵は僕のこの目に写る世界です。「世界地図を書け」と言われたらあの上と下の両方の絵を書きます。あの絵も含めて、僕が見ている世界の全てを表現できた作品だったなと思いますね。

──インパクトのある絵です。

来夢:曲のインパクトも絵のインパクトも強すぎたかも(笑)。今回は曲と一緒に絵も浮かんじゃったんですよ。今まではデザイナーさんに提案をもらって「それでお願いします」という流れが多かったんですけど、今回は「この絵にしてください」と自分から伝えて作ってもらいました。

──二会場同時刻開催ライブの<世界線ー平成三十一年八月二十二日ー>でお披露目された、真っ白な衣装も印象的でした。

来夢:ふざけられない、という切迫した思いが衣装にも表れたのかもしれないです。歌詞に関しても、「黒い雨」は規模が大きいことを歌うわけじゃないですか。僕の身近にも被爆されている方がいるけど、そういう人たちを傷つけないように言葉も選びましたし、いかに曲を感じ、考えることに集中できるかは大きな課題でした。この意識を大切にするために、今回の衣装は見えない部分にもこだわっています。

──衣装の見えない部分というと?

来夢:ジャケットの裏地ですね。そこには第2次世界対戦後の日本の「壊滅してしまった都市の絵」が入っているんです。これは、国を立て直した力やそれに伴う痛みを伝えないといけないという気持ちの現れです。でもあえてこれまで言いませんでした。僕とメンバーが意識していれば良いことで、「裏地を見てくれー!」とアピールするものじゃないですから。

──見えない部分に意識が宿るんですね。

来夢:CDジャケットと同じですよ。僕が見ている世界を形にしただけです。今のこの世界は、人類が持っていた傷や痛みはたしかにあるのに見えないじゃないですか。そのことを自分たちが意識するためだけに入れたんです。だから誰かが気づくまでは言わないつもりだったんですよね。白服限定GIGの日にも言ったけど、真っ白い綺麗な服を着れる国はそう多くないんです。着ることができる平和な日本と音楽を楽しむことのできる今に、僕らはもっと感謝しなくてはいけない。

──歌詞に影響を受ける人のことを思う来夢さんや、見えない部分にまで意識を届かせる来夢さんもいるんですね。

来夢:僕の中では、傷つけるのがロックンロールではないですから。音楽は傷つけるためのものではないですから。

──来夢さんの音楽観ですね。

来夢:そうですね。でも、違う曲の中では傷ついてもいい奴について歌っていることもありますし。「傷ついて当然だろこんな奴」と思うこともあります。むしろ傷つけたい奴がいる。でも、絶対に傷つけちゃいけない人もいるんですよ。

──その違いをお聞きしたいです。

来夢:あぁ、聞いちゃう!? 難しいんですよ。あぁー!

──そんな反応初めて見ました(笑)。

来夢:ははは(笑)! 「傷ついて当然」という奴は、俺が人として嫌いな人種ですよ。例えば常識を、しかもありきたりな言葉で叩きつけてくる奴は嫌いですね。「本当にお前が言う正義は正義なのか」と問い詰めたくなる。多数決の正義を信じ切っている奴が嫌いですね。

──4thシングル「ステロイド」収録の「豚」でも、“コピー・アンド・ペースト”の生き方をしている人に刃を向けていますね。

来夢:あとね、他にも嫌いな奴いたわ。僕は比較的世界を見ている方だと思うんですけど、それでも地球の全てを見ているわけではないです。それなのに、僕より世界を見てない奴が「世界が嫌い」とか「世の中は腐っている」とかも言ってたり。こういう「見てもないし分かってもいないのに、さも全て見た結果として話している奴」は嫌いですね。

──「黒い雨」にもそういう歌詞がありますね。
来夢:そうそう。嫌いな奴のこと並べ始めたら、これだけでインタビュー終わっちゃいますよ(笑)!

──敵を作っていくスタンスでいきましょうよ(笑)。

来夢:めっちゃ嫌な奴じゃないですか(笑)。

──じゃあ、反対にどんな人を味方だと思うのでしょうか?

来夢:味方か……。メンバーかな。味方は多くしようとは思わないし、味方はメンバーだけで十分ですよ。だってメンバーは家族を超えた存在だし、僕の世界の縮図だから。

──味方にも来夢さんの定義がありそうですね。

来夢:あるんでしょうね。味方はね、僕が知ってる人!

──それはだめです(笑)。

来夢:えー(笑)。でも、「好き」と言ってくれる人のことは、好きになっちゃうんじゃないかな。知らない奴はみんな敵、知ってる奴はみんな味方(笑)

▲「黒い雨」初回盤ジャケット

◆インタビュー(2)へ
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