【インタビュー】鈴木研一、30周年ベストアルバムを前にして「尿路結石」を語る

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▲左からBARKS編集長 烏丸哲也、人間椅子・鈴木研一

人間椅子・鈴木研一(Vo&B)の連載コラム「ナザレス通信」が大人気だ。その人柄あふれる朴訥とした雰囲気の中にも、どんなテーマであれ「愛するハードロックに帰着させる筆力」「ちゃんと用意されているオチ」「心地よい起承転結の流れ」が担保されている。そう、つまりは鈴木研一が書き下ろす楽曲と全く同じように、「力強いテーマリフ」があり「グイグイと牽引するグルーブ」があり「心惹かれる展開」があって、きっちりとエンディングを迎えるハイセンスな作品集になっているというわけだ。

そんな「ナザレス通信」の直近テーマが「尿路結石」だった(【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.66「尿路結石」)。バンド生活30年の中で初めてライブに穴を開けたという激痛の苦しみを綴ったコラムだったが、本人の深刻さとは裏腹にあまりにおもろいコラムだったので、「私も尿管結石経験者なので、激痛お察しします」と共感のメールを送信した。

バンド生活30年を凝縮させたベスト盤『人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤』の2019年12月11日発売を控え、BARKSでは恒例の鈴木研一インタビューを遂行したが、先のメールが災いし、取材テーマは「ベスト盤について」から「尿路結石」に路線変更、そのトーク路線は尿路のまま音楽路線に戻ることはなかった。

  ◆  ◆  ◆

■自分がなるとは思わなかったんだよね(笑)

──30年のバンド生活の中で、ライブに穴を開けたのは初めて?

鈴木研一:初めてでした。分かるかと思いますけど、あんまり痛いと、もうライブなんかどうでもよくなって。

──言い方(笑)。

鈴木研一:それどころじゃないって(笑)。ほんとにお客さんがチケット買って長野だけじゃなくて地方からも来てくれているのも知ってたし、すごい楽しみにしてくれてるなっていうのはわかっていたから、そういう事態は避けたかったけど、のた打ち回るとそういう思いは消し飛んで、ライブどころじゃないって思いましたよ。それでもギリギリまで粘ったんですよ。その日の朝3時くらいにうずき始めて、最初は下痢なのかな?って思ったんだけど。

──当日、朝東京を出発する予定だったんですね。

鈴木研一:9時に迎えに来るって言ってたんだけど、ますます痛くなるし、しゃがんだり立ったりうずくまったり寝転んだりいろいろやったんだけど、どんどん酷くなるばかりなんですよね。病院に行っちゃうと多分ライブに行けなくなると思ったから、このまま偶然治るかもってギリギリまで引っ張ったんだけど、もう我慢ならなくなって。


──普通の腹痛じゃない、と。

鈴木研一:もしかして腸が裂けてるとか、変な病気かもしれないって思った。『ブラックジャック』とか読むから。エキノコックスだっけ…腸壁を破る寄生虫みたいな話があって。

──アニサキスとか。

鈴木研一:そうそう、それかもしれないなあとか思って。でも結局、救急病院に駆け込んだら、俺の顔見て「間違いなく尿管結石ですね」って。これが噂に聞く尿管結石かって思って、痛いのになんかニヤニヤしちゃった。自分の知ってる人も結構、尿管結石やっててね。

──激烈に痛いという噂は聞いていました?

鈴木研一:うん。石が入ってるから「石ちゃん石ちゃん」って呼んでバカにしてたんだけど、自分がなるとは思わなかったんだよね(笑)。編集長はどうでした?

──私も夜中3時頃。激痛で救急車を呼びました。救急隊員のお兄さんが「うずくまって動けない痛みですか?それともじっとしていられない痛みですか?」って訊くんですけど、こっちはのたうち回っているの。見りゃ分かんだろって思いました(笑)。我慢し過ぎで嘔吐しちゃいましたけど「これは尿管結石だね」って車内で言われた。

鈴木研一:お医者さんや看護師さんにはわかるみたいですねえ。

──あとは薬を処方されて「水たくさん飲んでぴょんぴょん跳ねてください」って言われた。…音楽サイトなんだけど、こんな話でいいんですっけ?

鈴木研一:いいんです。僕も跳ねてくださいって言われました。水は今でも飲んでますよ(笑)。


──結局、身体を動かして自力で石を排出するしかないんですよね。座薬で痛みを散らすんだけど、それまでは身体もだるくてなーんにもできない。まさにライブどころじゃないって感じ。

鈴木研一:編集どころじゃない、ですね?

──いやほんと。

鈴木研一:結局その日のライブは、和嶋君(和嶋慎治/Vo&G)がアコギをノブ(ナカジマノブ/Vo&Dr)がカホンを持って行って、アコースティックライブをやってくれた。出順もホントは僕らがトリだったけどOUTRAGEが締めてくれて、おかげでお客さんの怒りが収まった感じ。

──ものすごくレアなパフォーマンスが観られたわけだから、不謹慎な言い方だけど「結石ありがとう」ってところもあるかな。

鈴木研一:まあ、レアなライブが観れて嬉しいって思えたお客さんには「ありがとう」ですよね。お客さんには申し訳ないんだけど、自分も石のおかげで摂生するようになったっすよ。


──それはいいことですね。

鈴木研一:大好きだったコーラとか缶コーヒーとか一切飲まなくしたし、あれから水しか飲んでない。肉も食わなくしたし珈琲とお茶も辞めた。お医者がほうれん草・タケノコ・珈琲・お茶ダメですって言ったから。

──よっぽど懲りたんですね。

鈴木研一:もう懲りたし、もうひとつ腎臓に石があるっていうから、中野サンプラザやロンドン(<NINGEN ISU EU TOUR 2020>)の前の日にそいつが現れても、なんとかライブができるように尿管を広げる薬をもらっておいて、いざとなったらそれ飲んでピョンピョン跳ねようって思ってる。座薬もいっぱいキープしてあるし、いざとなったら飲んでくださいっていう薬もツアーのときは必ず持っていく。時限爆弾を抱えながらライブやってる。

──でも、健康を意識するようになったのは怪我の功名でしたね。

鈴木研一:あれから4キロ痩せたし、めまいもなくなった。心なしか調子いいんですよね。まだまだ痩せる予定ですよ。あのまま糖分と脂っこいものを過剰摂取してたら、血管詰まって死んでたんじゃないかな。まだまだ安心できないから、人間ドッグとか検査しまくろうと思って。

──今回の一件は、メンバーふたりに何か影響を与えたでしょうか。

鈴木研一:俺に優しくなったんじゃないすか(笑)。

──ぷ(笑)。


鈴木研一:リハってずっと立ちっぱなしじゃないすか。「ああ、疲れた」って言うと「じゃあ休憩しよう」「無理しないように」とか、気を遣ってくれるようになりました(笑)。

──でも鈴木さんと和嶋さんは同い年でしょ?

鈴木研一:はい。ノブもほぼ一緒です。

──彼らは健康ですか?

鈴木研一:成人病とかは大体肥満からくるけど、和嶋くんは一切肥満とは無縁の生活してるから。もともと食べる量もすごい少ないし、肉嫌いだし、魚ばっか食ってるし。ノブは肉しか食わないけど運動してる。人間椅子のドラム以外にもいろんなバンドのドラム叩いてるし、暇が嫌で忙しくしていないとダメで、何もしない日を作らないタイプなんですよ。俺と真逆。だからノブは健康だと思う。3人の中で俺が先に死んでバンドが終わるっていうのが未来予想図。

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