【連載】中島卓偉の勝手に城マニア 第90回「川越城(埼玉県)卓偉が行ったことある回数 7回くらい」

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いつかこの城も紹介しようと思っていたが、なんと来年2020年の1月、私のオフィシャルファンクラブBEAT&LOOSEの日帰りイベントを川越で行うことが決定。当然ながら川越城をファンの方々と一緒に見学もしたいので、それよりも前にコラムを書く運びとなった。

だがそんな川越城、本丸御殿が一部残っているとはいえ、現在は城のほとんどが埋め立てられ、デビューした頃はハードコアバンドだったのに売れた頃にはヒップホップのユニットになっていたビースティ・ボーイズくらいのかなりの様変わりをしてしまっており、これを伝えるのがなかなか難しい。城マニアならイマジンが可能なのだが一般の方にこのイマジンを文章で伝えるにはちょっと悩む。そんなことを思っていたこともあり、なかなか執筆するタイミングがなかったわけだが、ファンクラブイベントとなったらこれは今書くしかない。ただでさえ私がいくら説明しても頭にクエスチョンマークをいくつも出してしまうファンだ。先にこれを読んでいくらか知識を入れてもらえるだけでも随分と見学の楽しさや知識の深さは変わる。言わせてもらえば川越市民の方も川越城のでかさ、凄さを知らないパターンが多い。これ残念。よって私が勝手にPRしたい。誉めちぎりたい。金があるなら発掘調査に投資したい。それでいながら川越に縁もゆかりもない人なのに何故そこまで?とむしろ市民に言われたい。


築城は1457年と古い。戦国時代よりも随分と前になる。太田氏が最初だが、城を一番大きくしたのは1639年、松平信綱であろう。かなりの拡張整備を行ったと言われている。信綱の整備で9万5千坪の大城郭になった。今は本丸御殿がある場所しか城と思われていないので早速この広さのイマジンが困難である。川越の地形や街がわかる人に言えば、現在の市役所が大手門の跡である。ここに当時は丸馬出しがあり、その先には三日月堀があった。南大手門にも同じ作りがされていたことがわかっている。

現在の川越市博物館、川越市美術館が二の丸の跡地、埼玉県川越高等学校が三の丸の跡地、この辺り一面は言わば当時の城内、中ノ門堀跡が大手から歩いてちょうど城の中心部、城の外側にある新河岸川、入間川などが外堀の役目を果たしていた。平山城と言われてはいるが、川から見ると若干高い場所にあるだけなので、城の敷地内を考えたら平城だと私は思う。ここに当時13の門、4つの櫓、虎櫓、菱櫓、太鼓櫓、そして天守扱いの富士見櫓があった。城の大きさを考えると櫓の数は少ないが、信綱が入城した頃はもう戦の時代ではなかったことが言える。この富士見櫓。埼玉県川越高等学校の敷地内にある。7メートルの丘、言わば土塁なわけだが、この上に当時は3層で15メートルの高さがあったそうな。現在は櫓台に登れるようになっている。何やらこの富士見櫓、復元の話があるとかないとか。でもしっかりと絵図、模型、資料が残っているはずなので可能なはず。天守はなかったとされる川越城だがどう考えてもこの規模は富士見櫓が天守と言える。富士山が見渡せるという意味で富士見櫓と名付けられた櫓はいろんな城に存在する。石垣の時代の中であえて土塁の城で幕末まで突き進んだ川越城。スマホじゃなく現代でもガラケーを愛する中島卓偉と同じ感覚を覚える。そう言って勝手に寄せる。


何と言っても川越城と言えば本丸御殿だ。本丸御殿が現存しているのは高知城と川越城だけなのだ。しかも現在は御殿の裏に家老詰所が移築されている。これは明治時代に城が廃城になった時、本丸御殿は細く切り離され、競売にかけられ、川越城下町を始めいろんな場所に移築された。この家老詰所はふじみ野市の民家に移築されていたが昭和の時代に寄付され再度移築し現在の場所に戻ってきた。便所がとてもリアルに残っていて、当時の暮らしぶりがわかる。


今でも十分に広い川越城の本丸御殿だが、当時の大きさはこれどころではない。ほんの一部が現存しているだけなのである。1846年に二の丸御殿が消失し、改めて本丸に御殿を再建することとなり建てられたのが今の御殿である。割と新らしめではあるが、その大きさが凄かったのだ。これが切り売りされずに、移築もされずに現代まで残っていたら日本で一番大きな御殿だっただろうし、とっくに世界遺産間違いなしだ。御殿を見学するとわかるが、掲示板に現在残っている部分が赤線で括られており、当時の御殿はそれの何倍も大きかったことがわかる。これをとにかくイマジンして欲しい。高知城も確かに本丸御殿が残っているが、大きさで言ったら全然川越城の方がでかい。我々は今、川越城本丸御殿のほんの一部にしか触れることが出来ていないのだ。

御殿の正面玄関の横に当時の平面図があるのでそれを見てイマジンしてほしいが、川越市博物館に展示されている川越城の巨大ジオラマを見てもらえるとよりリアルだ。いかに素晴らしい城だったかがわかってもらえると思う。


中ノ門堀跡にも注目してほしい。本丸御殿から歩いて10分ほどで到着出来る場所にある。面白いのは民家が立ち並ぶ住宅地に突如現れるように空堀が存在することだ。しかもかなり深い。平面図を見る限り当時は空堀ではなく水堀だったみたいだが、中ノ門の場所自体が食い違い虎口になっていて、入り口にある模擬の冠木門は中ノ門と同じ場所に建設されている。真っ直ぐに城内に入らせない為にここまで深い堀を作るところが戦がなくなった時代とはいえ凄まじい。現代までにひっそりと残っていたこの堀。たまたま埋め立てられることもなく、誰かの土地になるわけでもなく今日まで残っていたことに拍手。もちろん整備はされているのだが、当時と現代のギャップを楽しめる空間になっていることが素晴らしいと思う。


埋め立てられ当時の顔がほとんどわかりづらくなってしまった川越城だが、城下町は城よりもしっかりと残っていて、その町並みは小江戸と呼ばれる。素晴らしいキャッチフレーズだ。現在も当時の蔵をそのまま使い、いくらかリフォームしてやっている店も多い。城下町だけに道も真っ直ぐ、もしくは十字、当時の堀を縁取るように作られたカーブになった道などが今でも綺麗に残る。とてもとても美しい城下町だ。金沢の城下町に負けていない。城と城下町が平地に建てられたこともあり、アップダウンがないので歩くにも楽。高い建物がないので空が広い。川越の名物とも言えるさつまいも、鰻、和菓子、お酒、歴史ある店が立ち並ぶ。実に風情があって良い。城下町を歩くと観光客はもちろんなのだが、老若男女、いろんな世代の人達が行き交っていることも素晴らしい。どうしても街によっては行き交う人の世代が偏る。でも川越城下町は世代を超えて愛されている感が半端ない。この街に生まれたらこの街から出ないだろうなあなんてことも思うくらい情緒溢れる良い街だ。

私が何故7回も川越城に行ったことがあるかと言えば、10代の頃川越に住む彼女と付き合っていたことがあるからで、川越に行く度に友達も増えたこともあり、今でもいくらか川越の街はわかる。当時高円寺と西武線の野方のちょうど間くらいの場所に住んでいた私は川越に行くにはもっぱら西武線を使い、田無で急行に乗り換え本川越駅に滑り込んでいた。もちろんヘッドスライディングで。

ある日彼女に別れを告げられた。理由は簡単である。12月24日クリスマスイヴに私は彼女と会わず、中野サンプラザで行われるZIGGYのライヴ、タイトルも忘れもしない「LIVE ORDER MADE1996 ZIGGYの年末総決算」これに行くことにした。それが理由でフラれるという。だってしょうがない、この日はリクエストライヴで、しかもTOP15を逆に演奏していくというもの。そんなライヴにZIGGY教として行かない理由などない。いや毎回ZIGGYのライヴがある度に行かないという選択肢は私にはなかったのだ。だってファンなんですもの。どんなことをしてでもZIGGYのライヴを優先してチケットを取る。しかも当日の開演時間ギリギリまでバイトを入れてもいた。24日に全く会う時間も取り入れない私のスケジュールに彼女も憤慨。それが理由で別れることになり、その年の暮れだったか、新年明けてからだったか、私の家にある自分の物をまとめて本川越の駅の改札に持ってきてくれと言う。夕方の時間の待ち合わせだったが、何分待っても彼女が来ない。改札だもんで共通の友達に遭遇し、「卓偉ここで何してんの?」と言われ、「いや、別れたもんで、荷物持って来てって言うから持ってきたんだけど来ねえんだよ」これを一体何人に同じ説明をしたかわからない。当時はまだ携帯電話が普及しておらず、こうなった場合連絡が取れない。しかも小便がしたいが小便をしに行ったタイミングで来られて私が来てなかったとなるのは勘弁だ。彼女の荷物が入ったパンパンの袋と膀胱をパンパンにしながらかれこれ2〜3時間は待っただろうか?まっ女性のことだ、天気と同じくらい気も変わりやすい。持って来てと言っておきながら急に気が変わったんだろう。男性諸君、こういう場合は女性を絶対に突き詰めてはならん。女性にはいつでも逃げ道を作らせて、意見と行動を尊重、肯定し、これ以降自分からは連絡はしてはいけない。連絡が来ても決して怒ってはいけない。きっと待ち合わせの10分前に急にトライアスロンを始めた、そう思おう。その日も夜からバイトがあったのでそのまま本川越から西武新宿まで急行で引き返した。

ここで一句詠みたい。

「クリスマス、彼女と会わず、サンプラへ」

もしくは

「川越で、膀胱パンパン、思い出す」

または

「迷わずに、ZIGGYと彼女、ZIGGY取る」

あぁ 川越城 また訪れたい…。

◆【連載】中島卓偉の勝手に城マニア・チャンネル
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