【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、ソロ7thアルバムは「自分史上、最もやさしくて切なくて弱い世界」

ツイート

BREAKERZのギタリストAKIHIDEが1月15日、ソロ通算7枚目となるオリジナルアルバム『星飼いの少年』をリリースする。ガットギター、ウッドベース、パーカッションというシンプルなトリオ編成で紡ぎ出されたファンタジーとリアルが交錯する音楽は、ミュージックビデオを含むこだわりのアートワークとリンクしたAKIHIDEならではのセンシティヴな世界。

◆AKIHIDE 画像&動画

「今作は自分の弱さを描いた物語でもある」というAKIHIDEが、自分と向き合った歌詞について、そして独奏でのライブを経験したからこそのギター奏法、音色やニュアンスを生かすことに特化したサウンドについて、じっくりと語ったロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■変化や進化を感じてもらいたい
■僕が伝えたいのは“死生観”

──7thアルバム『星飼いの少年』はガットギターがフィーチャリングされていて温かくも切ないファンタジックな世界観がAKIHIDEさんらしく、より人間味が増しているようにも感じました。今作を作ることになったきっかけや出来事はありますか?

AKIHIDE:2018年に、僕の独奏コーナーと今作にも参加してくれているウッドベースの砂山(淳一)さんとデュオで聴かせるシンプルな形態でツアー(<NAKED MOON>)を開催したんです。ガットギター1本でも成り立つ曲やインストを披露したことによって、自分自身、面白さを感じたし掴むものも多かったので、そういうやり方で世界を広げていきたいと思ったのがアルバムを作るきっかけですね。そんな中、星をいっぱい飼って連れている“星飼いの少年”というワードと設定がパッと浮かんで“このタイトルだったら広げられそうだな”ってストーリーに呼ばれるように曲ができていった感じです。

▲『星飼いの少年』初回限定盤

──初回限定盤にはコンセプトストーリーの朗読と即興演奏を収録したCDがパッケージされていますが、星を売って暮らす少年の物語がアルバムの曲と繋がっているんですか?

AKIHIDE:前回のアルバム『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』は物語に沿って曲が並んでいたんですが、今回のアルバムは10曲目のインスト「星飼いの少年」がコンセプトストーリーに当たる立ち位置で、そこから11曲目「涙の海、越えて」と12曲目「青空」に繋がっていく構成になっているんです。アルバム全体では男女の出会いから別れまでを描いているので、いわゆるファンタジックな世界観は「星飼いの少年」だけですね。

──つまり、アルバムの曲はコンセプトストーリーから派生したものという捉え方でいいのでしょうか?

AKIHIDE:リンクはしているんですが、「星飼いの少年」という物語のバックグラウンドが描かれている感じですね。なぜ主人公は自分の殻にこもって夜の世界で星と暮らすようになったのか、という流れが自分の中にあって、それを1つ1つの曲で綴っているんです。

──なるほど。星は銀ではなく赤ですが、アートワークも同時に浮かんでいたんですか?

AKIHIDE:ひとつはファンのみなさんに変化や進化を感じてもらいたいなって。いまは情報がすぐにスマホで見られる時代ですから、ヴィジュアルにもインパクトや色の強さが欲しかったので“赤”をチョイスしたというのもありますね。それと“星飼いの少年”が飼っている星は思い出たちなので、大事な記憶は血肉だと思ったんです。“血管みたいな赤い糸で繋がっている思い出”というイメージもありました。


──それで「星追いの少女」のプロモーションムービーで赤い糸を手に巻きつけてギターを弾いているんですか?

AKIHIDE:ええ。運命の赤い糸で結ばれたのに別れなければならなかった男女の物語を描いているので、その歯がゆさを表現したかったんです。撮影中に思いついて「ギターにも手にも赤い糸を巻きつけましょう」って提案したんですけど、縛られていることによって楽しいメロディも弾けるけれど、悲しいメロディも奏でなければいけなくなったという意味合いも含まれています。

──音楽とアートワークとコンセプトストーリー、ブックレットが連動していて、AKIHIDEさんのソロは総合的なアート作品ですよね。

AKIHIDE:ええ。アルバムのリード曲のミュージックビデオ「ありふれた物語」も自分で作った男女の糸人形をスタッフの方と2人で操ったんです。

──あの人形もAKIHIDEさんの手作りなんですか?

AKIHIDE:はい。編集はスタッフの方にお任せしているんですが、いろいろと想いを込めた作品になっています。

▲6thアルバム『機械仕掛けの遊園地 -Electric Wonderland-』 ジャケットアート制作風景より

──そもそもAKIHIDEさんが、ソロでファンタジーと現実がクロスする世界を表現する根っこにあるものとは?

AKIHIDE:僕が伝えたいのはリアルな感情で“死生観”なんです。誰しもが迎えなければならない別れ。それは僕にとっても悩みであり、別れを考えるからこそ“強くならなきゃ”、“頑張らなきゃ”って思うんですが、シリアスなテーマをファンタジーにすることで根っこにある気持ちをストレートに伝えられるし、ファンタジーだからこそ素直に聴ける。とはいえ、非現実的すぎても自分の表現したいことを伝えられないので、入り口は現実でファンタジーな世界で根本にあるテーマを提示して、出口では現実に戻るという手法をとっています。僕は村上春樹さんの小説やジブリ作品が好きなんですけど、現実から異世界にまたいでいって現実に戻る作風に昔から惹かれていたんです。

──少年期に読んだ小説や映画の影響が大きいんですね。

AKIHIDE:そうですね。ファンタジー小説であれアニメであれ、根本に強いメッセージがある作品が自分の中に残っている気がしますね。ゲームだと『ファイナルファンタジーX』がすごく好きで、この前も曲をカバーしたんですけど、あのゲームの根本にも死生観があるんです。

──誰もが直面する普遍的なテーマですよね。

AKIHIDE:ええ。僕の父親は自分が30歳になる前に他界したんですが、そのときに“願っても叶うわけじゃないんだ”って思って、心の穴を埋めるようにそういう曲が増えていったんです。それは僕が曲を作るエネルギーの源泉にもなったんですね。“いつか人は亡くなるんだな”と思うことで作品も作れるし、人にも優しくなれる。

◆インタビュー【2】へ
この記事をツイート

この記事の関連情報