【対談】優(BugLug)×咲(甘い暴力)、「せめぎ合いがお互いの良さを高め合う」

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BugLugの10周年を記念した全国ツアー<Que Sera Sera>が、各地ツーマンスタイルで開催される。このツアーには先輩バンドから若手バンドまで、多彩なゲストが出演。主催ライブ<バグサミ>を行うなど、積極的に多くのバンドと交流してきたBugLugらしいラインナップだ。これを機してBARKSでは、BugLugメンバーと各バンドとの対談を実施する。

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燕(B)とRAZORの猟牙(Vo)が思い出話に花を咲かせた第2回に続く第3回目は、BugLugの優(G)をホストに、3月29日の岡山YEBISU YA PRO公演でのゲスト、甘い暴力から咲(Vo)が登場。甘い暴力は、今回のツアーで若手世代から唯一の参加となる。いまだ謎多きバンドのフロントマンとして、先輩を前に初めてその熱い信念を明かした咲と、深い愛情を持って迎える優の、相思相愛な対談となった。

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■発するものだけを持って帰って下さいっていうライブを目指してます──咲

──ふたりでの対談は初めてですよね。

優:対談は初めてです。ライヴでは過去に1回、<beauty;tricker>っていうツアーを一緒に回ったんだよね。でもその前に、俺は甘い暴力のライヴを見てます。インストか何かでたまたま一聖(Vo)と大阪にいたら、甘い暴力ってバンドが最近きてるらしいよ、って聞いて、見に行くかって。で、観たあとに一聖と「やべえバンドいるぞ」って話したの覚えてる。これは新世代出てきたな、困るなあみたいな印象がありました(笑)。

咲:恐れ多いです。どちらかというと自分らは、その現場現場に毎度必死すぎて、正直ほかのバンドともあんまり絡まない鎖国的なバンドで。その時は特に、まわりの意見とか評判も全然耳に入れることなく、ひたすらやっていたっていう感じでした。

優:そういうバンドのほうがいいと思うんだよね。BugLugも超鎖国的だったから。友達いなかったし、対バン相手に写真撮って下さいとか言われても全部断ってた。馴れ合いたくないし、もっと戦っていこうよって。

咲:めっちゃわかります!

優:そういう空気も(甘い暴力に)感じたんだよね。だから、最初見た時から怖いバンドだなって思って、絶対対バンしたかった。若い芽は摘めって言うじゃん(笑)。

咲:(笑)。いやあ、有難いです。それでお誘いいただけたのは純粋に嬉しいです。友達的なノリとか、いわゆるコネで誘っていただくっていうかたちは、あんまり自分的には好きじゃないので。

優:<バグサミ>でも、いちばん最初に出てくる若手の名前って甘い暴力だから。インタビューとかでも、俺結構名前出してるし。好きなんだよね、単純に。やっぱり、ほかと全然やり方が違うじゃない。CDを流通してなかったり、今も(動画では)モザイクがかかってると思うけど、写真を出さないとか。SNSもやってないでしょ。

咲:そうですね。オフィシャルしかないです。

優:そうやって時代に逆らってるのを見て、ああ悔しいなって思う。俺がやりたかったことを全部やってくれてる感があって、見てて楽しいんだよね。

咲:いや……最初はすごい怖かったですよ。もう全部真逆なので、まわりからの批判とかもめちゃくちゃありましたし。

優:何を批判されんの?

咲:「なんで個人アカウントないの?」みたいな。「やる気あんの?」ってすごい言われたりしたんですけど、こっちからしたら、逆にやる気があるから全部やめてんねんけどっていう。


優:めっちゃわかる! 俺ずっとまわりに言ってたから。甘い暴力のやり方は絶対正しいから、絶対売れるって。で、大阪BIGCATが一杯になったって話を聞いて、ほらみろって言ってたもん。

咲:ほんとに頼れるツールを全部シャットアウトして、自分たちをPRできる場所はライブしかない状態に追い込んでた、みたいな感じだったので、最初の頃はほんまに怖くて。この25分でコケたら終わりや、っていう状態でずっとやってるのが、自分たちのケツを叩けているのかなって思います。

優:たぶんその時なんだろうね、俺と一聖が観たライブは。

咲:でも、まだまだこれからだし、その時の気持ちのままやっていかないといけないっていうので、今自分たちが試されてるなって感じながらやっています。

優:俺から見たら、今いちばんバンドやってて楽しい時期だと思うんだよ。徐々にお客さんが増えていって、自分たちのやってることが正しいんだって思える時期じゃない。でもさっき楽屋で話してたら、そうでもないんでしょ?

咲:今でも怖いですね。バンド始動してしばらくした時に、ライブでちらかして終わるだけじゃあかんなって気づいた時があったんですよ。バンドやってる意味ってなんなんやろ、なんのために俺は曲を書いて、歌詞を書いて、ライブをやってるんやろうみたいなことを考え出した時に、やっぱりうわべだけじゃないメッセージをしっかりお客さんに提供していかないといけないなって感じ始めて。なので、今は正直キャーキャー言われたいとかも思ってないです。それはもう二の次三の次でいいんで、発するものだけを持って帰って下さいっていうライブを目指してます。

優:ファンが増えていくことよりも、自分の伝えたいこととか言いたいことが浸透していくほうが嬉しいんだね。

咲:そうですね。

優:それって、ほんとにヴォーカルとしてすごく大事なことだと思う。


咲:ありがとうございます。でも時に、世間的な見られ方って、わりとふざけてるとか、チャラチャラしてるみたいなイメージだと思うんですけど……。

優:特に甘暴世代ってそう感じるんじゃない?

咲:そうですね。でも、逆にそれもいいかなってちょっと思ってて。変な話、まわりの大人とかのほうが、気づくのが一歩遅いと思うんですよ。いちばんわかってるのは、やっぱり目の前のお客さんだと思うので、それを信じてずっとやっている感じはあります。

優:そんな手の内明かしていいの? みんな真似し出すよ(笑)。

咲:ははは。

優:甘暴がドーンと行ったら、みんないっきにSNSとかやんなくなると思うよ、ほんとに(笑)。そういう未来になってほしいもんね。

咲:見た目が大事って言う人もいるけど、やっぱりお客さんはライブと歌と歌詞と聴きに来てるので。それを置き去りにして、見た目ばかりを頑張ったりいろいろしちゃうと、そりゃお客さんも離れていくよなっていうのはすごく思います。それこそK-POPみたいな、ハイパフォーマンスでイケメンでっていう人は全然いるんで。

優:イケメン具合じゃ向こうには勝てないもんね。だから、違うベクトルで俺らの魅力的なものを発信していかないと。今、ヴィジュアル系でポップなバンドってそこまでいないから、そういうバンドが出てきてもいいと思うし。甘暴は今、基本的にはネガティブなことが中心にあるの?

咲:自分たちの楽曲の振り幅は、結構広いです。それこそ「ちゅーしたい」みたいなポップな内容もあれば、めっちゃ病んでる曲もあるんですけど。

優:芯は?

咲:あります! ドヤって言うことじゃないですけど(笑)、おおもとのコンセプトに“こじらせ女子たちに捧げるスイートバイオレンスロック”っていうのがあって、それからは絶対に外れないようにつくってます。自分の中の定義で、“こじらせ女子”っていうのが、いわゆるメジャーシーンとか、キラキラした明るいものが眩しすぎて、地下にやってきた子で。いろんな人づきあいが苦手だったり、そういう子たちの受け皿になれるように、というところだけは外さないようにやっています。

優:なるほどね。ただ楽しいことだけやって騒げりゃいいやっていう子は相手にしてない感じなんだ。

咲:騒げたらいいやみたいな子たちもたくさんいると思うんですけど、でも結局、全員きっとなんかあるんですよ、バンギャをやってる以上は。なので、そこだけはないがしろにしないようにやらないといけないなって思ってます。お客さんがバンドをいちばん見てるので。そこだけは裏切らないようにしないとなって思いながら、いつもやってます。

優:素晴らしいヴォーカリストだね。俺はどっちかっていうと、バンド内でもビジネスマン寄りだから、そういうアーティスト的な話を聞くと緊張しちゃう(笑)。

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