【インタビュー】安田レイ「弱さもさらけ出してもっと素直に音楽と向き合っていきたい」

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昨年秋に放送され話題となったドラマ『モトカレマニア』のオープニングテーマ「アシンメトリー」などを含む、安田レイのニューアルバム『Re:I』。前作『PRISM』からは実に4年ぶりということで、アーティストとして、また1人の人間としての成長や心境の変化なども色濃く反映された作品だ。感情が大きく揺れ動いたという2019年を経て、彼女は今、自らの手で自分の殻を破り「弱さもさらけ出して、もっと素直に音楽と向き合っていきたい」と胸を張る。チャーミングな素顔がのぞくエピソードを交えながら、本作完成までの経緯を語ってくれた。

■歌っている時は本当の自分でいられる気がする
■だからすごく大切な時間でもあるんです


――今日はニューアルバム『Re:I』について伺っていきたいと思うのですが、その前に、2月に行われたEX THEATER ROPPONGIでのワンマンライブについて聞かせてください。

安田レイ(以下、安田):初めてフルバンドでやらせていただいたんですが、とてもゴージャスなステージになりました。ビルボードやブルーノートでコンセプトライブ的なものはやっていたんですが、ああいった広い空間でのワンマンライブはすごく久しぶりで。成長した自分の姿を見せたいという気持ちがすごく強くあったので、演出面にもこだわってやらせてもらいました。

――例えばどういったところですか?

安田:これまではお客さんを煽って“みんな声出して! 楽しんで! 踊ろう!”って感じだったけど、今回はクールな自分を見せたいと思ったんです。オープニングから、スッとステージに現れて何も言わずに歌い出す。いい意味での驚きを感じてもらえたらと思ったんですよね。自分で自分を分析すると飽き性なところがあって、常に何か新しいことをしていきたいというのがあるから、ライブでも毎回何か違ったコンセプトやテーマでやっていきたいなというのがあるんです。また新たな自分を見せられたと思うし、次のライブはどんな自分でステージに立とうかなって、もうすでにワクワクしているところです。


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――今サラッとおっしゃいましたが、レイさん飽き性なんですか(笑)。

安田:飽き性ですね(笑)。ファッションとか好きなものもコロコロ変わるし。だから歌だけですね。聴いている音楽と歌に対する思いだけは、ずっと同じなんです。

――さかのぼれば、子供の頃から?

安田:そうですね。小学校、いや幼稚園の頃には「自分は歌を歌う人になる」っていう根拠のない自信みたいなものがあって。何かの才能があるとか歌に自信があったわけではないけど、歌が好きだな、きっと歌を歌うんだろうなっていうイメージが幼いながらにあったんです。周りが「○○レンジャーになりたい!」とか言っている時に、私は「歌手になる!」って(笑)。

――そんな頃から(笑)。

安田:はい。でも歌手を続けていく難しさみたいなことはみんなから言われましたし、ちゃんと大学に行って安定した職業を見つけた方がいいとかも言われました。でも私は「安定ってなんだよ!」って思っていましたから(笑)、そういう言葉に惑わされることなく、音楽のことだけを考えてやってきたんですよね。飽き性だけど、ブレることはないので(笑)。

――確固たる意志があるんですね。

安田:歌っている時は、本当の自分でいられる気がするんです。だから、すごく大切な時間でもあるんですよね。歌を歌っている時と、音楽を作っている時は。

――今回のニューアルバムは、その大切で大好きな音楽を通して自分の殻を破るというのがテーマになっているようですね。

安田:はい。2019年から2020年にかけては、弱い自分から脱皮したい、今の自分から変わりたいという気持ちがとても強くあって。去年は特に、自分の感情が大きく揺れ動いたんです。安田レイとして歌い始める前を入れると15年間歌っているんですが、自分は果たしてちゃんと歌えているのかっていう、大きな壁にぶつかる瞬間があったんですよ。だんだん大人になってきて色々考えてしまったり、同じ世代の人達と自分を比べてしまったりして。

――比べてしまう?

安田:中学生~高校生の頃に一緒に頑張っていた人達はほとんどがこの世界から離れていて、結婚したり、また新たな世界で頑張っていたりするんだけど、私は前にも後ろにも進まず、ずっと同じ場所にいるように感じてしまったんです。それに今はセルフプロデュースが上手な、新しい世代の素晴らしい才能を持ったアーティストさん達もたくさんデビューしているから、そういう人達を見て「自分とはいったい何なのか」みたいなことをすごく考え込んでしまったんですよね。ここから脱出しなくちゃ、ここから動き出したい。そういう思いを、このアルバムにぶつけていったんです。


――そういうことだったんですね。

安田:今までは、ここまで深く考えたことがなくて。もちろん大変だなと思う時は山ほどあるけど、みんな大変なんだからやるしかない!っていう気持ちだったんですが、去年は、この世界から離れようかなと思ってしまうくらい自分を追い詰めていたんです。

――そこまで…。

安田:他人と自分を比べるって一番やってはいけないことだと思うんですが、自然とそうしてしまうくらい、自分が弱っていたんですね。私はファンのみんなやレーベルのみんな、事務所のみんなに何を返せているんだろう?何も返せていない。前にも後ろにも進めていない。私はただここに立っているだけ。なんて情けないんだろう。そういう自分の弱い部分がどんどん大きくなっている感覚があったんです。だけどそんな時に、みんなの言葉がすごく響いたんです。私の心の中を読み込んでいるのかなと思うくらいの手紙や、自分が欲していた言葉をSNSでもらったりして、その状況から乗り越えられたんです。いろんな形の愛情に対しての「ありがとう」を返したい。その思いを「Re:I」という曲に込めたんです。

――レイさん自身が作詞された、アルバムの最後に収録されている曲ですね。

安田:はい。私はどうやってここまできたの?なんで泣いているんだろうって自分に問うシーンもあるんですが、そういう自分の弱さも、ファンのみんなの言葉が私の背中を押してくれたから今こうやって歩いて行けているんだよっていう感謝も、この曲に詰め込みました。

――実は最初にこの曲を聴いた時、聴き終わってすぐには受け止めきれないような感覚に陥りました。先ほど「この世界を離れようかと思った」とおっしゃいましたが、なるほど、それほどの心境から立ち上がって書かれた歌詞や歌だったからなんだなと腑に落ちました。

安田:あぁ、そんな風に感じていただけたんだったらすごく嬉しいです。私はこれまでずっと、自分の弱さって恥ずかしいものだと思ってきたんですね。きっとみんなが想像している安田レイ像みたいなものがあって、私はそれどおりに生きていかなきゃいけないって常に考えていたというか。

――期待を裏切らないように。

安田:安田レイとしてデビューしてもうすぐ7年になるんですが、それが自分を苦しめていたというか、どこかで邪魔をしていたんですよね。でも2020年からは、こう思われたらどうしようなんて余計なことは省いて、もっと素直に音楽と向き合って、弱い部分もさらけ出しながら自分らしくやっていきたいなって思えたんです。この曲を作って。

――共感する方もたくさんいらっしゃると思います。

安田:そう、きっとこういうことで悩んでいる方って多いと思うんですよ。本当の自分を見せたらみんな離れていくんじゃないかっていう恐怖感と戦っている人は、たくさんいるはず。私自身も、ずっとその部分が直せなくて苦しんできました。だけどこれからは、ちょっとずつでいいから弱音も吐きながら生きていきたいなって思えたんです。この曲が、そういった人達にとってのパワーになってくれたら嬉しいなと思っています。

――ファンの皆さんとの信頼関係があったからこそ、弱い部分も見せていこうと思えた。素晴らしい関係性だと思います。

安田:心が通じているなって感じる人には、ポロッと本音が言えたりしますよね。安心感というか。ファンの皆さんと私って、そういう関係性だと思います。

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